編集者/ライターの池田園子が、週末起業家や個人事業主、経営者など、さまざまなスタイルで起業している女性にインタビューする連載です。

******

人生とは選択の連続で、どれを選ぶかによって、運命が形作られていくもの。仕事や働き方を選ぶときも同じです。
ファイナンシャルプランナー(以下、FP)として活躍する、エフピースマイル代表者の中山弘恵さんは独立前、損害保険会社に勤めていました。ただ、金融業界に入ったことに特別な思い入れはなかったと話します。

「新卒という立場は一生に一度ですから、いろいろな業界を受けてみたかったんです。大学3年生のとき、先輩たちにお話を伺うなかで、損害保険というものを知っておもしろそうだなと思ってエントリーしました」(中山さん)

入社後、自分自身の生活に役立つ資格を探していたところ、FPの資格を知って取得します。FPとして働いている先輩たちから、「本当のお金持ちを知るには、銀行で働いてみるといいよ」とアドバイスを受けたのを機に、銀行に入行します。

「資産運用のお話をするため、お客様のもとへ先輩に同行させていただきました。お金って“あるところにはある”んだな、と感じたのを覚えています」(中山さん)

こう振り返る中山さんは、損害保険会社と銀行で積んだ経験や当時考えたことが、独立のきっかけになったと振り返ります。そんな中山さんの起業ストーリーをお届けします。

しがらみなく、お客様にとって最適な商品を勧めたい

Q. FP事務所「エフピースマイル」を開設する原動力となったのは、どんな思いだったんですか

A. どこの組織にも属さず、お客様ひとりひとりに合った商品やサービスを勧めたい、という思いです。損害保険会社や銀行に勤めていると、自分は雇われているわけですから、当然会社が扱う商品をお客様にご案内することになります。商品、そしてお客さまを知れば知るほど、自社商品(取り扱い商品を含む)や他社商品の特徴がわかってきます。「目の前にいるお客様にとって、より良い商品は何なのか」を第一に考えると、他社商品の方が良い場合もあります。
お客様にとって、より良い商品をご案内したい。かといって、給料をもらいながら、他社商品を勧めるわけにはいかない……というジレンマを次第に抱えるようになりました。そんななか、私が最終的に出した答えは「独立」でした。

FPはすべての人の「お金の不安」に寄り添う仕事

Q. 現在エフピースマイルが提供する事業、サービスの内容を教えてください

A. セミナーや個別相談、執筆を通して、生活者の皆さんが、ライフプラン(生涯生活設計)の目標を達成するためのお手伝いをしたり、経済的な不安が和らぐためのサポートをしたりしています。例えば、同世代の個人のお客様からは、家計のやりくりがうまくいかずなかなか貯蓄が増えない。住宅ローンを組む予定だけど金銭的に不安。保険に加入したもののムダがないか心配。そういったご相談を多く受けます。法人のお客様からは、ライフプランや資産形成、節税、相続など、さまざまなテーマでのセミナー講師や執筆のご依頼をいただいています。

子どもに家事を教えて自立してもらうメリットはいっぱい

Q. ある日のスケジュールを教えてください

6時30分 起床、朝食の準備、身支度
8時00分 家を出てセミナー会場へ(移動中にメールチェック)
10時から12時 セミナー講師を務める
12時 昼食
12時30分 相談業務のため移動
14時から16時 個別相談
18時 帰宅後、夕食の準備、休憩など
22時 セミナーの資料作りやメールチェック・返信
1時 就寝

A. ときどき、「このスケジュールで、育児・家事とどう両立させているの?」と聞かれることがあります。正直、両立できているとは言い難いです。ただ、物事を効率よく運ぶことは常に意識していて、それができるとうれしいので励みにしています。
例えば、料理は自分で制限時間を設け、時間も計っています。決めていた時間内に作れたら大満足! 子育ては子どもたちが幼い頃から、「働かざる者、食うべからず」と言い聞かせ、料理・洗濯・掃除など大抵の家事は少しずつ慣れてもらってきました。おかげで、私が早朝から出かけたり、帰宅が遅めになったり、体調を崩したりするときなどは、子どもたちの協力に助けられています。彼らで力を合わせて簡単な料理を作ったり、適当に食べたりして過ごしてくれます。

