米国に定期出張した筆者に、市場関係者が語ったホンネとは何か(tsuppy / PIXTA)

11月13日(月)〜18日(土)まで、ニューヨークとワシントンD.C.に出張、取材をしてきた。筆者の関心事項は多岐にわたり、取材で得た内容もさまざまだが、日本や米国の証券市場動向では、2つの点が極めて印象的だった。

米国の投資家やアナリストは、かなり楽観的?

まず1つは、米国経済や証券市場に対する現地投資家やアナリスト等の見解だ。景気については「特に死角はない」という見解がほとんどで、多少景気拡大の速度が低下しても、緩やかな景気拡大が長く持続するだろう、との見方だった。さすがに景気回復期間は、今年10月末までで満100カ月の拡大となり史上3番目と長い。そのため「いずれ自然に景気後退期に入るのではないか」との見解はあった。

だが、そうした識者でも、後退にはいるのは2018年ではなく2019年以降のいつか、という意見だった。このため、米国株価については、景気面からは、いわゆる「ゴルディロックス相場」、すなわち企業収益の悪化を懸念するほどは、景気は弱くなく、米連銀の急速な引き締めを懸念するほどは景気は強くないので、べたべたと緩やかな株価上昇がずっと持続するだろう、との観測がメインシナリオとなっていた。

しかし、米国で資産運用を行なって何十年、というベテランファンドマネジャーたちは、「米国株は予想PER(株価収益率)でみて、明らかに高すぎるし、皆が皆、ゴルディロックス相場が続く、と考えている今の状態は、長年の経験では危ない」と、浮かない顔つきをしていた。

そうした警戒感を表明したファンドマネジャーたちに、「では、あなたの運用機関では株式を売却し、保有比率を落としたのか」と尋ねてみた。
彼らの答えはどうだっか。

彼らの答えは、一様に「No」だった。保有比率を落としていないのである。その理由はいくつかあった。

わかっちゃいるけど、やめられない

たとえば、米国株が割高になったのは、つい最近ではなく、数カ月前でも既に高すぎた。そこで売りから入ったら、担ぎ上げられてしまい、損失が出た。今回も売ったら、「群衆」に流されてさらに株価が上がり、少なくとも短期的にはまた損をするのではないか、という恐怖がある。

あるいは、大きな運用組織(大規模な年金など)の場合は、ファンドマネジャー自身が警戒的に考えても、正式な運用方針の決定組織(「投資委員会」など)を説得しにくい。委員会で「米国株を売ろうとする理由は何か」と尋ねられて、「皆が皆、株が上がると言っているので、長年の勘ではこれは危ないです」と言っても、通らない。

また、米国市場における資金配分上、米国株式が高いので、米国国債や社債に資金を移そうと考えても、既に国債も社債も買われ過ぎていて、資金を持って行くところがない。強いて言えば現金だが、短期金利が低すぎて、運用目標を達成できない。

さらに、数理モデルを使って資産配分を行なっている投資家では、VIX指数(いわゆる恐怖指数)をモデルに取り入れているところが多い。VIXが低迷していることが、将来の株価変動リスクが小さいことを意味するため、「より多く株式に資産を配分せよ」、という算出結果がモデルで示される。それにファンドマネジャーとして逆らいにくい。

などなどなど、「米国株は高すぎるけど、こうした理由で売れないんだ、ぶつぶつぶつ…」というつぶやきが多く聞かれた。

このように、割高だと考える米国株の買い持ちを、「わかっちゃいるけどやめられない」という状況に皆が追い込まれている、という事態は、筆者にとって、かえって先行きどこかで危ない展開に入るのではないか、という警戒感をさらに強めることとなった。

もう一つ、非常に印象的だった、というか、驚いたのは、現地で取材した長期投資家や、そうした投資家と普段接している人たちから、「米系の長期投資家で、日本株への資金配分を本格的に増やしたところなど、自分が知っている限りでは、聞いたことがない」と言われるばかりだった、ということだ。

米系の長期投資家は、日本株に積極的になっていない

筆者は「日本の報道では、衆議院選挙の結果、安倍政権の長期化が確実になったことや企業業績の改善など日本の実態好転を踏まえて、『海外投資家が日本の現物株を長期的な観点から、しっかり買い上げている』と伝えられているが」と水を向けてみた。

すると、「そんな報道は、米国の投資家に限っては、まったくの間違いだね」と即座に否定された。

一部、ある米系の長期投資家が、日本株への資金配分を増やす意向で、その資金の運用を外部委託したいため、アクティブ運用ができる運用会社を募集する、という話があったと聞いたが、資産運用業界では、「えっ、日本株買うの?大丈夫?」と話題になっていたとのこと。

