●客寄せから進化したPepperの役割

ソフトバンクの人型ロボットPepperのビジネス版「Pepper for Biz」は、導入企業が2000社を超えるなど業務利用が進んでいる。

これまでPepperの役割といえば店頭での「客寄せ」だったが、最近ではホームセンターやホテルでの接客に活用されているという。一方、日本で人手不足が社会問題化している。果たしてPepperは労働の担い手として人手不足を解決できるだろうか。

○客寄せだったPepperが接客現場の労働力に

いま接客の現場で問題になっているのが、時給を上げても採用に応募がない「人手不足」や、多言語が求められる「訪日外国人対応」だという。ソフトバンクロボティクスが発表した「レジ for Pepper」は、これら2つの問題を同時に解決できるという。

主な機能は飲食店での注文や決済だ。来店客に胸部のタブレットでメニューを選ばせる。決済はPOSと連動しており、傍らに設置したICカードリーダーでの電子マネーや、中国で普及するQRコード決済も利用できる。言語は日・英・中の三カ国語に対応し、注文内容は厨房に送信される仕組みだ。

機能面だけを見れば、従来のタッチパネル式券売機と大きく変わらない。果たしてPepperを使う意味はあるのだろうか。注目すべきは、Pepperが人型ロボットであるという点だ。

利用客としても、明らかに機械と分かる券売機よりPepperのほうが人間味を感じる。とはいえ本物の人間ほど気を遣う必要はなく、会計の金額を見て注文をやり直すのも気楽にできる。ポイントカードの新規発行などは、人間の店員よりPepperがすすめたほうが承諾する客は多いという。

Pepperの顔認識機能も活用する。来店客の同意を得てカメラで顔を記録すると、同じチェーン店のPepper間で同期し、いつもと違う店に行っても「顔なじみ」と見なされる。店舗側としても客の動向を把握できるのはもちろん、およその年齢や性別もデータとして残るので、マーケティングに活用できるメリットがある。

●Pepperに動きを作り出す

○Pepperの動きを現場で作り込むことが可能に

Pepperの弱点として、モノをつかむことができないなど運動能力が低い点がある。同じソフトバンクグループのボストン・ダイナミクスのロボットが「バク宙」する動画が話題になったのとは対照的だ。だが、よく動くロボットは子どもやお年寄りにぶつかる恐れがあり、接客には使えない。小柄なPepperですら床に固定されているほどだ。

むしろ接客ロボットに求められるのは、対人での受け答えや外部のシステムとの連携を担うソフトウェアだ。ソフトバンクはPepperの機能を作り込むツール「お仕事かんたん生成」を2.0にアップデートした。10業種に対応したテンプレートが入っており、プログラミング言語を使うことなく業務フローを実装できる。

こうしたツールを活用すれば、システム部門に依頼することなく、現場レベルで臨機応変に仕事を覚えさせることができる。商品名などの読み上げが不自然にならないよう「アクセント」も指定できるなど、細かな調整ができるのは面白い。

その先にソフトバンクが見据えるのは、2017年3月末に314億円の債務超過だったことが注目を浴びたロボット事業の黒字化だ。ソフトバンクロボティクスグループ社長の冨澤 文秀氏は「(実証実験かとの問いに対して)Pepperは完全にビジネスである」と断言した上で、Pepper以外のロボットも含めた黒字化を目指していくという。

Pepperが飽きられているとの指摘に対して、「お店にPepperしかいない状況になれば、話しかけざるを得なくなる」と冨澤氏は語る。現時点では雲をつかむような話だが、客寄せではなく労働力として役に立つならば2台、3台と複数台の導入が進む可能性はある。Pepperが本当の意味で導入企業のビジネスに貢献できるかどうかが鍵になりそうだ。