働き方改革にも役立つ?スマートロックの可能性とは

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コネクテッドテクノロジーの時代に、商業ビルのセキュリティというニッチな所を攻めるベルリンの1aimという企業がある。CEOのTorben Frieheに話を聞いた。

1aimは複雑なソフトやハードを作っているがその目的はただ一つ、鍵やカードキー、暗証番号を使わずにスマートフォンをかざすだけでどんなドアでも開けることだ。管理者はアプリのシンプルなインターフェースから、ゲストや作業員といった登録に無い人たちも含めて、入室許可をメールかSMS経由で発行することができる。

Friehe氏はこのシステムを「ビルの中央神経系」に例えて、1aimが作ったエンタープライズ級のアクセス管理システムは2つの機能があると説明する。一つ目は、専門的なアクセス及びID管理を可能にすること。もう一つは、施設内での空間の使われ方を特定するための膨大なデータを集めることだ。

同社のソフトの出荷が増えることで、従業員が部屋を出た後は電気を落としてアラームモードに切り替えるなど、コスト改善や効率性を高めるためのデータの収集と分析をデバイスで行うことができるようになるという。ほかにも会議室の予約なども行うことができる。

「我々のプラットフォームでは誰がいつどこにいるかを把握することができるため、従業員一人ひとりに適切なスペースを割り当て、業務改善のためのレイアウトを提案することができます。」

 

スマートロックに見られるドイツと米国の文化的な違いとは?

私自身米国を出てドイツに住んでいることから、ドイツとアメリカがセキュリティとテクノロジーについてどのような見方をしているのかに興味が湧いた。Friehe氏は次のように述べている。

「アメリカでは十分に安全だと考えられているようなドアでも、ドイツでは信頼を得られません。ドイツの家主は、自宅のドアが「耐久クラス」の条件を満たしていることに大きな誇りを持っています。米国のドアの多くはこの「耐久クラス」の最低ラインすら満たしていません。機械式の鍵についても同様です。ドイツでは1つ数百ユーロもするような高品質の鍵を購入しています。米国にも安全性のグレードはありますが、ドイツの消費者のほうがより幅広い選択肢があり、安全性の高い製品を選ぶことができます。Hormannグループとのパートナーシップもあり、我々の製品はドイツでも非常に高い安全基準を満たしています」

 

競争が加速する複雑な解決が求められるコネクテッドセキュリティ業界

HoneywellやYaleなどの企業が現れ、コネクテッドセキュリティ業界では競争が高まっている。だが彼らの多くはコンシューマー市場に焦点をおいており、古い商業ビルの問題に取り組む業者は少数派だ。これについてFriehe氏は次のように説明する。

「ビルを対象にしたプラットフォームでは、他社の多くは建物内のあらゆるハードウェアをソフトウェアに繋げる「ビル運用システム」をつくろうとしています。しかしそれが成功すると私達は考えていません。というのも強固なハードウェア基盤がないのであれば、旧来のシステムと近代的なシステムを繋げる方法がないからです。彼らはミドルウェアを提供することが可能かも知れませんが、ソフトウェアだけに目を向けている限りこの業界で勝ち残ることはできないでしょう。我々が彼ら他社と異なる点とは、IDに関連するデータを生み出すためのシステムの中核としてハードウェアを提供しているところにあります」

Friehe氏はまた空間の利用をモニターするのにセンサーを使っている企業についても、次のように述べている。

「彼らのやり方では我々と同じような品質のデータは生み出せないでしょう。彼らのデータは利用者のIDとは何ら紐付いていませんし、データを集められるポイントにも限りがあります。」

同社は空調冷暖房やエネルギー消費の最適化に携わる企業とチームを組むチャンスもあるだろうと考えている。「空調やエネルギーがどのように使われているかについての質の高いデータを我々は生み出すことができるため、それを必要とする企業も出てくるかもしれません」

 

コネクテッドロックの安全性は?

最近のDEFCONやBlack Hatカンファレンスの議題を見るだけで、家庭向けセキュリティデバイスのハッキングで名を挙げているセキュリティ研究者が多くいることが分かる。先週、Amazonが配達物を届けるために家のドアを開けることができるスマートドアロックシステムを発表した際は議論が割れた。Walmartも先日、同じようなシステムを使って食品を冷蔵庫まで届けるためのサービスの提供を始めた。このAmazonの宅配について行った3つの異なるアンケートの結果分かったことは、人々が強い抵抗感を持っているということだった。「そういったサービスは提供可能かも知れないが、やるべきことではない」という考えによるものかもしれない。

Friehe氏はセキュリティについて次のように考えている。

「この業界が保証しなければならないのは、ソフトウェア開発がいい加減に行われないことです。業界で認められた品質が適用されていなければならず、データの収集・保存に関して言えばより多くの定期的監査が求められるべきです。企業はセキュリティを第一に考え、ベストプラクティスを実践できなかった場合について、いつでもそれを説明できるようでなければなりません。非常にパーソナルなデータを扱うコネクテッドデバイスの場合はなおさらです。フリーマーケットはITセクターのセキュリティが現状に追いつくための触媒として働くことでしょうが、それまでに我々は更に多くの攻撃と被害を経験することになると思います」

現在、1aim社のアクセス管理システム LightAccess Proはドイツ、英国、フランスのAmazonか、同社に直接問い合わせることで購入可能だ。

CATE LAWRENCE
[原文4]