2017年シーズン最終戦「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」はテレサ・ルー(台湾)の優勝で幕を閉じた。トータル15アンダーはトーナメントレコードとなる最少スコアだった。一方で賞金女王への最低条件が優勝というわずかな望みをかけて戦ったイ・ミニョン(韓国)が2位に入った。多くの選手が「難しい」と語る宮崎カントリークラブで好プレーを見せたこの2人の共通点、そして勝負を分けた部分はどこにあったのか。上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が掘り下げる。
【スイング連続写真】これがテレサ・ルーのスイングだ!
■ショットメーカー同士の名勝負 2人は体だけでなく“心”の力も抜けている
10月の「富士通レディース」以来となったこの2人の優勝争い。今大会でもその時に負けず劣らずのせめぎ合うゴルフを見せつけた。圧巻は3日目の18番パー4。2打目を先に打ったミニョンがもう少しでチップインイーグルかというショットを見せれば、後に打ったテレサはその内側にピタリ。その後、「決めなきゃ明日追いつけない」とミニョンが決めると、テレサも入れ返して共にバーディフィニッシュ。一歩も譲らない意地と意地のぶつかり合いに宮崎のギャラリーは大いに沸いた。
ミニョンに対し「とても強いですね。安定している。簡単には勝てない相手。向こうもミスが少ないから自分がバーディを獲っていかないといけなくなる。あのショットを見てると私もそういう風に打ちたいって思いますよ」とテレサが言えば、言われた側も「持ち球は逆ですが、学ぶところが多い選手。テンポなど相性が良く、自分に良い影響を与えてくれる選手です」と好敵手を絶賛。切磋琢磨で伸ばし合う異次元なゴルフに他の選手は付いていくことができなかった。
辻村氏もこの名勝負に惚れ惚れ。「持ち球はテレサがドロー、ミニョンがフェードと真反対。普通なら決して回りやすいものではない。ですが2人とも自分の球筋への絶対的な自信があるから相手のボールに惑わされない。2人ともテンポがとても良いし、良いショットを打つ。だから2人でイメージ良く伸ばして行けるのです。見ごたえのある戦いでした」
そんな今季パーオン率1位のミニョンと3位のテレサのショット力を紐解く。持ち球は違えどベースは一緒。当たり前のことだが基本がしっかりしている。
「持ち球によって、またそれぞれの個性によってスイングはみんな違いますが、強い選手はみな当然のように基本ができている。自然体で力みのないアドレス。スイング中にクラブと体が離れない。そして大事なのが“重心が動かない”こと。フォローにかけて浮いてしまう選手が多いのですが、2人とも飛び上がるような動きが一切ない。これは賞金女王となった鈴木愛さんにも言えること。それは言い換えれば下半身でスイングできているということでもあります。そして心の重みと書いて重心と書くように、心に力みがないことも共通点。“力づくで飛ばそう”と言った邪な気持ちが出てくれば自然と体は起き上がり重心が浮いてしまいます」
■パー5でギアチェンジ 流れを呼び込むテレサのスイッチ
ショットメーカー2人の名勝負。辻村氏も「どちらが勝ってもおかしくなかった」と語るほどの激闘の明暗を分けたのはわずかの差。それは宮崎CC独特のコーライグリーン。
「勝負を分けた1つはパッティングでしょう。ミニョンさんは今週いつも以上にパター練習していました。ロッカーやホテルのフロントでも球を転がしている姿も見かけるほど。そのくらいコーライのきつい芝芽に苦しんでいる印象でした。一方のテレサは台湾生まれということもあって(台湾のコースはコーライが多い)芝にしっかりと対応できていましたね」。ましてや3年前に優勝したコース。バーディへのイメージを作る時点でテレサに分があった。
もう1つ要因に挙がったのがパー5。4つしか伸ばせなかったミニョンに対し、テレサは8つ伸ばした。バーディを獲れるホールが少ないコースに置いてこの差は大きい。最終的についた4打という差はここにあった。ちなみにテレサは今季パー5平均スコア2位である。
「テレサさんは伸ばしどころと見るやギアを上げる。パー5のティショットは他のホールよりも15〜20ヤードくらい飛ばしているんです。それも力まずに。ここからはあくまで僕の見立てですが、腕の力は逆に抜いている。そして体幹にいつも以上にスッと力を入れている。そしてクラブをいつも以上にしならせて鋭く飛ばす。力任せに無駄に振るほど無駄が出ることを分かっている。鍛えた体幹の力を上手く使うことで道具のポテンシャルを最大限に引き出しいている。飛ばしかたを知っています」
多少方向性は落ちるが、それでも力みがないから大きく曲がらない。そのティショットを武器にパー5でバーディを奪って、試合の流れを作っていく。それが“テレサスタイル”。今大会ではピタリとハマった。
■イ・ミニョンが3番アイアンを打てる理由 それは入口出口の低さ
一方で敗れたミニョンに関して、今年一番注目を集めたのが「なぜ女子プロなのに3番アイアンを打てるのか」ということ。富士通-の18番で見せたベタピンショットは記憶に新しい。その理由を辻村氏はこう解説する。
「クラブのヘッドの入りがシャロー(浅く穏やかな角度)だからです。ロングアイアンというクラブはあまり上から入り過ぎても煽って打ってもダメ。ミニョンさんはクラブの入り口から出口まで低くボールを拾えている。もう1つ。アドレスからフィニッシュまで懐がつぶれず同じ距離を保てています。腕とクラブの位置関係が最後まで変わらない。それが大きいスイングアークを作り出しています。たぶんツアーナンバーワンでしょう。そして先ほど言った基本的なこと。力の抜けたアドレスで低重心キープ。何も特別なことをやっているわけではありません。1つ1つ全てのレベルが高いから、ということです」
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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