10月の日本株への、海外投資家の地域別にみた投資額をみると、欧州勢の買いが目立つ、という形だが、やはり米国の長期投資家は日本株投資には消極的だったのだろう。また欧州勢の売買も、裁定取引が主流だったということなので、欧州の長期投資家も日本株をしっかり買い上げていたかは疑問だ。

これまで当コラムで述べていたように、特に10月以降進んだ日本株の上伸は、NT倍率(日経平均÷TOPIX)の上昇にも表れているように、海外短期筋の日経平均先物買いが主軸だった、と考えている。米国での取材内容は、そうした観点を裏付けていたと言えるだろう。

このように、米国で取材した内容は、1)米国株価の堅調推移が続いているが、「わかっちゃいるけどやめられない」状態に支えられたものであり危険、2)最近の日本株の上昇は、海外投機筋の買いに支えられた部分が大きく、次の買い手がしっかり現れなかったり、外部からの悪材料が振ってきたりした際の、脆弱性が懸念される(買い手が一気に反対売買すると脆い)、という2点を裏付けるものだった。

では、いつ、そうした脆弱性が表面化し、株価が大きく下ブレするかについては、これまで当コラムでは年内の可能性を唱えてきた。それは今も変わっていない。だが、2018年にずれこむこともありそうで、株価調整のタイミングは不透明化していると感じる。

年内の材料としては、議会上院の年内の会期は11月27日(月)〜12月15日(金)で、この間に、上院独自の税制改革案が審議される。今のところ、上院ではかなり早期に、11月30日(木)に採決する可能性が高いと報じられている。そこですんなり可決されれば、とりあえずは無風だが、共和党内の財政均衡重視派が、「やはりオバマケアの改廃など、代替財源がなければ減税には反対だ」と、また声を強めているとも聞く。こうした声が強くなると、法人減税の実現性に不透明感が広がり、株価の悪材料となるだろう。

また、財政面では、12月8日(金)に再期限が来る、暫定予算と債務上限引き上げも、気になるところだ。

両方とも、期限が来ても何も手が打たれない、という事態は見込みにくいし、債務上限問題も、期限後当面は財務省が資金のやりくりができると言っている。加えて、11月28日(火)には、ドナルド・トランプ大統領が混乱を避けるため、早々に議会と協議を始めるとの観測がある。それでも、本当に大丈夫なのか、市場が不安視する展開はありうる。

タイミングは不透明だが市場の混乱は想定しておくべき

これに絡んだ重要な政治イベントとしては、12月12日(火)に、アラバマ州で上院補欠選挙が行われる。共和党の候補に対して、過去の不適切な行為についてスキャンダルが湧き起こっており(筆者の滞在中のテレビニュースは、数日間こればかりだった)、もし共和党がここで議席を失うと、上院は共和党51議席、民主党49議席と、さらに僅差となる。

上記を踏まえ、引き続き年内に米国株価が下振れ、それが米ドルも押し下げて、日本株も下落する、というシナリオを継続するわけだが、これも米国の取材先が言った言葉を引用すると「株価が上がっている間は、悪材料は見えないふりをする」という投資家の態度が持続する可能性もある。税制改革案の審議にしても「どうせ上下院案をすり合わせる決着は来年なのだから、今年内は気にしない」という市場の空気になれば、米国株や米ドルの調整が来年にずれこむことも否定はできない。

それでも、だ。来年まで展望しても、タイミングは不透明だが、さまざまな株価下落材料が挙げられる。たとえば、足元のサウジアラビアとイランの対立の先鋭化から、原油価格が跳ね上がり、米長期金利が上振れして、それが株価調整を引き起こす展開。あるいは、先週、米ドル円相場がするりと1ドル=112円台から111円台に居所を変えたように、特に米ドル安・円高材料がなくても、先物市場で積み上がった円売りの巻き戻しだけで、突然円高に振れるケース。こうした懸念要因は、すぐに起こってもおかしくないし、実現するのは来年かもしれないが、いずれ市場波乱が来ると、想定すべきだろう。

さて、今週だが、述べたように、米国発の株価調整のタイミングは不透明で、今すぐでもおかしくはない。ただ、どちらかと言えば、感謝祭からクリスマスにかけての休暇ムードで、売り方も活発には動かないだろうし、市場の眼は米クリスマス商戦の実態などに向かい、目先は薄商いのなか、株価の単なる上下動が何となく続く展開になりそうだ。今週の日経平均株価は、2万2200〜2万2900円を予想する。