山極壽一総長

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 京都大学は創立以来、自由の学風を掲げてきた。指定国立大学法人のみが対象となる規制緩和を最大限生かし、より柔軟な対応で多元的な課題を解決、国際的な存在感の向上を図る。2018年4月に設立するコンサルティング会社によるビジネス展開や国際化、人文系の発展に取り組む。「社会の期待に応えたい」と意気込む山極壽一総長に構想を聞いた。

 ―指定国立大学としての方針は。
 「大学の三つの使命である国際化と人材育成、産学連携を促進する。大学の資金と人材不足が課題となる中、自由度が増し、新たな取り組みで個性が発揮できる。国からは人文社会学のけん引を期待されている。若い教員の意見を反映し、研究者を支援する職員も増やして研究環境を整える。総合大学であることを生かし、自然科学に人文科学の考えを組み込んだ議論を活発化し、未来の社会へ成果を発信していく。世界の大学モデルを踏まえて取り組む」

 ―新会社の特徴は。
 「指定国立大学だけに認められたビジネスの規制緩和を生かしていく。来春にも設立するコンサル会社『京大オリジナル』の設立は、飛躍に向けた第1歩だ。新会社に加え、既存のベンチャーキャピタル(VC)と技術移転機関(TLO)の3社を合わせて持ち株会社化して大学とは別組織にすることで、大学にある規制を受けず自由に活動していきたい」

 ―具体的には。
 「英オックスフォード大学の取り組みを参考に、ビジネスを通じての研究資金獲得を図る。企業から事業化のプロ人材も招き、素早い動きを実現したい。また積極的に情報を発信し、大学の実態や企業に求めることが伝わりにくい現状を変えていく」

 ―国際展開についてはどうでしょうか。
 「海外での拠点を強化し、研究者同士の交流を活性化する。今後、現地の大学や研究機関と協働する『オン・サイト・ラボラトリー』の設置を加速したい。若手研究者獲得の『白眉プロジェクト』も進めやすい。留学生への日本語教育『吉田カレッジ構想』にも取り組む。優秀なアジアの高校生を京大に呼び込みたい。外国人に日本語を学んでもらうことこそが国際化。日本語で考える力をつけてもらう」

 ―研究者の育成方針は。
「複数大学で研究者を共同採用し、拠点を自由に選べる仕組みづくりを進めている。若手の研究者が任期制限のないポストに就けるかが重要だ。留学生は、定員数や授業料を柔軟化できれば、より大勢呼び込めるはずだ。今は制度の課題があるが、授業料を高めに設定しても、言語や生活習慣の違いをケアする体制や設備を整えれば充実した環境で学べる」
(聞き手=大阪・安藤光恵)
【略歴】やまぎわ・じゅいち 80年(昭55)京大院理学研究科博士後期課程研究指導認定退学、同年日本学術振興会奨励研究員。82年京大研修員、83年日本モンキーセンターリサーチフェロー、88年京大霊長類研究所助手、98年京大院理学研究科助教授、02年教授、11年理学研究科長・理学部長、14年総長。理学博士。東京都出身、65歳。