『お台場旧車天国 2017』から、名車・珍車をご紹介! 第5回:『マニアック天国』軍用車編(その1)
11月19日(日)に東京江東区・お台場特設会場で開催された旧車の総合イベント『旧車天国』から、ユニークな参加車両をご紹介していくこの連載、第5回目となる今回は軍用車編。

【ギャラリー】Odaiba Kyusha Tengoku 58


軍用車両とは軍隊が軍事目的で使用する車両の総称である。
一口で軍用車両と言っても用途や種類はさまざまだ。一般的には戦車や装甲車のように、攻撃用の武器を持ち、強固な装甲を備えた車両のことをAFV(Armored Fighting Vehicle:装甲戦闘車両)と呼び、ジープやトラックのように攻撃用の武器を持たず、非装甲の車両のことをソフトスキン(Soft skin)という。

武器の管理が厳しい自衛隊ではほとんど行われていないが、諸外国の軍隊では旧式化して耐用年数が過ぎた軍用車両は民間に払い下げられることがある。それらの退役車両の多くはスクラップとされるが、中には好事家の手に渡り、レストアされて趣味の対象として大切に保存されるケースもある。

わが国は武器に関する法規制が厳しいこともあり、一般の市民がAFVを乗り回すことはもちろん、所有についても極めて難しい状況にある(筆者の友人のように英陸軍のフェレット装甲車にナンバーを付けて楽しんでいる人もいなくはないが...)。そのため、国内の軍用車両ファンが愛好の対象としているのがジープや小型トラック、軍用オートバイなどのソフトスキンだ。

しかしながら、軍事アレルギーの強いわが国では、こうした軍用車両趣味が市民権を得ているとは言い難く、年式的には条件を満たしているにもかかわらず、軍用のジープや小型トラックはエントリーを認めていない旧車イベントも多い。

そんな状況にあって『旧車天国』は軍用車両にも広く門戸が開かれており、会場でももっとも目立つ『マニアック天国』エリアに展示されていた。今回はそんな『旧車天国』の会場で出会った軍用車両を紹介する。


ウィリスMB

"元祖ジープ"とでも言うべきウィリスMBは、米軍兵士のために開発された多用途車で、第2次世界大戦の開戦と同時に大量生産され、米軍とその同盟軍に多数が配備され、大戦を通じて活躍した。

戦場でのジープは移動・物資の輸送・連絡・斥候(偵察任務)・戦闘・負傷兵の移送など幅広い任務に活躍し、一兵卒から将官まで階級を問わず多くの軍人に愛用された。

欧州の戦争でドイツ軍の小型軍用車両・キューベルワーゲンの活躍に注目した米陸軍は、1940年に国内の自動車メーカー各社に設計要件を伝えて、積載量1/4tの偵察用小型4輪駆動車の開発を指示したことがジープ開発の始まりであった。

米陸軍の要請に応じたのが、アメリカン・バンタム社、ウィリス・オーバーランド社、フォード・モーター社の3社で、最終的にバンタム社の設計をもとに改良を加えたウィリス社のMAが正式採用された。そして、量産に当たってMAにさらなる改良を加えたのがMBである。

しかし、米国が連合軍側に立って第二次世界大戦に参戦すると、中堅自動車メーカーのウィリスの生産能力だけでは不足が感じられたことから、陸軍の命令でフォード社にも設計が公開され、互換性のある同じ仕様のGPWがフォードの工場でも生産されることになった。

『旧車天国』に展示されたウィリスMBは、ジープ専門店『オートジャンクション』が美しくレストアした車両で、米陸軍や米海兵隊のオリーブドラブ色ではなく、シーグレーに塗装された米海軍仕様となっている。

バンパーや車体後部に描かれた「VF11」とは、海軍の第11戦闘飛行隊「レッドリッパーズ」のことである。同飛行隊は大戦中に空母レンジャーとともに活躍したVF41を前身に、48年に編成された飛行隊だ。このジープはVF11の連絡車両として製作されたようだ。


ジープの原型となったバンタム1号車。


MBの前身となったウィリスMA。


ウィリスM38

1949年に登場した初の戦後型ジープ。米軍内ではM38の分類番号が与えられているが、ウィリス社内ではMCと呼称された。

この車両はウィリスMBの改良型で、ヘッドランプが大型化されたほか、防水機構の追加、駆動系の容量増加(トランスミッションをT84型からT90型に換装)、電装の24ボルト化などの改良が行われるいっぽうで、コストダウンのためにフル・フローティングリジットアクスルからセミ・フローティングリジットアクスルへと変更されている。


展示車両はミリタリー車両のミーティングでは常連となっており、これまでに筆者は『ジープの機能美展』をはじめとしたイベントで見かけたことがある。

シングルナンバーを付けていることからもわかる通り、古くから日本にある車両で、1960年に米軍で払い下げを受けて国内で登録されたという。M38の国内現存車両は20〜30台程度と、ミリタリージープの中でも希少性が高い。


1952年に登場したM38のボディを拡大した改良型のM38A1(ウィリス社の社内呼称はMD)。同車はジープシリーズの最終生産型となった。


キューベルワーゲン Typ82

キューベルワーゲンTYP82は、1938年にフェルディナント・ポルシェによってVWタイプ1(当時はKdfワーゲンと呼称)から派生した小型軍用車両である。
それまでドイツ軍は軍馬やオートバイ、サイドカーを物資の輸送や連絡、斥候などに用いていたが、それらの任務を置き換える画期的な軍用車両としてキューベルワーゲンは開発された(実際には車両不足により大戦終結までにドイツ軍は完全に自動車で代替することはできなかった)。


キューベルワーゲンの駆動方式は、ジープとは異なりRRレイアウトの2WDとなるが、リアアクスルにハブリダクションギアを装備し、駆動力を高めるとともに車軸取付け位置を高くしたことで抜群の不整地走破性を誇った。
また、タイプ1譲りの空冷フラット4エンジンは、冷却水やラジエターが不要で、極寒の東部戦線や酷暑の北アフリカ戦線でも高い稼働率を保った。

敗戦国の軍用車輛と言うことで、残存数はジープほど高くはなく、オリジナルのキューベルワーゲンを国内では見る機会が少ない(カナダ製のレプリカが50台ほど輸入されている)。


以前に筆者が撮影したカナダのインターメカニカ社が製造したキューベルワーゲンのレプリカ車両。ボディはFRP製となり、車高や足回りなど細部がオリジナルと異なる。

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