「コバルトを使わない」EVの研究も進められている(撮影:大澤 誠)

電気自動車(EV)の未来は、コバルトという、たった一つの素材が不足することでくじかれてしまうのか。仮にそうだとすれば、地球温暖化に対抗するための強力な武器を私たちは失うことになる。電力部門を除くと、先進国において自動車は温室効果ガスの最大の排出源だからだ。

EVによって、どれだけの二酸化炭素(CO2)が削減可能か見てみよう。全米科学アカデミーによると、日産「リーフ」のCO2排出量はガソリン車の半分、トヨタ「プリウス」と比較しても1割少ない。クリーンエネルギーによる発電の割合が高まっていけば、ガソリン車やハイブリッド車(HV)に対するEVのアドバンテージはさらに大きくなる。

2040年までに新車販売の約5割がEVに

EVの製造コストは予想をはるかに上回る速度で低下し、性能向上も予想をはるかに上回るペースで進んでいる。その結果、市場規模の予測も上方修正が相次いでいる。世界の公道を走るEVは2016年で200万台に達した。各自動車メーカーによると、家庭用電源から充電可能なプラグインHVも加えれば、EVの普及台数は25年までに4000万〜7000万台へと拡大する見通しだ。

米モルガン・スタンレーによれば、EV販売は2040年までにガソリン車を抜き、そのマーケットシェアは2050年までに69%に到達。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスは「2040年までに新車販売の54%、保有台数の33%がEVになる」と予想する。

見通しが上方修正されている背景には、地球温暖化対策が強化されていることもあるが、さらに重要なのは技術発展だ。EVに搭載されるリチウムイオン電池のコスト低減は、従来予想を10年以上も前倒しするペースで進んでいる。

性能向上も著しい。シボレー「ボルト」は1回の充電で385キロメートルの走行が可能だ。2011年発売の初期型日産リーフに乗っていた人はバッテリーがすぐにダメになることに不満を抱いていたが、最新のバッテリーは10万マイル(16万キロメートル)の寿命を達成している。

できすぎた話だとの批判は確かにある。これだけのEVを生産するには現在の採掘量の100倍のコバルトが必要だ。さらに、コバルトは銅やニッケルの副産物として採掘されている。つまり、銅やニッケルの需要が伴わなければ、価格はハネ上がる。しかも、その65%はコンゴ民主共和国で産出されているのだ。資源争奪戦による内戦で600万人もの命が奪われてきた、あのコンゴである。

「コバルトを使わない」EVの研究も

問題を解決するには、新たな供給源を開拓する必要がある。英コバルト・デベロップメント・インスティテュートによれば、100年分の需要を賄えるだけのコバルトが地中に眠っているという。その多くは現在の市況と技術では採算が合わず採掘不能だが、市況が上昇し、採掘技術が進歩すれば、取り出せるコバルトの量は増える。

バッテリーに使用するコバルトの量を減らすことができれば、それも解決策になる。コバルトは以前、リチウムイオン電池に使われる材料の3分の1を占めていたが、最新の日産リーフでは1割まで使用量が低下している。

もう一つの解決策は、コバルトを使用しない高性能バッテリーを開発することだ。たとえば、米テスラはパナソニック(EV用バッテリーで4割の世界シェア)からリチウムイオン電池を調達している。だが、そのテスラは究極的にはコバルトを使用しないバッテリーが必要と考えており、すでに世界中の企業が実験を進めている。

私としては、科学者やエンジニアだけでなく、そうした企業の開発力にも賭けてみたい。ヘッドライトの先には、巨大なビジネスチャンスが見えているのだから。