少子化対策は待ったなしです(撮影:尾形文繁)

衆議院議員総選挙が終わり、第4次安倍晋三内閣が発足しました。総選挙のマニフェストには「子育て支援」の財源を消費税アップで賄うことが発表され、選挙後には、保育所整備に向けた企業拠出金の増額が検討されています。

一方、「選挙の顔」として大活躍だった小泉進次郎氏は、子育て世代への支援策として「こども保険」を提案しています。この政策を提言した「2020年以降の経済財政構想小委員会」(委員長代行:小泉進次郎)のオブザーバーを務め、その議論の推移をまとめた『人生100年時代の国家戦略――小泉小委員会の500日』を執筆した藤沢烈さんに、「こども保険」の実現可能性についてうかがいました。

前編:小泉進次郎氏が推進する「こども保険」の正体
中編:小泉進次郎氏の「こども保険」、なぜ必要か?

待機児童解消やるやる詐欺”

藤沢:国は“待機児童解消やるやる詐欺”といわれることがよくあります。全然実現しませんねと批判されています。でも、実は毎年9000億円かけることで59万人分の定員増を実現させたのです。でも、それ以上に働く女性が増えているから、待機児童がなくなっていないのです。


「待機児童解消」は、なぜ実現しないのか?(写真:マハロ / PIXTA)

木本:国がやる気を持っていないとは思わないんですが、でも簡単にいかない何かがあるとは漠然と思ってます。本音で言うと、今の政府って極論すると「今さえよかったらいいんちゃうの」と思っていて、本気で未来の日本を考えているようなイメージが湧かないんですよ。

藤沢:こども保険を提唱しているのは小泉進次郎さんなど若手議員で、僕はオブザーバーでお手伝いしたり意見を言ったりしています。そこで思うのは、実は「国民のほうが、今がよければいいと思っている」ところがあって、その国民の写し鏡のように、国がそれに沿って進んでいるようにも思うんです。


この連載の過去記事はこちら

木本:なるほど、子育てが終わってしまっている人たちが今後の少子化のことを真剣に考えているかというと……。

藤沢:決してそうではない。じゃあ、たとえばこども保険で負担しましょうよと言っても、「いやいや自分さえよければ」という感覚が根強いのかもしれません。

木本:ベテランの政治家と、小泉さんのような若手議員との間が、パカーンと意識が割れてしまっていませんか? 上の世代の人たちが、小泉くん頼むよと、バトンを預けているわけではありませんよね。

藤沢:まだ、そこまで来ていませんね。

小泉進次郎さんの部屋には「こども保険」ダルマがある

木本:でも変えていかなければいけない。委員会を作って、小泉さんが頑張っているというのは資料を見て勉強しました。実は、一度小泉さんと直接お話ししたことがあるんです。われわれが横須賀でロケしているときに、たまたま地元に帰っていらした。普通にロケしている場所で、「何の番組ですか?」と入ってこられたんです。これは実際に声を聞かないとわからないと思うんですが、「この人絶対、悪い人違うわ」と思いました。


藤沢 烈(ふじさわ れつ)/1975年京都府生まれ。一橋大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て独立し、NPO・社会事業等に特化したコンサルティング会社を経営。東日本大震災後、RCF復興支援チーム(現・一般社団法人RCF)を設立し、情報分析や社会事業創造に取り組む傍ら、復興庁政策調査官も歴任。総務省地域力創造アドバイザー、釜石市地方創生アドバイザーも兼務。復興活動の中で小泉進次郎氏と出会い、小泉小委員会(2020年以降の経済財政構想小委員会)民間オブザーバーに就任(撮影:尾形文繁)

藤沢:いい印象だったんですね。

木本:選挙活動のときとは違う、ふと素に返った瞬間の言葉を聞いて、メディアでの発言が表向きだけのものではないんだなと思ったんです。

藤沢:僕は復興支援の関係でお付き合いが始まりました。きっと、ブレーンがたくさんいると思っていたんですが、そうではなくて、すべて自分で考えて発言しているのが意外でしたね。それから、同世代の議員にとても尊敬されている。

木本:小泉さんは本気で考えられているんだなあ、と思える。あくまでも僕個人としては、ですが。

藤沢:とても真剣です。小泉さんの議員会館の部屋には片目のないダルマが置いてあって、「こども保険」と書いてあるんです。本気で子どもたちのために実現させたいと思っている。反対意見も多いのですが、それを超えてやろうと。受けがいいからやるんではない。実は、こども保険は彼が考えたわけではなくて、自民党の若手議員から出てきた案なんです。でも、やると決まったら責任を引き受けて自分ごととして発言し続けています。

木本:賛否あると思うのですが、反対意見に多いのは。

藤沢:若い世代からの反対もあります。今回の案では年金保険に入れるので、年金をもらっている人はこども保険を払わないことになっています。自動的に65歳以上の方は払わないので、現役の負担が増えすぎではないかという反論があるのです。ただ、高齢者の方にも負担していただく方法もあります。

