ビジネスパーソンが闇雲に情報をインプットしても、実際は役に立たない。では、知識を使いこなすには、どのような仕組みでインプット、ストックすればいいのか? MBAを取らずに独学で外資系コンサルタントになった山口周氏が、知識を手足のように使いこなすための最強の独学システムを1冊に体系化した『知的戦闘力を高める 独学の技法』から、内容の一部を特別公開する。

広範囲のソースから自分の五感で行う知的生産

「知的戦闘力を向上させる」ためには、独学をシステムとして捉える必要があります。そのシステムは「(1)戦略」「(2)インプット」「(3)抽象化・構造化」「(4)ストック」という四つのモジュールで構成されます。

 世の中には多くの「独学術」がありますが、それらの多くは「インプット」の項目しか扱っていません。

 どんなに「インプット」の量が多くても、「抽象化・構造化」ができなければ、単なる「物知り」にはなれても、状況に応じて過去の事例を適用するような柔軟な知識の運用は難しいでしょう。

 あるいは、たとえ「抽象化・構造化」ができても、その内容が高い歩留まりで整理・ストックされ、状況に応じて自在に引き出して使うことができなければ、やはり「知的戦闘力の向上」は果たせません。

 前回は「(1)戦略」について概要を説明しましたが、今回は「(2)インプット」「(3)抽象化・構造化」「(4)ストック」について説明していきましょう。

 まず「インプット」についてです。独学におけるインプットというと、多くの人は「本を読む」ことをまずはイメージすると思います。もちろん、書籍によるインプットは独学のシステムにおいて、もっとも重要なソースの一つではありますが、それ以外にもさまざまなソースがあることを忘れてはいけません。

 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌といったマスメディア情報も、独学のインプットになりますし、もちろんYouTubeやWikipediaに代表されるネット上のさまざまな情報も、独学のソースとして欠かすことができないでしょう。

 さらに映画やドキュメントフィルム、音楽の歌詞やアート作品もまた、その人ならではの知的戦闘力につながる独学の貴重なインプットになります。

 そして最後に、なによりも忘れてはならないのは、自分自身をアンテナとして用いるインプットです。たとえば、文化人類学者のような眼で世の中を観察してみれば、街頭看板の広告クリエイティブや街ゆく人々のファッション、あるいは大型書店に並ぶ雑誌の表紙などからさまざまなインプットを得ることができるでしょう。

 独学というと「本でお勉強」というイメージを思い浮かべる人が多いのですが、実は独学にはさまざまなインプットソースがあり、それらを組み合わせることが重要だ、ということを忘れてはなりません。

 なぜ、独学のインプットを、これだけ広範囲のソースとして用いるかというと、本だけに独学のインプットを限定してしまうと「学びの稼働率」が低下してしまうからです。

 システムの生産性は単位時間あたりの出力と稼働時間の積によって決まります。いくら処理能力の高い独学システムを作り上げても、肝心要の「独学の時間」が短ければ、学びの絶対量は大きくなりません。さまざまなソースに独学のインプットを求めるというのはつまり、学びのスイッチがオフになる時間を極小化するという戦略です。

 曹洞宗の開祖である道元禅師は「遍界嘗て蔵さず」という言葉を残されています。これは元々、真理を求めてひたすらに修行を続ける禅僧に対して、「真理はあなたの目の前にある、なにも隠されてなどいない」ということを伝えようとした言葉ですが、独学についても同じことが言えます。

 学びの契機は「いま、ここ」で私たち自身に与えられている。そこからなんらかのインプットを汲み取れないのは、私たち自身の心のありように問題がある、ということです。

 さらに、書籍やネットの情報というのは、「他の誰かの知的生産プロセス」を通じて出力された情報ですから、いわば劣化コピーのインプットでしかないということになります。そうした情報を組み合わせて、その人ならではの示唆や洞察を生み出すこともまた、独学システムの重要な役割ですが、これは言うまでもなくとても難易度の高いことです。

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