かつて日本代表でも数多くのスーパーセーブを披露してきた川口能活【写真:Getty Images】

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【連載最終回】「僕は完全にサッカーに取りつかれている」―42歳、今なお現役の原動力とは

 自身のサッカー人生を綴った著書「壁を超える」を上梓した元日本代表GK川口能活(SC相模原)。19日のJ3・FC東京U-23戦でリーグ通算500試合出場を達成するなど、42歳にして今なお、ピッチに立ち続ける希代の名GKはいかにして、現在の地位まで上り詰めたのか。全4回にわたり探る連載。最終回はプロ選手として長く現役を続けるパワーの源について語る。

 高校卒業後、横浜マリノス(現横浜F・マリノス)に入団し、現在、J3のSC相模原で24シーズン目を戦う川口。プロとして長くプレーするために必要のことは何か?

 その問いに「情熱、自己管理、結果を残すこと。そして、サッカーを始めた原点に返ること」と答える。

「プロである以上、日々のトレーニングから真摯に取り組み、100%の力を尽くす。そして、どんな状況でもグラウンドの上では弱みを見せない。これらを継続しているからこそチームは僕と契約し、試合に足を運んでくれるファンの方々もいると思っています。

 プロ選手としてプレーするのは、当然、楽しいことばかりではありません。パフォーマンスが悪ければ試合に出られないし、失点すれば責任を問われる。でも苦しいときこそ初心を思い出すことが大切。僕はサッカーを好きで始めたし、楽しいから今も続けている。その純粋な気持ちがあるかないかで、練習の取り組み方から変わるんです」

「スーパーセーブ」――。川口の活躍を評するとき、過去に幾度となく登場した言葉だ。彼の「スーパーセーブ」につながる強さは、どこから来るのか。

川口が「スーパーセーブ」を呼べる理由、「強い野心、ちょっとした遊び心」の必要性

「僕の場合、自分が目立ってやろう、勝利の立役者になろうという気持ちが底力となります。GKはゴールを守る最後の砦。誰も助けてくれません。チームのために戦う、というのはベースにありますが、それだけでは圧倒的にパワーが足りない。勝負を決めるためには『自分が主役になってやる!』という強い野心、ちょっとした遊び心が力になるんです」

「そもそもスーパーセーブと言われるプレーはいつも練習でやっていること」と川口。

「行きつくところ、本番で出せる力のベースは日々のトレーニングにあります。練習と試合ではシーンが変わるだけのこと。いかに試合を想定し、練習時から全力で取り組めるか否かが左右する。つまり、日頃のトレーニングから闘いなんです。観客がいない練習場でも、試合と同じ気持ちで100%のプレーをする。その積み重ねがあって、本番に力を発揮できる。スーパーセーブなんて、急にはできません(笑)」

 時には100%の力で練習に臨む難しさを感じることもある。体が痛い、気持ちがのらないときもあるし、J3でプレーする今はグラウンド内外問わず、チームに頼らず自分自身でやらなくてはいけないことも多い。しかし、苦しくなればなるほど、“サッカーが好きだ”という気持ちに行きつくという。

「だから、現役を続けている」―42歳、今なお想い続ける“サッカーの魅力”とは

「確かに今は練習着の洗濯もシューズの管理も自分でしなければいけないし、グラウンドもJ1のようないい環境を望めません。でも現役選手にこだわり、続けようと決めたのは自分。そのために必要な努力は惜しまない。僕にとって最も辛いのは試合に出られないこと。

 ピッチの外で『何故、出られないんだ』『何故、勝てないんだ』とジリジリする時間はものすごく苦しい。だけど、グラウンドに入れば、練習を、試合をやれる充実感に満たされる。それまでに感じていた辛さなど、一瞬で忘れてしまいますよ」

 プロ選手である限り、きれいごとでは済まされないことがたくさんある。でも、それにも勝る魅力がサッカーにはある、と川口。

「サッカーを、GKをやっていることが本当に楽しい。だから、現役を続けているのだと思います。僕は完全にサッカーに取りつかれているんです」