ドラマ「最後の同窓会」主演の市村正親にインタビュー

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還暦を迎えた男女の大人の青春を描いたロードムービー「スペシャルドラマ 最後の同窓会」(テレビ朝日系)が11月26日(日)朝10時から放送される。ストーリーの主人公で、幼い頃は仲間のリーダー格だった高槻功役を演じる市村正親にインタビューを敢行。作品の見どころの他、共演者の印象、さらに現場の様子など話を聞いた。

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――撮影時の感想や、現場の雰囲気はいかがでしたか?

まず、台本を読んだときに、(高槻は)定年を迎えたさえない男でね、それが同窓会に行って、友達の一人ががんで、翌朝には同級生の一人が心臓病で亡くなって。さらに、同級生の一人が訳ありで強盗して、お金持って来ちゃって。そこにマドンナが来るという…大人版の映画「スタンド・バイ・ミー」みたいな雰囲気だなと思いました。役をもらったときにワクワクしました。

配役を見たときも、でんでんさん、角野(卓造)さん、片岡鶴(太郎)ちゃん、松坂慶子さん。もう最高な同窓会になるなって思いました。あんなに引っ付き合っているシーンが多い車の中で最高におかしかったのが、でんでんさんが死んでて、松坂さんがギャーギャー言って声が枯れちゃったって、あの辺なんか本当に面白かった(笑)。大の大人が子供に帰れる作品かな。

――作品を拝見して、高槻が一見クセのあるような人物かなと感じましたがいかがでしたか?

子供のときにリーダー格の人で、世の中に出て行ったらそうでもないって人って結構いるんですよね。みんな子供のときは、「俺は将来、すごい人間になるぞ」って思っていたのが、約90%いや、95%くらいは意外とそうじゃないなって思う。なかなかみんな自分の思う通りにいかないじゃないですか。だから、サラリーマンの代表のような気もするんだよね。

むしろ、鶴(太郎)ちゃんの役のように強盗しちゃう、ああいうような人はなかなかいないし。でも、松坂さんのような息子家族から冷たく扱われてしまうこともあるだろうなと思うし。あと、でんでんさんもあるだろうね。若い頃になんかやらかしちゃって、娘にずっと無視されてる。でも、孫には「じいじい、じいじい」って言われているっていうね。そして、角野さんは、膵臓(すいぞう)がんなんだよね。

だから、高槻が一番、サラリーマンの代表っぽいかなあと。せりふの中でもあるけど、普通に大学卒業して、普通に結婚して、普通に子供ができて、普通に会社に入って、普通に定年がきて、普通に子供が大きくなってって。

でも考えたら、普通であって、特にマイナス面はない、普通に幸せな人生なんじゃないかなって気はするんだけども、彼の性格からすると、何かあった方がいい。なかなか複雑で面白い話だなと思います。いい話だしね。

――脚本が岡田惠和さんということで、最近では「ひよっこ」でも話題になっていましたね?

俺はとにかく、普段は舞台の市村さんって華々しくて、格好良くって、そういうのが多いから、これくらいだらしなく、情けない、みじめな、みすぼらしい感じを演じてほしかったみたいですね。

――印象に残っているせりふはありますか?

「普通に会社に入って、普通に結婚して、普通に子供ができて」っていう。あのせりふはなかなかいいせりふだなって思います。なかなか舞台ではあり得ないよね(笑)。舞台じゃもっとすごいこと言ってるからね。

――“普通”だからこそ演じるのが難しかったということはないですか?

そう。僕自身っていうのは、普通っていうのが一番難しいかもしれないね。でも考えたら、うちにいるときは普通だから。普通に「おはよう」って起きて、普通にお仏壇に手を合わせて、神様に榊もやって、普通にテレビ見て、普通にみそ汁飲んで、普通に自転車に乗って駅まで行って、地下鉄に乗って、稽古場に入って、そこから初めて普通じゃなくなるみたいなね。だから、普通に立ち食いそばも食べます(笑)。

――同年代の方5人で撮影するって、なかなかないと思うんですけど、他の現場との違いは感じられましたか?

どんな薬飲んでるとか、尿酸値は高いとか、コレステロール値はとか、そういう話は多かったよね(笑)。で、鶴(太郎)ちゃんが一番健康的なんだよ。仕事やる6時間前に起きて、ヨガをやってるからね。「それはまねできないな」って話とか(笑)。

でんでんさんは、卓球が趣味なんだよね。昔、卓球をやってたからね。だから仕事が終わると、「これから卓球に行くんだ」とか言ってね。サークルがあるらしいのね。やっぱり、それぞれの好きなものの話になると目がキラッキラしてます。

角野さんは角野さんで、二人でお互い半月板の手術をした者同士だから、いたわり合いながら(笑)。

松坂さんはね、われわれのマドンナだからね。はた目でチラッと見ちゃ、「あ、きれいだな」と思いながら(笑)。いつも車の中に5人で押し込まれて、楽しかったですよ。

――今回のお話で60歳で定年を迎えて、退職後の人生を暮らす高槻ですが、市村さん自身、俳優以外にやってみたいことはありますか?

