E−1選手権はビッグチャンス! 過去大会でW杯への切符をつかんだ選手たち

写真拡大

 サッカーの神様を振り向かせるほどの、誰よりも眩い輝きを放っていた。左サイドをドリブルで一直線に駆け抜けてきたFW原口元気(浦和レッズ)が、ペナルティーエリア内で迷うことなく左足を振り抜く。強烈なシュートは相手GKに防がれたが、こぼれ球は韓国代表の選手ではなく、逆サイドをフォローしてきたFW柿谷曜一朗(セレッソ大阪)の目の前へ転がってきた。

「トラップしようかと迷って、心臓もバクバクしていて。頼む、入ってくれという感じでした」

 笑顔で振り返った柿谷が下した決断は、利き足とは逆の左足によるダイレクトのシュート。丁寧なインサイドキックから放たれたコントロール重視の一撃は、緩やかな弧を描きながら韓国選手が作る密集地帯をすり抜け、反対側のサイドネットへ吸い込まれていった。

 2013年7月29日。4万7000人を超えるファンが詰めかけたソウルの蚕室総合運動場は、後半アディショナルタイムに決まった日本代表の勝ち越しゴールとともに静まり返った。そして、数分後に5度目の挑戦にして日本の東アジアカップ初優勝を告げる、主審のホイッスルが鳴り響いた。

 当時の日本を率いていたイタリア人のアルベルト・ザッケローニ監督は、ワールドカップ・ブラジル大会への出場を決め、続くコンフェデレーションズカップを3戦全敗で終えた次のステップとして、韓国で開催された東アジアカップに臨んでいた。

 大会名称がEAFF E−1サッカー選手権に変わった今回と同じく、国際Aマッチデー以外で開催された関係で海外組は招集できない。果たして、ザッケローニ監督が国内組から選んだ代表メンバー23人のうち、実に14人がA代表における出場歴がゼロだった。

 しかも、そのうち先発で6人、途中出場で2人の計8人を、7月21日に行われた中国代表との初戦で起用している。メッセージは明確だった。過去の実績に関係なく、ブラジル大会への扉は全員に開かれている――。新戦力を抜擢してチームに刺激とさらなる躍動感を与えたい、と青写真を描く指揮官の期待に確固たる結果で応えたのが柿谷だった。

 A代表デビューを先発で果たした中国戦では、1−1で迎えた後半14分に代表初ゴールも奪った。左サイドからDF槙野智章(浦和)が送ったニアサイドへのアーリークロスに、2人のDFを引きずりながらダイビングヘッドを一閃。コースを巧みに変えてゴールに流し込んだ。

 不出場だったオーストラリア代表戦をはさみ、再び1トップで先発した韓国との最終戦。25分にMF青山敏弘(サンフレッチェ広島)のロングパスに抜け出す乾坤一擲のカウンターから、それまで無失点だった韓国の守備網に風穴を開けた。そして、冒頭で記した歓喜の一撃が死闘に決着をつけた。

 日本の優勝だけでなく、大会得点王をも手繰り寄せる3ゴール目。J2徳島ヴォルティスへの期限付き移籍から復帰して2年目を迎えていたC大阪でも、柿谷はレジェンドだけが託されてきた「8番」を継承していた。心技体でキープしてきた絶好調ぶりを代表戦でも発揮した盟友の勇姿に、大会MVPを獲得したMF山口蛍(C大阪)も思わず苦笑いを浮かべている。

「MVPは俺でいいのかな。誰が見ても曜一朗だと思うので」

 16日後の8月14日。宮城スタジアムに強豪ウルグアイ代表を迎えたキリンチャレンジカップで、柿谷は左からMF香川真司(マンチェスター・U)、MF本田圭佑(CSKAモスクワ)、FW岡崎慎司(マインツ)で形成される2列目の前方で、1トップとして先発している。コンフェデレーションズカップまでのザックジャパンでは、FW前田遼一(ジュビロ磐田)とFWハーフナー・マイク(フィテッセ)が1トップで招集されていた。その序列が東アジアカップにおける活躍で鮮やかに覆されたことは、本田のこの言葉が如実に物語っている。

「曜一朗のポテンシャルはまだまだ計り知れない。ようやくこういうタイプの1トップが出てきたか、という感じがする」

 ザッケローニ監督は最終的に3試合を通して、大会前はA代表戦の出場歴がゼロだった14人の選手たちのうち、GK林卓人(ベガルタ仙台)を除く13人を東アジアカップのピッチへ送り出している。そのうち柿谷を筆頭に山口、青山、DF森重真人(FC東京)、MF齋藤学(横浜F・マリノス)、FW大迫勇也(鹿島アントラーズ)の総勢6人が、翌2014年6月に開催されたワールドカップ・ブラジル大会に臨んだ代表メンバー23人の中に名前を連ねている。

 海外組がチームの大半を占めた4年前のザックジャパンの状況は、いま現在のハリルジャパンと変わらない。つまり国内組に大きく門戸が開かれる分だけ、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が描く序列を逆転させる可能性も大きくなる。2003年、2010年に次ぐ3度目の日本開催。EAFF E−1サッカー選手権の舞台となる味の素スタジアムのピッチには、ロシアの地へとつながるチャンスが凝縮されている。
(所属は2013年7月当時のもの)

文=藤江直人