男冥利に尽きるーー『おんな城主 直虎』“之の字”こと中野直之の生き様に賞賛の声

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 いよいよ残す放送があと4回となった『おんな城主 直虎』(NHK)。嫡男・信康(平埜生成)、正室・瀬名(菜々緒)を同時に失う徳川家最大の悲劇を乗り越え、次なる一歩を踏み出した家康(阿部サダヲ)と万千代(菅田将暉)。11月26日放送の第47回「決戦は高天神」では、直虎(柴咲コウ)を支え続けてきた“之の字”こと中野直之(矢本悠馬)の揺るぎない生き様が描かれた。

参考:『おんな城主 直虎』巧みな囲碁の演出が示すものーー徳川家最大の悲劇に向けて

 「敵を叩き潰す力ではなく、“敵を味方とする力”を鍛えていくべき」と家康は家臣たちに語る。家康は、武田方に占拠されていた高天神城を、単純な武力によって命を奪うのではなく、敵の降伏を目指し兵糧攻めを行う。ここで万千代が、武田の水源を切る手柄を立てるのだが、そのきっかけを作ったのが、井伊家を支えてきた直之と奥山六左衛門(田中美央) のふたりだ。

 井伊家が今川家に取り潰された後は、“井伊谷の番人”として、徳川家の家臣である近藤家に仕えていたふたりだが、今回の功績を受け、万千代から直々に召し抱えたいと申し出が入る。直虎もふたりに「万千代の助けになってほしい」と言葉をおくるが、直之はこれを一度は拒否する。

 井伊家最強とも言えるほど武芸に精通し、直虎が城主となったときから側近として仕えてきた直之。はじめは、「おなごに何ができると言うのだ!」「所詮、おなごじゃな」「おなごの殿に仕えることになって」など不満ばかりを口にしていたが、次第に誰よりも直虎のことを知る最大の理解者となった。そんな直之に対して、直虎は「万千代を通し、“戦をせぬ戦”のため、一緒に戦ってほしい」と改めて思いを伝える。しかし、直之は「お気は確かか?」と返す。

 主君が女性であることを受け入れ、その主君が家を潰すことを受け入れ、所領を失った後は井伊谷の番人となることを受け入れ、直虎にさんざん振り回されながらも、その都度理不尽な現実に折り合いを付けてきた直之。だからこそ、直虎の理想を語る姿に釘を指すべく、今回の願いにも断りを入れてもおかしくないと思っていた。井伊家と今川家の関係をなぞるかのような、徳川家と織田家の関係にもう介入したくないと。しかし、直之は「断ることなどはできるわけがございますまい!」と言葉を返す。

 直虎、そして小野但馬守政次(高橋一生)がどんな思いで井伊家のために奔走したか、“戦をせぬ戦”がどんなに難しいことか、それをずっと見てきたのも直之だった。すでに“殿”ではない直虎を「殿」と直之が呼ぶことが象徴的なように、但馬亡き今、誰よりも直虎のことを理解しているのは直之と言って間違いないだろう。長く長く秘めた想いを吐露し、その後いたずらっ子のような笑みを浮かべながら最後に直之が放ったセリフ、「男冥利に尽きるということにしておきますよ」は、どれほど直虎を慕っているかが凝縮された一言だった。

 直之の繊細な心を体現した矢本悠馬の演技に、ネット上では「之の字、格好良すぎる!」「最高のツンデレ」「あの之の字が…泣」「中野直之万歳。矢本悠馬万歳」など、賞賛の声が多数あがった。直之の成長、そして矢本の役者としての成長も感じさせる圧巻のワンシーンだった。

 次週のタイトルは「信長、浜松来たいってよ」。魔王として君臨する織田信長(市川海老蔵)の恐怖感とは真逆のポップさを感じさせるが、あの“本能寺の変”へと繋がる重要な一幕が描かれるようだ。家康、万千代、そして直虎は、変化していく状況にどう対応するのか。(石井達也)