J1昇格決定後にサポーターへ向けて挨拶をする村上。今季は6試合の出場にとどまったが、裏方でチームを支え続けた。

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 J2リーグは11月19日にリーグ戦全日程を終え、J1昇格をかけたプレーオフが26日より始まる。自動昇格を決めたのは、湘南ベルマーレとV・ファーレン長崎。今シーズンのスタート時には、経営危機によりチームの存続も危ぶまれた長崎だったが、8月27日の30節より13戦無敗、10勝3分という成績で自動昇格を決める2位に食い込んだ。劇的なラストを飾ったチームを支えたキャプテン村上佑介選手に、話を聞いた。
 
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【長崎 3-1 讃岐 PHOTO】長崎がクラブ史上初のJ1昇格を決める!
 
 シーズン開幕前に、3億円を超える累積赤字によりチームが経営危機に陥っていたV・ファーレン長崎。2月26日、そんな不安定なチーム状況のなか、開幕戦を迎えた村上は、「現在、長崎ではサッカーではなく、経営が話題になっています。それは選手にとっては悲しいことで、サッカーで結果を出して、そんな話がなかったように、覆していきたい。サポーターには、そのサポートをお願いしたいし、選手を鼓舞してもらいたいと思っています」と話していた。
 
 4月下旬にユニホームの胸スポンサーでもあった地元企業の通販大手ジャパネットホールディングス(HD)創業者の郄田明氏が新社長に就任。経営の心配がなくなり、チームを取り巻く環境が一変した。村上はその効果をこう語る。
「チームがガラッと変わったと思います。環境面も充実しましたし、選手が言い訳できない状況になり、プレーに集中できるようになりました。プロ意識がより一層高くなったとも思います」
 今シーズン、怪我の影響もあり、出遅れた村上は、控えに回ることが多くなった。42試合のリーグ戦で、出場機会が訪れたのは6試合。ベンチ外となる試合が続くこともあった。8月下旬に話を聞いた時も、プロである以上、試合に出たい気持ちはあるものの、「試合に出ても出なくてもやれることはあります。雰囲気づくりは大切だと思いますし、ベテランである意味やキャプテンという自分の立場を理解しながら行動しています」と語っていた。
 
 シーズンを終え、昨季加入以来務めているキャプテンの任務について振り返ってもらうと、「キャプテンとしては特に何もやってないんですよね」と笑った。「僕も含めたベテラン6人がチームの精神的柱になっていたと思います。ゲームでは高杉さんと前田が引っ張ってくれました。養父と福田と僕と古部が、メンバー外の選手のメンタルケアを心掛けました」
 
 2種登録選手を含め、長崎には34名の選手がいる。その中から、ベンチ入りの18名、先発の11名が決まる。
「外れる選手は必ずいるので、その選手たちがチームのベクトルから外れた矢印にならないように修正できたことが大きいかと思います。その結果、外れた選手がモチベーションを落とすことなく練習に励み、質の高い練習ができた。だからこそ、トップが試合で良いパフォーマンスをしてくれました。チーム内での競争や緊張感、すべてが良い環境となって、昇格という結果につながったと思います。僕は何もやってないんです。チームメイトに恵まれました。仲間に感謝しかないですね」
 今シーズン、V・ファーレン長崎は8月の3試合限定で3rdユニホームを着用した。折鶴や平和祈念像をモチーフにした平和祈念ユニホームで、被爆70年となった2015年より続く夏限定のスペシャルユニホームである。昨シーズンには、この平和ユニホームとサポーターらが作った千羽鶴を原爆資料館に寄贈した村上だが、今年初めてアウェーで着用したことについて、「1万3000人を超える観衆が集まったレベスタで着られたので、長崎だけでなく福岡の方々にも平和について考えていただける良い機会になったと思います」と話す。
 
 長崎が平和を発信する意味合いについては、ホーム最終戦のJ1昇格セレモニーで、郄田明社長が、広島と長崎が被爆地であることに触れ、「ナガサキの地から、V・ファーレンを通して、世界平和を伝えていく役割をこのチームに持っていこうではありませんか」とサポーターに語りかけている。
 
 2015年より、平和祈念ユニホームを長崎原爆資料館に寄贈。今年のユニホームも資料館入り口に飾ってあった。
 
 長崎にゆかりのあるポルトガル語で、VREDE(平和)という意味をチーム名に持つV・ファーレン長崎の可能性について、村上も同調する。
「長崎は3年前から平和祈念ユニホームを着用しています。J1ではより多くの方々に見てもらえる可能性がありますし、将来ACLなどの国際大会に出場することで全世界の方々に見てもらえるかもしれません。そうなれば日本だけではなく世界で被爆地や核エネルギーについて考える貴重な機会になると思います。そういったこともできるチームになるんじゃないかと思います」
 来シーズンも自身が長崎でプレーするかは分からないとしながらも、「J1での夢は優勝ですね。残留はもちろんですが、目標は高ければ高い方が良いと思います。残留が目標だと、そこで満足して上を目指せなくなる可能性があるので。チームとしても選手としても新しいチャレンジになるので、何事にもチャレンジ精神を持って励みたい。僕たちはチャレンジャー。挑戦なくして成功はないと思います」と話した。
 
 今シーズン、ホームゲームの平均観客数は約5000人だったが、J1昇格を決めたホーム最終戦は、実に2万2000人を超える大観衆が詰めかけた。来シーズンに向け、ファンの心を掴み続けるためには、長崎らしさが重要になると村上は語る。
「やはり、毎回多くの方に来ていただくためには、結果が大事だと思います。勝てば増えると思いますし、負けが続けば減ると思います。ただ、負けた時でも、長崎らしいアグレッシブなサッカーを体現できていれば、サポーターの方々の心は僕たちとともにあると思います。だから、僕たちはJ1でも自分たちらしい、最後まで諦めないひたむきなサッカーをしたい。チームや選手にとって、何もかもが新しいチャレンジになります。全員でチャレンジを続けていきたいです」
 
取材・文●森本茂樹