イングランドでもこれほど地域に根差したスタジアムは稀だと、スティーブ記者は言う。彼が感じた違和感とは? (C) SOCCER DIGEST

写真拡大

 私はこれまでいくつかの日本のサッカースタジアムに足を運んできたが、大宮アルディージャの本拠地である『NACK5スタジアム大宮』を訪ねたのは初めてだ。11月26日、ヴァンフォーレ甲府との一戦でその機会に恵まれた。
 
 まさに、住宅街のド真ん中に位置するスタジアム。日本にこんな立地の会場があるなんて思ってもみなかった。昨今のスタジアムは、世界的に集客力を上げるために電車やバスなどの交通機関を利用しなければたどり着けないケースが多い。これほど地域に根差した場所は、なかなか稀なのだ。
 
 イングランドでも新設、または増・改築されるスタジアムがあとを絶たないが、それらはいずれも巨大化の一途を辿る器で、住宅街の中心に建てられるケースは珍しくなっている。むしろ、住宅地をクラブが買収して敷地を拡張させているほどだ。
 
 そうした風潮が世界的にあるなかで、大宮の本拠地は、私に古き良きサッカースタジアムを思い起こさせてくれた。例えるならブラックバーン・ローバーズのイーウッド・パークだろうか。あそこも多くの住宅に囲まれ、ホームサポーターがより親しみを持てる場所である。
 
 しかし、もしも大宮のスタジアムがイングランドにあったとするならば、ホームサポーターとアウェーサポーターを分け隔てる通路の距離があまりに近いため、暴力行為の絶好の舞台となるだろう。残念ながらフーリガンの温床となるに違いない(日本ではありえない話だと思うが……)。
 
 また、日本のスタジアムでは珍しくピッチとスタンドの距離が近いのには好感を抱いた。選手との距離が近いのを良いことに選手を罵ったりしない日本人ならば、よりクリーンに、フットボールの迫力を間近に感じ取れるはずだ。
 
 ただ私が気になったのは、大宮サポーターの試合中の反応だ。あれだけチームを近くで後押しできる環境に恵まれながら、甲府サポーターの声量に負けていたように思う。
 
 もちろん、甲府サポーターの迫力には賛辞を贈りたいし、試合展開などさまざまな事情があったと思う。しかしながら、ホームの応援がアウェーの応援に負けることなどイングランドではありえないし、許されない。その点は英国で育った私からすれば違和感を抱く点であった。
 
 とはいえ、スタジアムに向かう道中に見た大宮のサポーターは、家族連れや若い世代が多いように思えた。地域密着がテーマとなる昨今のサッカー界ではポジティブな側面だろう。イングランドではそういったファン層に支持されるチームを『コミュニティークラブ』と呼ぶ。プレミアリーグでいえば、ストーク・シティやブライトンが当てはまる。
 
 大宮が『コミュニティークラブ』として成長し続けるならば、たとえJ2リーグに降格しようとも、ファンが離れることはないはずだ。少なくとも私はこの1試合で、彼らのスタジアムが大好きになった。
 
取材・文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)