スーツに合うコートを1着選ぶとすると、どんなコートがいいか (写真:YakobchukOlena / PIXTA)

年末年始が近づくと共に、本格的に気温が下がってきた。コートが手放せない、冬の到来である。

となると、就職してからはじめての冬を迎える新入社員にとって「そういえば、仕事で着るコートって……何を選べばいいんだ?」と悩まれる方も多そうだ。

もちろん「ノースフェイスのダウンジャケットを着れば超絶暖かいし、ついでに靴も雨も雪も怖くないダナーなんかのブーツにしたら完璧だなー」と、高機能なアウトドア製品で固める手もある。とくに雪国なら、それこそ間違いのない選択だ。

スーツに合うコートを一着持つなら


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もっとも「基本的にスーツスタイル」という堅めの業種や、「服装にうるさい上司がいる」といった職場の方は、やはりコートもそれなりに“オンタイムに沿ったもの“を一着もっておくほうが無難だろう。

そこで今回は、若手社員がスーツに合わせるコートを一着買うとしたら「これにしとけば間違いない」という選び方とオススメのコートを、松屋銀座の紳士課マネージャーの川島雄太氏に伺った。冬将軍が本気を出す前に、購入の参考にしていただきたい。

コート選びのコツ1 ジャケットが隠れる着丈&袖丈が無難

たまにキルティングジャケットなど、着丈が短めのアウターをスーツに合わせて着こなしている人がいるが、スーツのジャケットの裾が「こんにちは」と、顔を出してしまっている。これは見た目的にも防寒的にもNGだという。

「丈の短いコートはスポーティに見えて動きやすいのですが、中に着たジャケットが見えてしまうのは、やはり少しみっともなく見えてしまいます。また防寒という意味でも、長いほうが暖かい。スーツに合わせるコートを一着…というならば、やはり着丈は長めを選ぶほうがいいのではないでしょうか」(川島さん)。

スーツに合わせるコート選びの鉄則は、まず「着丈が普段着ているスーツのジャケットより長い」こと。しかも、寒さ対策を万全にしたいなら、膝上近くまでの、丈が長めのコートを選ぶのが良さそうだ。

「またコートの丈が短くなるほどスポーティでカジュアルに見えることからわかるように、逆に長くなるとシックでフォーマルに見えます。スーツに合わせる一着を選ぶのなら、やや長めを選ぶほうがオススメですね」(川島さん)。

着丈のみならず袖丈にも気を配りたい。コートの袖丈は、中に着たジャケットと同じくらいか、それより長いのが基本スタイル。しっかり手首を隠したほうが寒さを防げるし、見た目もすっきりするからだ。

丈が長くなるとシックでフォーマルに見える

コート選びのコツ2 ダークカラーがやっぱり、無難

今回のテーマである「一着に絞って選ぶ」のなら、コートの色はネイビーや黒などのダークカラーを選ぶのが良さそうだ。ベージュなどの茶系コートも渋くて格好いいのだが、明るめのカラーは「汚れが目立つ」というデメリットがある。またベージュなどは膨張色なため、着慣れていないと、やや間延びして、だらしなく見える可能性もあるという。

「ダークネイビーや黒などは締まって見えるので、長め丈でもすっきりと見える。加えて、中に着るスーツがネイビーでも黒でも、あるいは茶系でも合わせやすいのもいいところですね」(川島さん)。

ただし、同じダークカラーでも、ストライプやチェックなどが目立つ柄入りのものは、最初の一着としては選ばないほうが良さそうだ。

「スーツのパンツでストライプやチェックなどの柄物はけっこうポピュラーですよね。そうしたパンツと合わせたときに、上に着たコートがまたストライプやチェックなどの柄だと柄×柄で、ガチャガチャとうるさく見えがち。相当に上級者向けになってしまいます。合わせやすさで選ぶなら、無地か目立たないヘリンボーン模様の柄くらいがいいでしょう」(川島さん)。

コート選びのコツ3 カタチはベーシックなのが無難

ダッフルコート、ピーコート、モッズコート……。コートの種類は多々あるが、スーツに合わせる一着ならば、やはりベーシックなものを選ぶのがいいだろう。ダッフルコートやピーコートはカジュアルなイメージが強く、プライベートのときと兼ねて使うにはいいが、「スーツに合わせて間違いない」という今回のお題から考えると、やや中級者向けかもしれない。

また元はミリタリー用に使われていたモッズコートをスーツに合わせるのは、あえてミスマッチを狙った“ハズし”の着こなしとしてはアリ。しかし、1990年代の名作刑事ドラマ『踊る大捜査線』感が滲み出るのは否めない。いちいち先輩社員に「青島!」と呼ばれたり、「事件は現場で起きているんだ!」と言わされそうで、めんどくさそうだ。

「そう考えると、スーツに合わせる冬のコートのカタチは『チェスターコート』か『ステンカラーコート』などの、極めてベーシックなものがベターだと考えます」(川島さん)。

