寒さがいよいよ本格化してきた。この時期になると聞こえてくるのが、肌のかゆみの悲鳴だ。
 東京都調布市に住む50代の小林芳光さん(仮名)もそんな1人。
 「寒さもかなわないけど、体のあちこちがかゆくなるのでたまりません。特に、2、3年前からは、寒くなると靴下のゴムが当たるところや、下着が擦れる部分がひどい」

 一般的に、こうしたかゆみは、乾燥肌による現象とされている。かゆみを伴う乾燥肌とは、いったいどんなものなのか。日本皮膚科学会の皮膚科専門医・木下和江医師に聞いてみた。
 「乾燥肌は、一言で言えば皮膚から水分が蒸発することです。水分がなくなると、刺激に対するかゆみの“闘値”が低くなり、かゆくなってしまう。その要因は、アトピー性皮膚炎などの遺伝的な体質によるものと、加齢や石鹸(化粧品)などの使いすぎによる後天的なものがある。その判断をするためにも、きちんと診断を受けられることが大切です」

 木下氏によると、皮膚は一番外側にある「表皮」(厚さ約0.2ミリで何層もの細胞が重なって構成される)と、「真皮」(主に繊維や細胞で構成される)、そして「皮下組織」(脂肪組織からなる)の三層からできているという。
 表皮は、何層にも積み重なった細胞が、絶えず新陳代謝を繰り返している。その最下層では、新しい細胞がどんどん作られ、古くなった細胞が少しずつ押し上げられ、やがて“アカ”となって、自然に剥がれ落ちていく。
 ただし加齢とともに、このターンのサイクルは遅くなっていき、高齢になるほど角質細胞は剥がれ落ちにくくなり、皮膚が厚くなりやすい状態となる。さらには、キメも粗くなり、保水力が極端に落ちてドライスキンの傾向となって、角質細胞の間に隙間も増え、水分が外に逃げやすくなってしまうのである。
 「同じように、皮脂腺や汗腺の機能も、年齢とともに低下し、皮脂や汗(水分)の分泌量も減っていきます。そうしたことで、脂と水分の分泌バランスが崩れてしまい、皮脂膜は滑らかな膜を作ることができなくなって、皮膚の表面がカサカサの乾燥状態になってしまうのです。すると、皮膚を保護するバリア機能も衰え、外界からの刺激を受けやすくなります」(同)

 しかし、こうした皮膚の乾燥からくる、かゆみはつらいもの。あまりのかゆさに耐えきれず、ついつい掻きむしって皮膚に傷をつけ、細菌による感染症を起こすこともあれば、腎不全などの腎機能障害まで起こすこともあるという。
 順天堂大学大学院医学研究科・環境医学研究所所長で、かゆみの最新研究をおこなっている高森健二氏も、自らの著書で、「かゆみは重大病のサイン」と記している。

 かゆみを引き起こす主な原因は、肥満細胞から分泌される「ヒスタミン」という物質だ。これが皮膚中にあるかゆみを感じる神経と結合することでかゆくなる。代表的な病気に、じんましんがあり、見た目も赤く腫れるなどの異常が起こるが、抗ヒスタミン薬を飲めば、ほとんどが治る。
 「しかし、それでも治らない“難治性のかゆみ”の場合もあります。主に皮膚の乾燥によって生じるのですが、保湿剤をいくら塗っても効き目がない場合、我々は“重大病”を疑わなくてはなりません」(高森氏)

 つまり、空気の乾燥が原因ではなく、体内に生じた病気の影響により、皮膚が乾燥して起きるかゆみの方が危ないという。中でも多くみられるのが、前述した腎不全などの腎機能障害だ。
 「慢性腎不全や尿毒症になると、『オピオイド』と呼ばれる体内物質のバランスが崩れ、オピオイド自身が、かゆみを抑えるオピオイドより多くなるのです。人工透析治療でも、強いかゆさが続き、長年、多くの患者が悩まされてきた。しかし近年は、そのかゆみを引き起こすオピオイドを抑える薬が開発され、救われる方もいます」(同)