自身も元実業団ランナーの和田が見た「陸王」の現場とは?/撮影=龍田浩之

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池井戸潤氏の小説を原作に、足袋屋の四代目・宮沢紘一(役所広司)がマラソンシューズづくりに挑む姿を描いたドラマ「陸王」(TBS系)。本日11月26日放送の第6話では、陸王を履いた茂木裕人(竹内涼真)が実業団駅伝の華・ニューイヤー駅伝に出場し、ケガからの復活レースに挑む。

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そして同じチームには、このレースをもって現役を引退することを決めたチームメート・平瀬孝夫(和田正人)の姿も…。“こはぜ屋”のシューズづくり、ケガと戦う茂木にも劣らぬ熱いドラマを見せる平瀬。演じる和田は、自身も大学時代箱根駅伝を走り、実業団に所属した経歴も持つランナーだ。平瀬のラストランを前に、和田に役柄への思いや撮影エピソードを直撃!

■ 選手としての平瀬の苦悩にすごく共感します

――平瀬というキャラクターのどんなところにリアリティーを感じますか?

限界を感じて引退していく、という部分にはすごく縁を感じましたね。僕の場合は(所属していた実業団チームの)廃部がきっかけで引退したんですけど、選手時代に「このまま続けていってどうなるんだろう」っていう苦悩はすごくあったし、ケガが多いというのも平瀬と一緒だし、そこに若手のスーパーエースが入ってきてあっという間に追い抜かれてっていう…。まだ俺はいけるって思いながらも、頭の片隅ではもう限界かなって思ったり、そういう細かい苦悩にすごく共感できます。

――6話ではニューイヤー駅伝に出場します。

僕自身、中学、高校、大学、社会人と長距離をやってきて、実業団でのわかりやすい目標ってニューイヤー駅伝に出場してチームに貢献することだったんです。でも結局、ニューイヤー駅伝を走らずに引退した。1年目はケガばかりしていてメンバーに入れず、2年目、よし、ここからもう一回いくぞっていう矢先の廃部だったんで…。陸上を12年ぐらいやって、唯一やり残したこととっていうのが「ニューイヤー駅伝を走れなかった」っていうことなんです。それが引退して10数年、役を通してニューイヤー駅伝にチャレンジすることができる。ちょっと運命めいたみたいなことをいうと、神様ってやり残したことにちゃんと決着をつけさせてくれるんだなって。もちろん本物じゃないけれど、形は違えど、すごくありがたいチャンスをいただいたなと思いました。

■ あと10歳若ければ茂木も演じてみたかった

―平瀬を演じるにあたって、体づくりはいつ頃から始められたんですか?

今年1月、出演していた舞台を伊與田英徳プロデューサーが見に来てくださったんです。その頃、なんとなく「陸王」がドラマになるかも…っていう噂も聞いていて、その日も「やるらしいですね」なんて話していて。そしたら、舞台の感想とかを話したあと、伊與田さんが帰り際に「しっかり走っとけよ」って(笑)。それで、「あれ?これ、出させてもらえるヤツかな」と。それまでも走ったりはしていたんですが、そこからですね、2月くらいから本格的に走り始めて。陸上部のメンバーが集まってからは青山学院大学での練習が始まって、そこに何回か参加させてもらって…っていう感じです。

――最初から、演じるなら平瀬だろうなって思ってました?

まぁね、年齢的にね(笑)。平瀬は本当に魅力的な役だと思います。でも、あと10歳若ければ茂木も演じてみたかったですね。茂木もケガと向き合っているし、原作でもちょっと不愛想な感じがあるじゃないですか。ああいうのはすごくよく理解できるんです。長距離選手って意外とコミュニケーションが苦手なタイプが多くて、僕も現役当時はそうだった。すごく共感できますね。

――台本を読んでいて、印象に残ったシーンやセリフはありますか?

今回6話でニューイヤー駅伝を走って、それが平瀬の引退試合、ラストランになるんですが、その6話の中で原作には描かれてない平瀬のシーンがいくつかあって。中でも平瀬と茂木がお風呂で話すシーンが印象的ですね。ランナーとかアマチュアスポーツ選手が引退した“その先”にスポットを当てていて。僕が平瀬を演じたことの意味ってまさにそこにあるのかなっていう。

僕自身、引退したあと役者を志して、周りからは「やめとけ、そんなのムリだよ」ってさんざん言われたけど、なりたい自分、やりたいことをやっていく人生を手に入れることは絶対できるって思っていたし、今でもずっと思っているし、おかげさまでこうやって役者をやらせてもらえている。それってやっぱり、自分がやりたいと思ったからなんですよね。ぜひ、そういう裏テーマにも注目してほしいなと思います。

■ すごく熱い風呂に入って「あ〜、これこれ!」っていう感じです(笑)

――番組の公式SNSでも仲のいい雰囲気が伝わってきますが、陸上チームの現場はどうですか?

とてもいいと思いますよ。竹内涼真含め、みんなでバカみたいなこと言い合ったり、でもやるときはしっかり集中して。「ルーズヴェルト・ゲーム」(’14年TBS系)に出演させてもらったときに、チームが一つになって夢に向かって熱い時間を過ごしたっていう実感があって。撮影はすごくしんどかったんですが、みんなで苦労も分け合いながら励まし合った感じがね、なんだかとっても素敵だったんです。今回は陸上部の中で最年長っていうこともあるし、陸上経験者でもあるし、そんな雰囲気をまた作っていきたいなと。この間も、城戸監督(音尾琢真)とメンバー何人かで箱根駅伝の予選会を見に行きました。スタートする前の緊張感とか、レース終わった後の感じを生で見れば、熱のこもり方も違ってくるだろうと。そういう気の遣い方は一応、経験者だからできるじゃないですか。そういう形で貢献できたらいいかなと思ってやってます。

――「ルーズヴェルト・ゲーム」に続いて福澤克雄監督の現場は2回目。“福澤組”の現場はいかがですか?

やっぱり楽しいですよ。ほかのドラマ撮影ではなかなか経験できないスケールの大きさ、緊張感があって。あと、みんながすごく情熱的になっている。しんどいことももちろんありますけど、その方が楽しいじゃないですか。「ああ、いいな」って思いますね。すごく熱い風呂に入って「あ〜、これこれ!」っていう感じですね(笑)。

■ チャンスは努力した人にしか舞い込んでこない

――最後にドラマの見どころをお願いします。

例えば、どうにもならない状況から何かひとつ打開策を見つけるっていうときに、ドラマだから自然にその打開策が舞い降りてきてるように見えますよね。運命的な出会いとかがあって、「実際そんなに甘くはないよ人生は」って思う人もいるかもしれない。でも、そもそも打開しようという努力とか視野を広げるとか、それをした人にしかチャンスって舞い込んでこないんですよね。もしかしたら、今回僕がニューイヤー駅伝をこういう形で走るチャンスに出会えたっていうのも、もがいていた僕へのプレゼントなのかもしれない。

このドラマのキャラクターたちもそういうふうに思っているからこそ、どうしたらいい? なにか手だては?って悩みながら、一歩先に進む。だから、役所さんや涼真やほかのみんなの芝居からゾクゾクッとした高揚感、いいものをもらったと思える。日曜劇場の枠でそれを体感して、「あしたから月曜日か、一週間が始まるな。よし、頑張ろう、ちょっとだけ自分を変化させて過ごしてみよう」って思ってもらえたらものすごく素敵だなって思っていて。その、心を動かして行動に移させるだけの力があるっていうのが、このドラマのもっとも大きな魅力なのかなって思います。(ザテレビジョン)