3Dプリンターで製作したステンレス部品のサンプルを検査するLLNLの研究者(Kate Hunts/LLNL)

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 材料にステンレスを使い、これまでの金属3Dプリンターによる製造部品の約3倍の強度を持つ立体形状を作り出す手法を米ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)などの研究チームが開発した。通常のステンレスの2倍の強度を持たせながら、それとトレードオフの関係にある延性を、これまでと同等レベルとすることにも成功した。

 材料として使用したのは、炭素の含有量を極めて少なくしたSAE 316Lというオーステナイト系ステンレス鋼。ステンレスの中でも塩分などによる耐食性に優れ、強度が高いだけでなく、強い力がかかった場合に破断しないで柔軟に変形する延性を併せ持つ。そのため、今回の成果は船舶向けをはじめ、厳しい環境下で大きな力のかかる航空機、自動車、石油・ガスなどの産業分野に応用できるとしている。

 多くの金属3Dプリンターはレーザー焼結という方法を使って、金属パウダーを溶融しながら2次元形状を繰り返し積層し、目的の立体物を作製する。ただ、レーザー焼結の過程で多孔質の構造があると部品の強度が落ちる上、強度と延性を両立させるのが難しかった。

 そこで、LLNL、エイムズ国立研究所、ジョージア工科大学、オレゴン州立大学からなる共同研究チームは、金属結晶による微細構造を最適化するコンピューターモデルや、それにもとづいて標準的な金属3Dプリンターでのレーザー焼結プロセスを温度制御する手法を確立した。

 この手法では、加熱・溶融過程で、あたかもステンドグラスが何枚ものガラスの組み合わせでできているように、ステンレスの中に金属結晶の小さな部分構造ができるようにする。こうした部分構造の中には結晶欠陥が入り込み、それが部分構造内を移動することで素材の延性を確保する。同時に、これらの欠陥は境界を越えて隣接する部分構造に移れないことから、ステンレス全体では脆くならず全体の強度を高めることができたという。

 LLNLによれば、ステンレスに限らず、強度がそれほど高くない軽量合金やほかの金属などにもこの手法の応用を目指すという。今回の成果は10月30日付の学術専門誌ネイチャー・マテリアルズに掲載された。