ACL制覇を果たした浦和レッズ【写真:Getty Images】

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証明した浦和の実力。タイトル獲得の資格は十分

 25日に行われたAFCチャンピオンズリーグ決勝戦でアル・ヒラルを2戦合計2-1で下した浦和レッズが10年ぶりにアジア王者に輝いた。今大会ではホーム戦負けなし、対戦した相手にはすべて勝利を収めるという申し分ない成績を残した浦和。そこには確かな成長があり、極めて重要な試合でチーム力の高さが見られた。(取材・文:ショーン・キャロル)

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 ACL決勝は決して名勝負ではなかったが、浦和は見事に集中力を保ち、最後に歓喜を手にするのにふさわしい戦いを見せることができた。10年前にアジア初制覇をもたらした永井雄一郎のゴールと非常によく似た形でラファエル・シルバが決勝点を叩き込んだ。

 アル・ヒラルとの2試合を通して、浦和は本来やりたかったプレーができずに苦しめられた。土曜日の2ndレグを終えたあと、何人かの選手たちは、もっと攻撃面で相手に脅威を与えたかったとコメントしていた。

 全体的には、より組織されたプレーや自信を感じさせるサッカーをしていたのは相手の方だった。2試合合計0-1で惜しくも敗れた2014年のウェスタン・シドニー・ワンダラーズ戦に続いて、4年間で2度目の準優勝に終わったアル・ヒラルには同情を禁じ得ない部分もある。

 だが、やはり決勝戦で最後に意味を持つのは試合に勝つことだ。両チームが本来の力を発揮できるような決勝戦はむしろ多くはない。大きな緊張感も期待もあり、何より1年間の努力が無駄になってしまうのではないかという恐怖心もある。技術的な面以上にメンタルの強さが物を言う場面だ。その点において浦和は大いに称賛に値するチームだった。

 11月18日にリヤドで行われた1stレグでは、堀孝史監督のチームが1-1のドローで折り返したのは信じられないほど幸運なことだった。稚拙なフィニッシュやGKの活躍、そして運も絡んだ結果として、アル・ヒラルは20本のシュートのうち1本しか決めることができなかった。

 だが2ndレグの前にレッズの選手たちに話を聞くと、落ち着いて自信を持てている様子だった。何をやるべきであるかを理解しているだけでなく、より大事なことだが、自分たちにそれができる力が十分にあると理解できていた。

 決勝に至る道のりの中で浦和はホームでの6試合全てに勝利を収め、今大会で対戦した全ての相手を打ち破ってきた。クラブにとって過去10年間で最も重要な夜を迎えるにあたり、その流れが途切れるという不安は全く感じさせていなかった。

強豪アル・ヒラルに屈しない浦和。チームに通う強い芯

 試合でも順調なスタートを切ることに成功し、開始わずか30秒で長澤和輝が先制点をうかがうシュートを放つ。浦和はACLでは3試合連続で前半の早い時間にゴールを奪い、落ち着いてパスを回すことができる状況に持ち込んでいた。その再現を狙おうとしているのは明らかだった。

 だがアル・ヒラルは、それまでの相手とは異なる様相を見せた。ズラタンもこの日の相手について、今年の大会で浦和が対峙した中で最高のチームだと表現していた。

 決勝の相手となればそれも当然のことだ。実際のところ、プレッシャーがかかる状況下での個人の技術はもちろんのこと、アル・ヒラルの連系プレーもまた見事なものだった。

 過去数年であれば、レッズはこういう力を持った相手に打ち崩されていたかもしれない。だが今のチームにはより強い芯が通っている。アル・ヒラルはボールを保持して組織的なプレーを展開しながらも、レッズより4本も少ない枠内シュートわずか1本を放つことしかできなかった。

 浦和がそういった自信を身につける基礎となっているのはもちろん、今大会を通して本当に見事な戦いぶりを見せてきたことだ。大会全体を振り返ってみれば、レッズにタイトル獲得の資格がなかったと主張できる者は多くはないだろう。

 グループステージでは爆発的な得点力を発揮し、特にホームゲームでは3試合で12回ネットを揺らした。続いて決勝トーナメントに入ると、ファンの神経がすり減るような苦戦の中で、派手な逆転劇を立て続けに演じてきた。

 済州ユナイテッドと対戦したベスト16では、韓国での1stレグに0-2で敗戦。だが2ndレグでは見事な反撃を披露し、最後は114分に森脇良太がゴールを奪って3-0の勝利を締めくくった。

 続いて川崎フロンターレとのJリーグ勢対決もまさに信じがたい展開だった。2試合合計1-4とリードされた状況から、興梠慎三、ズラタン、ラファエル・シルバがゴールを奪い、最後は終了4分前に高木俊幸も決めて準決勝進出を果たした。

チーム全員で掴んだ栄冠。刻まれた新たな歴史

 浦和の偉業が称賛に値するのは、そういった戦いぶりにこそ理由がある。また、チームの全員がそれぞれの貢献を果たしてきたことも称賛されて然るべきだ。

 例えば森脇や高木などは、先発のイレブンから名前が消えかけていた選手たちだった。ミハイロ・ペトロヴィッチの仕事も忘れてはならない。昨年のJ1で歴代最多勝ち点を獲得しての年間総合首位という成績を残して浦和に今大会の出場権をもたらした前監督は、チームを準々決勝にまで導いた。そこからは堀監督が巧みな仕事で修正を施して栄冠への道を繋ぐことができた。

 新監督が青木拓矢と長澤を先発に加えたことは、今大会終盤戦のレッズの戦いに欠かせない要因となった。前者は4バックの前にぜひとも必要だった盾の役割を果たした。長澤もまた、非常に優れた選手へと成長できると感じさせる。

 俊足も、落ち着いたボール捌きも、フィジカルの強さも十分に兼ね備えている選手だ。槙野智章も4バックへの変更以降は守備に力を発揮し、最終ラインで体を張る役割を楽しんでいる様子だ。

 済州と川崎F相手に目まぐるしい戦いを演じたあと、浦和は準決勝と決勝では新たなシステムではるかに統制が取れたチームとなっていた。

 スコアはどちらも全く同じ。アジア屈指の力を持つ上海上港とアル・ヒラルを相手に、アウェイではしっかりと1-1のドローに持ち込み、ホームではラファエル・シルバの得点による1-0の勝利で仕事を完結させた。

 今季のラファエル・シルバは非常に充実しており、冷静で質の高いプレーを提供しつつ、ゴール前での決定力も発揮してきた。

 今大会で決めた9得点は、驚くべきことにわずか10本の枠内シュートから生まれたものだった。一方、大会MVPに選出された柏木陽介もここぞという場面で必ず力を発揮してみせた。本格的に成熟した姿を見せ、中盤における浦和の重鎮の役割を果たすようになってきた。

 もちろん2人は、今後もまだ数年間レッズに大きな貢献を果たすことができるだろう。だがクラブの歴史に名を残す存在となることはすでに約束されている。

 決勝の公式放送に関わる中で、2007年のヒーローである永井氏と2日間をともに過ごす機会を得ることができた。レッズの前回ACL優勝時に決定的なゴールを挙げてMVPに選出された彼が、今でもクラブのファンに強く尊敬されていることが非常に印象的だった。

 こういう瞬間こそがまさに、クラブや選手たちの歴史を生み出していくものだ。栄光の瞬間を味わったレッズのメンバー全員に称賛と祝福を受ける資格がある。

(取材・文:ショーン・キャロル)

text by ショーン・キャロル