『お台場旧車天国 2017』から、名車・珍車をご紹介! 第6回:『マニアック天国』軍用車編(その2)

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11月19日(日)に東京江東区・お台場特設会場で開催された旧車の総合イベント『旧車天国』。その中でもひと際強烈な個性を放つクルマが集められている『マニアック天国』エリアから、前回に引き続き軍用車を紹介して行く。

フォード GPA

第二次世界大戦中に米国が開発した水陸両用車。中・大型トラックやバスの製造で実績のあったマーモン・ヘリントン社とフォード・モーター社の共同開発によって誕生した。ベースとなったのはウィリス MB/フォード GPWで、モノコック式舟型車体にジープのエンジンと走行装置を組み合わせた。


大型水陸両用車のDUKWが主に太平洋戦線に配備されたのに対し、フォード GPAは欧州戦線の陸軍に配備された。だが、水陸両用車としてはコンパクトなボディが災いして渡洋性がなく、陸上での走行性能も芳しくなかったことから補助的な任務に使用されるに留まった。そのため生産期間は1942〜43年の1年間で、製造された1万2,700台のうち半数以上がソ連へと供与された。


戦後、米軍が使用した車両の多くは民間へと払い下げられ、港湾作業車や河川管理車として活躍したほか、一般市民のレジャー用としても人気を集めた。

1950年代、民間に払い下げられたフォード GPAのうち1台がオーストラリアの冒険家ベン・カーリン夫妻の手に渡った。夫妻が「ハーフ・セーフ号」と名づけたこの車両は、航洋性を増すための改造が施された上で、大西洋横断と陸路を使った世界一周旅行に用いられた。この冒険に成功したカーリン人夫妻は、続いて改造フォード GPAによる太平洋横断も計画したが、こちらは実現することなく終わっている。

なお、夫妻の冒険潭は『たった二人の大西洋―ハーフ・セーフ号』として1冊の本にまとめられており、57年には日本語版も出版された(現在は絶版)。


ベン・カーリン夫妻が太平洋横断旅行に使用したフォード GPAの改造車「ハーフ・セーフ号」。


ダッジ WC52

WCシリーズは第二次世界大戦中に米国が開発した軍用車両。「ダッジ・ウェッポンキャリア」とも呼ばれる。サイズはジープよりも大きく、積載能力によって1/2t、3/4t、1.5t積みがあった。展示車両はオープントップボディを採用し、ウインチを標準装備した3/4t積みのWC52だ。

主に人員輸送や物資の運搬に使われたたほか、大柄なボディと頑丈なシャシーを活かして野戦救急車や偵察車、ガントラック(対戦車自走砲型)などが製作された。終戦までに各型合せて36万台以上が生産され、余剰車両はわが国の陸上自衛隊をはじめとした米国の友好国に供与された。


戦後、WCシリーズは民間にも多数払い下げられ、農場や土建業などで用いられた。民間で好評を持って受け入れられたことから、のちにシビリアンモデルとしてダッジ・パワーワゴンが製造・販売されている。
展示車両はミリタリービークル協会の会員の所有車で、ストックのコンディションをよく維持している。国内ではウィリス MB以上に数が少なく、筆者も実車を見るのは初めてである。


WCシリーズのシビリアンモデルとなったダッジ・パワーワゴン。


陸上自衛隊/高機動車

陸上自衛隊が人員輸送に使用している高機動車。だが、こちらは自衛隊車輛ではなく民間所有車である。
自衛隊は退役した車両の払い下げは行っておらず、用途廃止になった装備はすべてスクラップとして処理している。しかし、何らかの事情でスクラップ処分されずに人手に渡る車両もあり、展示された高機動車もそうした車両のひとつだろう。

てっきりカットされたボディ(自衛隊がスクラップとして民間に車両を払い下げる場合は、車体を切り刻んで使用できないようにする)を溶接で繋げ、シャシーを共用するトヨタ メガクルーザーと合体させた再生車かとも思ったが、ボディはノーカットで、足回りをはじめとした構成部品も高機動車そのままであり、幌などの付属品も官給品であることを示した桜のマークが入っていた。つまりはオリジナルの高機動車ということである。

退役した自衛隊車両がスクラップにされずにフィリピンへと不正輸出されるケースもあるようで、そうした車両が里帰りしたものかとも考えたが、現地での用途に合せた改造痕などもなく、どうやら海外流出した車両でもないようだ。

高機動車は軍用車マニア垂涎の1台だが、現実には入手が非常に難しい。
かつては部品番号を調べて必要なパーツをトヨタの部品共販に注文し、素知らぬ顔で高機動車の車体パーツをゲットしたマニアもいたが、問題が発覚してからはその手が使えなくなってしまった(トヨタの部品共販は自衛隊車両の部品と気がつかずに注文を受けたようだが、のちにこのことが明るみとなって、製造元のトヨタ車体、トヨタ本社、防衛省を巻き込む大事件に発展したらしい)。

もっとも一般的な入手方法としては先ほども述べたフィリピンに輸出された車両を買い取って逆輸入し、ナンバー付きのメガクルーザーに車体を移植する方法である。ただし、外見は高機動車でも中身はメガクルーザーとなり、あくまでも扱いはレプリカとなる。展示車のような本物の高機動車を入手するには、よほどの幸運と「高機動車を絶対に手に入れる」という執念がなければ不可能だろう。

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