ネット上の「大炎上」を止めるための秘策

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■ネットは刻々と変わる、ゆえに誰もが1年生

何気ない個人の投稿から、従業員の不祥事まで――ネット上の「炎上」に関するタネは尽きない。最近では「ネット炎上保険」を販売する保険会社も出現した。なぜこれほどまでに炎上は起きるのか? そして炎上を防ぐためにはどうすればいいのか?

「“普通の人”がインターネットを使い始めてから約20年。使い方に関して一定の基準も生まれ、法的な整備もされ始めたように思えます。しかし、技術は日進月歩。常に新しいものが生まれ、新しい価値観がつくられています。つまり『私たちは今でもネット1年生』なんです。その感覚を持ち、常識だと思っていることも常に見直さない限り、ネットの過ちは起きてしまいます

こう説くのは『11歳からの正しく怖がるインターネット』の著者でグリーの安心・安全チームマネージャーの小木曽健氏。最近はスマホユーザーが増え、さらに増加傾向にある炎上だが、むやみに恐れる必要はないという。

「炎上を見て『みんな怒っている』と考えるのは早計です。たとえ1000人が『ふざけるな!』と怒りのコメントをしたとしても、なんとも思っていない1万人は、何も行動しないからです。“サイレント・マジョリティ”という言葉もあるように、わざわざ投稿するほど怒っているのはごく一部で、大多数は“どうでもいい”と思っているケースも多いんですよ」

だからといって炎上は好ましくないし、実際に炎上が始まってしまえば、コントロールはかなり難しい。思わぬ不利益を被るケースもあるだろう。

炎上のタネには大きく分けて2つのパターンがあるという。ひとつは明確な法令違反。「線路に入って写真を撮る」など、法的な問題があることを武勇伝のように語れば炎上は必至だ。

「その場合はペナルティを受け、真摯に謝罪するしかありません」

2番目は「意見の相違」。特に思想や政治、宗教、ジェンダーの話題は反感を買いやすく、炎上しやすいという。「身近なところでは、子育てに関する発言も反感を買いやすいですね」

確かに「完全母乳がいい」などとSNSで発言し、炎上した例は多い。

「対面なら、思っていることがあっても、場や相手の心情を考えて発言します。たとえばパーティーなど初対面の人が多い場で、いきなり子育て論なんて発言しませんよね。ネットでも同様です。本来、ネットに書き込んでも大丈夫な内容って、こうした大人の社交場で話せるレベルのものなんです」

ネットへの投稿はたいてい自分独りでおこなうもの。このことも“炎上発言”を助長させる原因だという。

「周りに人が大勢いようが、画面に向き合っているのは自分だけ。独りの時間って、自分の本性、素の部分が出やすいんです。SNSは普段より自分のキャラクターが露見しやすい場所だと肝に銘じておいたほうがいいですね。私はよく講演会で言うのですが、炎上発言を防止するために、投稿する前に『玄関に貼れる内容かどうか』を考えてみるといい。玄関に『○○は死ねばいい』なんて貼らないですよね。玄関に貼れない内容なら書き込まない。これだけで炎上発言防止になります」

では、うっかり火種となる発言をし、炎上してしまった場合はどうするか。

「基本は“消さないこと”です。TwitterやFacebookなどで、つい本音を言って炎上してしまった場合、多くの人はその発言を消そうとします。しかし、ネットに書き込んだ以上、なかったことにするのは至難のワザ。複数の場所に転送されたら追うのは不可能ですから。また、発言を消すことで『逃げた』と思われたら、ますます攻撃されてしまいます。ですから炎上しても発言を消さず、そのまま残しておくのが鉄則です。そのうえで、自分の発言が誰かを不快にしたことに対し、謝罪をします」

さらに、炎上を止めるための秘策がある。それは「感謝」だ。

「激しく罵られても、“お陰で勉強できた。ありがとう”と感謝することで、それ以上炎上する可能性が下がります。これはクレーム対応と同じ考え方で、たとえば、クレームへの対処内容が、クレーマーから見た“予想の範囲内”の場合、当人はさほど満足しません。対処としては60点でしょう。炎上での“すみません”も、対処としては予想の範囲内。だからもっと攻撃したくなる。しかし、“ありがとう”は想定外ですから、それ以上、言われにくいんです」

過激な意見でなくとも、他人を不快にさせる投稿はほかにもある。たとえば、会社に所属しているにもかかわらず、組織の見解と違うことを発言するのは避けるべき。

「個人的なSNS上の発言でも、組織に属している以上、組織としての発言と受け止められます」

勤務先を記載していなくとも同様だ。露見すれば社内の立場も悪くなる。

■何気ない行動が、犯罪を招くことにも

最近よく耳にするのが、SNSから情報を得た「空き巣被害」だ。「これから海外出張に行きます」なんて書き込むのは、「あの家はしばらく留守だ」と教えているようなもの。同じように、許可も得ず子供の集合写真をアップするのもNG。子供のプライバシーに関する許容度は親によって違うからだ。

怖いのは知らず知らずに個人情報をもらしてしまうこと。たとえば、個人宅に遊びに行ったとき、窓をバックに撮った写真をアップすれば、窓から見える特徴的な風景から「どんな地域の何階に住んでいるか」が特定されてしまうこともある。

こういった知らず知らずのKYを防ぐためには、投稿前に時間をおき、「本当に大丈夫か」と相手を気遣い、冷静に考えることが重要だという。「投稿前のいったん停止」。これがネットの中でKYにならない秘策だ。

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グリー 安心・安全チームマネージャー 小木曽 健
1973年生まれ。複数のITベンチャーに勤務した後、グリー入社。カスタマーサポート部門の責任者を経て現職。講演多数。近刊は『大人を黙らせるインターネットの歩き方』(ちくまプリマー新書)
 

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(田中 裕 写真=PIXTA)