コート選びのコツ4 実はオールマイティな「チェスターコート」

というわけで、1〜3の条件を考えたうえで、川島さんがすすめるコートは2つ。

まず1つは「ウールのチェスターコート」だ。チェスターコートとは、ご存知のとおり、スーツのジャケットの丈をそのまま膝丈くらいまで長くしたようなコートのこと。19世紀にイギリスのチェスターフィールド伯爵が着たことがその名の由来とされている。

チェスターコートはオンでもオフでも使える


チェスターコートの試着例。オンタイムでもカジュアルにも合う“使い勝手の良い“コートのひとつだ(筆者撮影)

「ここ数年、学生の方などもカジュアルに着こなす方が増えたので馴染みのある人も多いはず。けれど、そもそもがドレッシーなコートですからね。もちろんデニムなどと合わせたカジュアルスタイルでも使えますが、オンタイムのスーツスタイルにこそ合う、つまり“使い勝手の良い“コートです。ダークネイビーや黒のウール製なら冠婚葬祭にまで使えるほどですからね」(川島さん)。

少し気になるのは、スーツのジャケットと同じようなラペル(衿)がついていること。ラペルONラペルで、あたかも十二単のようになってしまうのは、着こなし的にはどうなのか、と迷われる方もいそうだ。

「そもそも問題ないですし、もし気になるようなら、マフラーなどを首元に巻いて隠す。また、コートの衿元をなぞるようにマフラーあるいはスカーフを合わせると防寒対策になると同時に、オシャレに見えるし、そのうえ顔やクビの脂がコートにつかないというメリットもあります。コートの差し色になるような、少し明るめのグレーや、ちょっとした柄の入ったマフラーを合わせるのもオススメですね」(川島さん)。

コート選びのコツ5 「ステンカラーコート」も選択肢

もう1つのオススメは「ステンカラーコート」だという。バルマカーンコートとも呼ばれる、シンプルに折り返した衿がついた定番中の定番のコートだ。これもチェスターコート同様にロング丈が基本なため、スーツにはばっちりハマるし、Vゾーンが見えなくなる分、コーディネートもしやすいといえそうだ。さらにステンカラーコートの場合、防水、防寒などに優れた「高機能新素材」を使ったコートが多々出ているのも、推す理由だという。


ステンカラーコートは、防水防湿機能があるゴアテックス素材を使ったタイプも登場している(筆者撮影)

「防水防湿機能があるゴアテックス素材など、アウトドアで使われている素材をそのままステンカラーコートに使っているうえに、しっかりビジネスシーンになじむコートが多くでていますからね。ほどよいカジュアルさもあるので、当然、オンオフ両方使える。若手社員の方々にはとくに着こなしやすいと思います」(川島さん)。

オンオフいけると共に、トレンドに左右されないことも「コスパ」重視の若手社員にはポイントが高いだろう。

まとめると「着丈が膝上くらい」で「ネイビーや黒のダークカラー」の「チェスターコートかステンカラーコート」が、スーツに合わせて無難なコートといえるだろう。

長く着たいなら何度も洗わない

しかし、こうして選んだコートも「ワンシーズンで買い替え」のような短命に終わらせるのはあまりにもったいない。長持ちさせるためのコツが2つほどあるので、覚えておこう。

まずは「仕事帰りにコートを買いに行く」こと。いや。別に休日でもいいのだが、スーツに合わせるオンタイム用のコートであることを考えると「普段のジャケットを着た状態で試着」しないと、本当のフィット感がつかみにくいからだ。仕事着のまま帰りにちらっとショップによって試着、購入すれば間違いないからだ。

「休日にニットやシャツの上に試着すると、『ジャストフィットだ』と思ったものがジャケットの上に着るとタイト過ぎて、動きづらく、結局、オンタイムで着なくなる……ということがありえますからね。逆に大きすぎても動きづらいので、しっかり普段着ているジャケットのうえで試着して購入を決めるのがよいでしょう」(川島さん)。

もう1つは「やたらとクリーニングしない」ことだという。え、洗濯したほうが長持ちしそうと思う方もいそうだが、逆だという。

「とくにウールなどの素材はそもそも生地に油分を含んでいて、それがゴミや脂を弾く作用がある。クリーニングをするとどうしてもそうした油分が抜けて傷みやすくなる。また生地のふっくらとした質感も下げてしまいます。よほどの汚れがなければ、クリーニングに出すのはシーズンが終わってから、でいいでしょう」(川島さん)。

日々の手入れは、帰宅したら肩の部分をしっかりと太いハンガーにかけて、ブラッシングしてほこりなどを落とす。あとはそのまま、室内に陰干しして湿気をとる程度でいいそうだ。

さて、街はクリスマスセールの時期に入ってきた。どうせならスーツにハマる無難なコートを狙い、セールに足を運んでみてはいかがだろう。もちろん、仕事帰りに。