「僕は当初、『借りる側にも問題あり』と思っていましたが、取材を進めると『貸す側に問題あり』ととらえました」と語る藤田知也氏

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銀行のカードローンは便利極まりない。収入証明書や担保を用意しなくても数百万円の借り入れが可能で、その使途は自由。手続きも早ければ30分で終わる。有名人起用のテレビCMを見ない日はないくらいにカードローンは銀行の主力商品となっている。

かつて借金といえば消費者金融の独壇場だった。だが1990年代、その過酷な取り立てで起きた自殺や自己破産が社会問題となり、2010年から消費者金融の借り入れには収入証明書が必要、借入額も年収の3分の1まで、テレビCMの放映に一定の制限、といった貸金業法の規制を受けている。

だが銀行はその対象外。その結果、銀行で借りられない人に消費者金融が高利で貸していたのが、今は逆の現象が起きている。銀行から数百万円も借りたはいいが、10%を超える高金利に首が回らなくなる人が続出。だが、かつての「サラ金地獄」のようなマスコミ報道はなく、この問題を熱心に追いかける記者はほんの数人しかいない。『強欲の銀行カードローン』著者の藤田知也氏に聞いた。

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―そもそも、なぜ藤田さんがこの問題に関わったのですか?

藤田 今年2月、「銀行カードローンの拡大で自己破産が13年ぶりに増加」といった時事通信のベタ記事に関心を持ったことです。調べると、法規制の縛りを受ける消費者金融とは逆に、銀行カードローンには一切の縛りがない。銀行の「特別扱い」を「ずるい」と思ったのが出発点です。

―著書で驚いたのが、消費者金融では年収の3分の1までしか貸さない「総量規制」があるのに、カードローンにその縛りがないとはいえ、無収入の人に300万円を貸すなど、貸す側の審査が甘いことです。

藤田 カードローン利用者のなかには、年収1000万円という高収入なのに2600万円も借りた人もいます。誰に聞いても「借りるのが簡単だった」とふり返りますが、返すのはまた大変です。借りる理由は、急な失職、病気、生活資金、そしてギャンブルも多い。

僕は当初、「借りる側にも問題あり」と思っていましたが、取材を進めると「貸す側に問題あり」ととらえました。借金を重ねる人は「とにかく借りなきゃ」と切羽詰まっていて、どうやって返すかの判断能力が著しく低下している。銀行がそこに、使途も確認せずにどんどん貸しつけるのは問題ではないでしょうか。消費者金融の問題の場合は、総量規制をしたことで多重債務者は激減したのですから。

―この問題を銀行側はどうとらえているのでしょう?

藤田 全国銀行協会(全銀協)のトップにも取材しましたが、総量規制については「お客さまの年収や信用状況には幅があるので、一律規制はお客さまの利便性を損ねる」という見解です。加えて「3分の1超の利用者ほど貸し倒れが少ない」というのも、3分の1超で貸す根拠になっています。金融庁も同様で「自由な取引にルールを敷くのは良くない。あくまでも各銀行が自主規制を」という立場です。

―なぜここまでノールールの貸しつけがまかり通るのでしょうか?

藤田 例えば、全国の地方銀行106行の今年3月期の決算は前年比でマイナス約15%となっていて、新たな収益源が必要なのです。そこで目をつけたのがカードローン。今、住宅ローンなら年利は0%台。仮に0.7%としましょう。対して、カードローンの金利が14%だとすれば20倍の利ザヤがある。

煩雑な手続きが必要な住宅ローンよりも、簡便な手続きのカードローンの契約を取るほうが銀行にとって楽だし儲かるんです。実際、新生銀行などは利益の半分をカードローンが占めている。

また、貸金業法で収益が悪化した消費者金融のいくつかは今、銀行カードローンの保証会社として盛り返しています。消費者金融で蓄積したデータと経験を生かし、銀行に代わって一見客を審査し、銀行から保証料をもらう。利用者が返済できなくなると借金を肩代わりしますが、それでも十分に稼げます。

―藤田さんの行動で驚いたのが、カードローンの全体像を把握するために、全銀協の正会員120行にアンケート調査を送付したことです。

藤田 それは僕も一番感心します(笑)。時間もなかったので、質問はシンプルに、(1)カードローンをしているか、(2)年収の3分の1超を貸すか、(3)銀行にも総量規制が必要か、(4)3分の1超の貸しつけに「利便性」はあるのか、の4つにしました。

101行から回答があり、カードローンをしているのは96行、3分の1超の貸しつけは80行もありました。一方、総量規制は不要という意見が35行、3分の1超は利便性があるという銀行が45行で、「わからない」との回答も多かったんです。

―今後、カードローン問題は是正されるのでしょうか?

藤田 確かに言えるのは、銀行には「批判されている」との意識があること。16年9月に日本弁護士連合会が「銀行は年収の3分の1超の貸しつけをすべきではない」との意見書を出しました。これが火つけ役となったのは事実です。時事通信の記事、そして僕も4月からこの問題を朝日新聞でキャンペーン的に書き始めると、他メディアも追随しました。

その結果でしょうか、大手銀行は50万円超の借り入れに収入証明書を求めることを決め、地方銀行でも3分の1を超えない貸しつけに抑え、テレビCMは子供が見る時間帯を避け、本数を減らすなど是正の動きは起こっています。また全銀協は、ローン利用者の借入額などの実態調査を年内に実施すると公表しました。

―もし銀行が貸しつけを規制した場合、お金が必要な人はどこから借りたらいいのでしょう?

藤田 本当に必要なお金なら、全国社会福祉協議会では無利子か低金利で「生活福祉資金貸付」を貸してくれます。労働金庫で低利のローンを借りる手もある。どうしても銀行がカードローンで多額の融資を続けるなら、年収の3分の1を超す場合は、その使途を確認した上で、貸すべきではないでしょうか。

―今後もこの問題を取材し続けるのでしょうか?

藤田 どういう人がどういう状況で借りて、どうなったのか実態解明は必要です。例えば、中小企業で経営破綻した経営者の債務にカードローンがあるとのレポートもあるんです。そういう実態についても調べてみたいと考えています。

(インタビュー・文/樫田秀樹 撮影/村上庄吾)

●藤田知也(ふじた・ともや)

朝日新聞経済部記者。大学卒業・大学院終了後、2000年に朝日新聞社入社。盛岡支局を経て、02年から『週刊朝日』記者を10年間務める。12年4月に東京本社経済部へ異動し、16年3月から日銀・金融を担当する。「週刊誌時代に取材した怖い方々に顔を知られたくない」という著者の希望で、取材で実際に利用した銀行カードローンの明細で顔を隠して撮影した

■『強欲の銀行カードローン』

角川新書 800円+税

消費者金融などの貸出残高は2006年の貸金業法改正による「総量規制」(年収の3分の1を超える借り入れの制限)の導入で年々減少したが、その一方で2012年頃から銀行カードローンが伸びている。そして昨年、13年ぶりに自己破産が増加した。その背景にあるのが、銀行への“優遇”だ。銀行カードローンには消費者金融に適用されるような総量規制はない。今や銀行の大きな収入源の銀行カードローン。モラル欠落の実態を明らかにする