(写真)会見する(右から)小原さん、川岸弁護士、全川崎地域労組の大貫晴男委員長=24日、厚労省内

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 住宅メーカー一条工務店(本社・東京都江東区)が営業職の従業員に対して、「事業場外みなし労働時間制」を悪用してサービス残業(不払い残業)をさせていた事件は、横浜地裁で労働審判を申し立てた女性に会社が残業代相当の80万円を支払うことで調停成立しました。女性とその相談を受けていた全川崎地域労働組合は24日、川崎北労働基準監督署に対し、一条工務店の違法な「みなし制度」について是正指導するよう申し入れました。

 同社は、戸建て住宅販売戸数が業界2位だとアピールする大手メーカーです。

 同社武蔵小杉展示場(川崎市)で営業職をしていた小原徳孝子(ともこ)さん(48)が2015年1月〜16年5月の未払い分を請求し、9月22日に調停が成立しました。

 申立書などによると、始業時間は午前9時半、終業時間は午後6時半。実態は午後9時〜10時まで仕事が続き、住宅設計の打ち合わせがあるときなどは深夜1時をまわることもありました。

 残業代は、営業手当2万4500円が定額で支払われるだけで、時間通りに支払われませんでした。小原さんはさらにノルマ不達成を理由に2015年2月以降、営業手当を4500円に減額され、残業代の代償にもなりませんでした。

 労働基準法38条の2では、営業職など事業所の外で働き、労働時間を算定するのが難しい場合は例外的に、あらかじめ取り決めた時間を働いたことにする「みなし制度」が適用できます。

 しかし、一条工務店の場合、外出先から直接帰宅することがペナルティー付きで原則禁止となっており、いったん事業所に戻ることがほとんどでした。労働審判で小原さんは、コンピューター入力時刻などでも労働時間を把握できたと主張しました。

 厚生労働省で会見した川岸卓哉弁護士は、「携帯電話など情報通信が発達し、労働時間は十分把握できる」と指摘。労働時間の算定可能な場合は、「みなし制度」が適用されないとする判例があることを紹介しました。

 小原さんは、会社に残業代を請求したところ、職場で孤立させられ、体調を崩して休職。調停成立後に退職しました。「残された従業員が残業代をもらって、健康的に働けるよう願っています」と労基署に是正指導を求めた思いを語りました。

 安倍政権は、労働時間規制を適用除外にする「残業代ゼロ制度」や、みなし制度のひとつ「裁量労働制」の営業への拡大を狙っています。川岸弁護士は、「現状でも、労働行政は、要件を満たさない『みなし制度』を監督しきれていない。例外規定が拡大すれば、現場でいかようにも使われてしまう」と批判しました。