期待を超える仕事をして、お客様に笑顔になってもらうのが一番うれしい

Q. 2003年に独立し、15年近く事業を継続させているのがすばらしいです。お客様から支持され続ける秘訣はなんだと思いますか

A. 常に意識しているのは、「自分がお客様の立場だったら……?」と考えて行動すること。そして、どんなお仕事(講師業や執筆業、相談業務など)でも、依頼してくださった方に「ここまでしてくれるなんて」と笑顔で喜んでいただけるように心がけています。お客様の笑顔を拝見すると、自分の心の中が温かくなります。私はその感覚がとても好きなんです。ある意味で、私の自己満足かもしれません。ただ、ありがたいことに講演をリピートいただけたり、お仕事をご紹介いただけたりするのは「お客様に喜んでもらいたい」「笑顔になってほしい」という思いや行動が伝わっているのかな、と思っています。

FPの仕事は趣味のようなもの。だからワクワクしか感じない

Q. FPとして独立して活動するなかでうれしいこと、逆に大変なことは

A. 昔と比べて、FPの認知度が向上しているのを実感しています。FPに相談したり、FPが講師を務めるセミナーを受講したりすることにお客様の抵抗がなくなってきているのかなぁと。そのなかで、「お客様目線の女性FPに相談したい」「女性FPに講師をしてもらいたい」というご要望があり、ご依頼いただくことも増えています。期待されているわけなので、良い意味でのプレッシャーになりますし、相談やセミナーが終わった後に、参加者が満足いただけた様子を拝見すると、とてもうれしいです。
私にとってFPの仕事は趣味みたいなものなので、初めてする仕事や少し難しそうだなと思う仕事であっても、大変に感じるよりもむしろワクワクします。

お金と賢く付き合える人を増やすのが夢

Q. 今後、事業を通じて実現したいことや目標を教えてください

A. 人生とお金は切っても切れない関係ですから、生活に関わるお金の知識を得て、お金と賢く付き合える人を増やすこと――これが私の実現したいことであり、願いです。
私たちはひとりひとり得手不得手があるので、国民全員がお金と賢く付き合うための知識や術を身につけることは難しいでしょう。でも家族や友人、知人のなかに、それらを身につけている人がいたらいいなと思いませんか? 私はそういう状況をつくりたくて、セミナーや個別相談、執筆、大学での講義などを通じてお金の知識を伝え続けています。より多くの人がFPの知識を習得し、いつでも気軽にお金の話ができる世の中になっていけばいいなと思っています。

この社会を少しでも良くしていきたい――中山さんの姿勢や考え方からは、そんなメッセージがダイレクトに伝わってきます。
「お金と賢く付き合える人を増やす」「お金の話を気軽にできる世の中にする」そういった大きな目標を掲げるなかで「依頼者に喜んでもらう」「満足してもらう」という意識を常に忘れない中山さん。この方に相談したら、きっと親身になってくれる。寄り添ってくれる。そう思わせてくれる包容力すら感じます。起業して15年近くもお客様から支持され、選ばれ、求められ続けている――起業家としての理想的なあり方を体現した女性だなと感じました。

▽ 中山弘恵さん

エフピースマイル代表。ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)、住宅ローンアドバイザー、証券外務員2種、一般社団法人日本定年力検定協会 代表理事。
1976年生まれ。大学卒業後、国内損害保険会社にて代理店の支援業務、都市銀行にて資産運用アドバイス・住宅ローン審査業務をへて独立。ひとりでも多くの人が心豊かで幸せな人生を送れるサポート役として、講演活動、個別相談、執筆業務を通じ、生活にかかせないお金についての正しい情報と知識を発信している。
「わかりやすく丁寧なセミナー」「安心しながら気軽に話せる相談相手」として定評があり、相談者・セミナー受講者は20代〜80代と幅広い。