木本:もう少し詳しく教えてください。

藤沢:たとえば介護保険は65歳から第1号被保険者になって、介護保険料は年金から天引きされます。議論が許せば、年金から「こども保険」天引きという考えもあると思います。自民党の若手議員たちは、65歳以上の人は子どもが増えても直接恩恵は受けないから、払ってもらうのは難しいと考えています。一方、子育てが終わった40、50代の人は自分たちが高齢になったときに子どもたちに支えてもらうのだから払う理屈が立つだろうと。どの世代まで負担してもらうかは、これから議論をしなければいけませんね。

子育て支援はマニフェストになったが…

木本:消費税を増やして組み込むことはできないんですか。


木本 武宏(きもと たけひろ)/タレント。 1971年大阪府生まれ。1990年木下隆行とお笑いコンビTKOを結成しツッコミを担当。2006年、東京へ本格的進出。S-1バトル優勝、キングオブコント総合3位などの受賞歴がある。現在は、ドラマやバラエティなどピンでも活躍中。最近ライザップで肉体改造に成功。今度は知力を改造して新境地を開く野望を持っている(撮影:尾形文繁)

藤沢:安倍首相が、それを衆院選の公約にしました。消費税を、待機児童対策にさらに使うことを掲げたんですね。ですので、子育て支援をこども保険で行うのか、消費税の一部で賄うのかは、これから議論されます。

少子化対策は待ったなしですから、私自身は、どちらの形でも子育て予算が増えることが大事だと思っています。同時に、社会保険における国の考え方が変わったことを示せるので、こども保険も実現してほしいと思っています。

木本:消費税は、有効に使いやすいかもしれないですが、僕たち国民が知らない間に使われがちじゃないですか。でも、こども保険ははっきりわかるので、そちらのほうが安心な気がします。で、実現までどれくらいの期間かかりますか。

藤沢:ここまでは、ものすごい勢いで実現に近づいています。介護保険は発案から10年かかっています。こども保険が初めて発表されたのは今年の3月ですからね。これまでは子育てのために付け焼き刃のような政策しかありませんでした。待機児童対策は毎年さらに4000億円出さないといけないのに、財源がなくて、そういう中でこども保険という案が今年出てきたわけです。

こども保険は自民党の若手議員が発案したものですが、これを党の意見として正式に認めたのは、今は人づくり革命担当大臣になっていて、当時政調会長だった茂木敏充議員でした。そのうえで、こども保険を官邸に持ち込んでいくことで、政府の「骨太の方針」にも6月に入ることを実現させています。これだけのスピードは、過去に例がありません。

木本:すごいですね。

藤沢:ここからは議論が始まります。総選挙があって、消費税から使おうという公約があり、もちろん保険でやろうという意見も残っています。もう1つ、国債でやろうという意見も。その3つから、どんな形であれ子どもたちのための予算がつきそうなわけですから、たいへんすばらしいことです。

国におカネを預ける不信感も解消しなければ

木本:わかりやすく新しい制度を作らないと、国民の頭には「ピンとこない」ですよね。

藤沢:わかりやすさは大事ですね。この議論は「人生100年時代構想会議」の中で進んでいくことになります。どう働くか、子育てをどうするかという話がどう変わるかの進展を見守りたいです。

木本:僕自身、昔に比べて収入があるから、「いいやん」と思ってしまう。でも、全然仕事がなかったときの自分は「480円、なんでやねん」と思ったかもしれない。その辺りが世間とずれているかどうか、いまいち自信がないんですけど。

藤沢:ピンときていない人も、まだまだ少なくありません。市民感情として国におカネを預ける不信感があるからです。消費税は、何に使われているかご存じですか? 社会保障が目的なはずなのに、増税分の半分は借金返済に使われています。国民全員が消費税を払っているけれど、見返りの実感が得にくいのです。だからこども保険を実現しても「本当に子育てに使われるの?」と。国の役人が自分たちの懐に入れてしまうような感覚を持っている人も多いんです。

木本:そう思います。だから、よりわかりやすくするために、国のホームページで、保険料が減るたびにデジタルで誰が見ても把握できるようにすればいいのに。

藤沢:全部見えるようにするのは必要ですよね。説明が足りないところがあるので、しっかり国民のために使われているという証明をし続けないと。


木本:ガラス張りにする何かを作ってほしいですよね。年金を払わない若者がいますが、以前は人生のレールがはっきりしていたじゃないですか。今はレールの種類も多いし、レールのない道もある。選択肢がありすぎて、将来をあまりイメージできません。だったら「年金なんてどうでもいいや」となりがちのような気がします。この先の自分のイメージをしやすい社会になるといいですよね。

藤沢:それこそ政治家の役割です。官僚はきちんと計算はやりますが、これからの社会はこうなるよねというのを、わかりやすく政治家が示す必要があると思います。

木本:VR装置をはめたら、こども保険でこうなっていくというのをわかりやすくディスプレーできればいいですよね。

藤沢:目に見えて実感してもらうことが大事ですね。

木本:反対意見も尊重しつつ、こども保険が必要だという浸透の仕方をしていくといいですね。今回はとても考えさせられました。ありがとうございました。

(構成:高杉公秀)