江戸時代グルメ雑学(10)そうだったの?冬グルメ「ネギマ鍋」の”マ”の意外な意味

写真拡大 (全4枚)

都心も寒さが厳しくなり、だんだん雪が降るようになると熱い鍋物が恋しくなるものです。筆者としては、それで一杯やりたくなるのですが、それは江戸時代も同じでバリエーション豊富な鍋料理が生まれていました。

今回紹介するネギマ鍋もその一つであり、名作落語『ねぎまの殿様』と一緒にお話させていただこうと思います。

そもそもネギマの“マ”はなんの意味?

ネギマと言えば近現代の我が国では『鶏肉とネギを交互に串刺しした焼き鳥』と言うのが常識になっていますが、江戸時代ではネギとマグロを煮た料理の事を指していました。つまり、これこそがネギマ(葱鮪)鍋なのですが、“マ”の由来とされる語源は様々なのです。

マグロを意味する“マ”と言う説や、『ネギマはネギを食べるものであり、マグロはその合間に食べる』ので“間=マ”とする解釈、そして焼き鳥のようにネギとマグロを刺して煮たことに由来するなど、諸説あります。いずれにせよ、魚のマグロと野菜のネギを一緒に料理するのに変わりはなく、旬の食材を取り合わせていることからネギマは冬の季語ともされているのです。

殿様も感激した美味・ネギマ鍋…でも、本当はあまり良いものではなかった?

落語『ねぎまの殿様』は雪見をしようとお忍びで出かけた殿様が、小鍋仕立ての料理を扱う煮売り屋で休憩した際に熱々のネギマ鍋を食して感激し、それが原因でドタバタが起こるコミカルな作品です。作中では、家老(もしくは爺やさん)の三太夫が煮売り屋に入ろうとする殿様を見て困る場面があります。

現代人の視点から見ると、『頑固なご老人が買い食いを見咎めているだけ』と思いがちですが、実はそうでは無かったのです。これらの煮売り屋は安価な料理を供給する存在ではありましたが、利用する客層が奉公人や農民、職人などお財布事情が厳しい労働者が中心で、上級の武士など高貴な人は行くべきではない店とされていました。

また、ネギマ鍋に使われる食材であるマグロは下魚だったのも理由の一つです。それも、ヅケに出来る赤身と違って醤油をはじいてしまい、保存しにくいのを理由に捨て値で扱われたトロ(現代ではすごくゼイタク!)や、赤身より味が落ちる血合いの部分で作ったものだったのです。

上品とは言えないお店で、それもマグロの脂身や血合いを乱暴にぶち込んだ熱々の濃い味付けの鍋を食べる…これでは、三太夫さんが殿様の振る舞いに戦々恐々するのも無理がありませんね。

今でも食べられるし、手作りしても楽しめるネギマ鍋!

落語『ねぎまの殿様』では、色んな意味で三太夫や料理番を悩ませてしまったネギマ鍋ですが、現代では料理店で食べられる、上品な料理として市民権を獲得しています。トロ、そしてマグロ自体が高級食材になったため、かつてのように安価ではありませんが、リーズナブルな価格で食べられるお店も少なくありません。

また、ネギとマグロ(血合いは安く買えます)さえあれば作ることも出来るので、手作りするのも楽しいものです。筆者も子供時代に落語の本を読んで興味を持ち、鉄砲仕掛けの白いネギやマグロの血合い、ネギの葉を入れた“三毛のニャア”を家で作った思い出があります。

料理をメインに紹介しましたが、落語の中で早口な店員の口調でネギマを『ニャア』と聞き違える殿様や、料理番がこれまた勘違いして赤身も青ネギも入れない鼠色の『チュウ』をこしらえるなど、見どころも数え切れません。興味のある方はぜひ、落語をご鑑賞されるのをおススメします。