「体育会系だから就活に有利」とは限りません。よくある就活生の誤解を紹介していきます (撮影:梅谷秀司)

初めて経験する就職活動は、何かとわからないことだらけ。それだけに、どこからともなく伝わってくる、まことしやかな話や、都市伝説に惑わされてしまうこともあります。今回は、長年、就活生と接している経験から、多くの学生がカン違いしている、“就活の誤解”について紹介していきます。

インターンシップ落選の悪影響はない

誤解1 インターンシップの選考に落ちると、本番で不利

全国各地のさまざまな大学の就職ガイダンスでお話しする機会がありますが、自分の職業適性を確認するためにも、インターンシップには積極的に参加した方がいい、とお伝えしています。


しかし、人気企業のインターンシップは多くのエントリーが集まるため、エントリーシート(ES)や面接などの選考を設けるケースがあります。そう聞くとついつい応募に尻込みする人が少なくないようです。「インターンシップに応募して選考にもれたら、本番に悪影響が及ぶのでは?」と不安に感じるのでしょう。

が、そんな心配は不要です。どの企業も「できるだけ多くの学生に参加してもらいたい」と考えています。ただ実際問題、受け入れ体制や施設のキャパシティなどを考えると、参加できる人数には限りがあり、仕方なく選考せざるを得ないのです。そのため、選考に漏れることを恐れてインターンシップに申し込まないのは、非常にもったいない。学業、アルバイトとのスケジュール調整がつけば、さまざまな企業のインターンシップに積極的にチャレンジしてください。

誤解2 体育会系学生は就活に有利

ある企業の採用担当者からこんな話を聞いたことがあります。「入社後の研修で育成できない能力が3つある。それは、(1)リーダーシップ、(2)メンバーシップ、(3)ストレス耐性だ。体育会に所属した学生はこの3つを学生時代に身に付けている可能性が高い」というのです。

確かに、企業の中で成果を出すには、チームを引っ張って、お互いに助け合うことは不可欠です。また、困難に直面しても、くじけず乗り越える力が必要でしょう。

しかし、考えてみてください。この力は体育会に所属しなければ得られないのでしょうか? そんなことはありません。ゼミや研究室、サークル、アルバイトでも、身に付く能力といえるのではないでしょうか。大切なのは、そういった能力が社会人には求められていることを理解し、その力を伸ばせるように学生生活を過ごすことです。

さらに言えば、そういった能力があることを、選考の場で具体的な事例をもとに説明できるようになっておくことです。

コピペのESは見破られる

誤解3 エントリーシートは使い回しても問題ない

ESや面接で、必ず聞かれる3大テーマがあります。(1)自己PR、(2)学生時代に力を入れて取り組んだこと(略して、ガクチカ)、そして(3)志望動機です。

このうち、志望動機については、志望する業界や企業によって自ずと変わってくるので、同じ内容になることはないでしょう。しかし、自己PRやガクチカは、あまり変えようはありません。ということで、ESの使い回しは、一部はNGで、一部はOK、というのが答えです。

もっともすべての企業が同じような人材を求めているわけではありません。情熱ややる気を重視する企業もあれば、協調性や地道に努力し続けられる力を必要としている企業もあります。志望企業が求める人材像や能力を確認し、その力を自己PRやガクチカに盛り込むことができればいいでしょう。

ただし、インターネットや参考書などを利用して、他人のESをコピペすることはしないでください。まだまだ一部ではありますが、ESの診断にAI(人工知能)の技術を活用する企業が出てきています。AIでESの内容を診断すると、まったく同じ内容、つまりコピペは瞬時に判別できるそうです。たとえ、文章の構成は同じようになったとしても、内容は一人ひとりの個性が反映されるべきです。「自分の言葉で語ること」は最も重要なことです。

誤解4 エントリーシートや面接では、すごいエピソードが必要

先輩や友達のESを見ると、「3カ月間、バックパッカーとして、海外を回りました」とか、「1年間、毎週末、ボランティア活動に参加しました」、「サークルの大会で全国1位になりました」などという、華々しい体験談が書かれていることがあります。そんなとき、ついつい自分の学生生活に引け目を感じてしまい、「ESで自慢できること、自信を持って語れることが何もない……」。そう思い込んでしまう人が少なくありません。

もちろん華々しい経験や成果を否定するわけではありません。だが実は企業は特別な体験を求めているわけではないのです。自分では地味だと感じてしまうサークル活動やアルバイトでも、または研究活動やゼミ活動だとしても、「なぜその体験をしたのか」、「どのように取り組んだのか」に個性や強みが隠れています。企業はそれを通じて、その学生がどんな人間なのかを知りたいのです。大切なのは、「何をやったか」ではなく、「なぜ?」「どのように?」取り組んだかです。その視点を意識して、自分の学生生活を棚卸しすることが重要です。

自慢話よりも、“どんな人間か”を知りたい

誤解5 内定辞退は、連絡する必要がない

景気の見通しも明るく、企業の採用意欲は相変わらず高止まりの状況です。就活生にとってはまさに売り手市場で、学生優位な状態が続いています。複数の企業から内定をもらう学生が増え、私が会った就活生も、3〜4社の内定を持つ学生は珍しくありません。中には「6社の内定を獲得した!」といった強者もいました。かつて、就職氷河期を経験した世代にとっては、うらやましい限りの好環境です。

だが企業側の苦労を想像してみてください。将来の事業計画をもとに採用計画を立て、多くの人員や時間を割いて選考します。内定を出したのに入社してもらえないとなると、それこそ、採用活動の仕切り直し、場合によっては、人員計画や経営にも影響が出ます。また「この大学の学生は内定辞退の連絡をいれない」という評判が広まれば、次年度以降に就活をする後輩たちに迷惑をかける可能性もあります。

就活は内定の数を競うゲームではありません。より志望度の高い企業から内定が出た時点で、先に内定をもらった企業へすぐに辞退の連絡を入れるべきです。「連絡しにくい」「電話したくない」という気持ちも理解できますが、時間をかけて面接し、自分を評価してくれた企業に対して、誠実に対応することは最低限のマナーです。

以上、就活初期にありがちな誤解を紹介しましたが、初めての就活だからこそ、これ以外にも不安を感じたり迷ったりすることはきっとあるでしょう。そんなときは、大学のキャリアセンターに確認するなどして、正しい知識をもとに就活を進めることが重要なのです。