この性格だからできるかできないか分かんないけども、絵を描きたいね。絵は季節がいいと今なんか街を歩いていると、うちの近くなんかケヤキが結構いい紅葉してきてるからね。紅葉と、紅葉しないものと、いろんなものが入り混じって風情がある。でっかい絵を描くのは大変だからさ、小さいキャンバスにちまちま描いたら楽しいだろうなって気がします。

――風景画ですね?

風景画を見るのも好きだから。絵が好きで、花が好きだから。今描きたいのは、ちまちま景色を描くのとか、あとは、かれんな花が6本くらい刺さってる、ちょっと小粋な花瓶をちまちま、ちまちま描くのが好きだなって。

――細かい作業がお好きなんですね。結構大胆な方もお似合いだと思います。

大きく描くと絵の具いっぱい使うし、大胆だと大変じゃない。描き終わった後が大変だし、飾るのにも。でも、小さいものだったら、ちょっとトイレとかに飾れる。油絵だからね、額に入れてあげたいんだよ。そんなのがやりたいかな。

――高槻は普通ってことに不満を抱いていたと思うんですけど、市村さんは普通かそうじゃない人生だったらどちらがいいですか?

僕はね、舞台の上で激しい人生を送っているから、普段は普通がいい。やっぱり舞台の上で激しい人生を送っているからこそ、それのケアに普段の土日は使いたい(笑)。だから、こういう普通の役をたまにやるとなんかホッとしますね。

――撮影中の印象的なエピソードがあれば教えてください。

まあ、よく晴れました。晴れ男がいっぱいいるんだろうね。降りそうだったこともあったけど、雨には当たらなかったね。あとは、狭い車の中であんなに密着して出演者が5人いて、芝居をずっとしているっていうのも、なかなか少ないですよね。

――狭い車内で演技するって結構大変なんじゃないですか?

でも、いろんな角度から監督さんが撮ってくれるから。まあ、待ってる間ずっと引っ付いているわけだから大変(笑)。後ろ三人でしょ。前二人でしょ。あんなにずっと密着しているっていうのもね、なかなかないよね。

――同窓会のシーンはいかがでしたか?

同窓会のシーン、みんなでフォークソングでダンスを踊ったりね。俺が踊ろうと思ったら、急に音やんじゃったりして (笑)。みんなマドンナ目当てで来てるからね。「いいよ、いいよ」って言いながら、みんなすごいキレがいいな!っていう(笑)。

普段、舞台俳優としての僕を知っている人が見ると、所々においしいところはあるけども、「市村さん、今回は本当に普通だなあ」みたいな。でも、最後の最後の方まで見ると、「おまえらそれでいいと思ってるのか!」とか、「もっと笑え。笑顔が似合うんだから」とかいろいろ言ってて。

――まだ60歳って私には想像できないですが、60歳になって懐かしい仲間と再会できて、昔の記憶がよみがえって、ワチャワチャできるのがすごい楽しそうだなと思いました。

そうね。だから、若い人にはああいうのを見て、やっぱり今の青春を大事にしなさいって言いたい。

――若い頃の青春があったからこそですか?

そうそう。僕なんかでいえば、西村晃さんの付き人の頃の仲間がいるんですよ。もう役者やってないけれど。人のお嫁さんになっちゃったり、違う稼業にいっちゃったりしてるけど、付き人の頃の仲間ってのは、非常に気になるもんでね。モリシゲ(森繁久彌)さんのところにいたシンコちゃんだとか、ノリエさんのところにいた彼だとか、ヒロスエさんのところにいた彼だとか。

ただ、僕はそのうち付き人を卒業してここまでこられたからいいけども、意外とね、付き人をずっとやって、もしかしたら下がっていっちゃってる人もいるから、俺は会いたいなと思うけども、向こうは会いたくないなと思うかもしれない。でもやっぱり自分としては付き人の頃、みんなで楽屋で、先生が帰った後ちょっと酒盛りしたりとか、そういうのが楽しい思い出で残ってるな。

人生、みんなうまくいってるわけじゃないですからね。その辺が難しいっていうか、切ないっていうか、謙虚に生きなくちゃいけないかなと思ったりもするけども。だから、普段は、みんな俺がね、素晴らしい車に乗って、毎日毎日肉食ったりしてるんだろうなって思うかもしれないけど、とんでもないよ。立ち食いそば大好きだし。

みんな想像で(芸能人を)見るからね。だからよく、テレビのバラエティーなんかに出ると、「別荘二つくらい持ってそうですよね」とか、「普段はおとなしそう」とか、いろんなことを言っているのを聞いてると、面白いなあと思います。

――反論したくなることはありますか?

反論しないよ。「ああ、みんなそういうふうに見てるんだな」とか、「ああ、当たってるな」とか、「全然、当たってないな」とか思うね。

――市村さんの学生時代には、松坂さんみたいなマドンナ的存在はいましたか?

いたよ。マドンナというか、お付き合いしていた人がいる。高校卒業して、彼女は銀行にお勤めして、銀行の人と知り合いになって、結婚してきたのが、うちから100m離れていないくらいの距離に嫁いできた。近所だから時々同窓会なんかで会うと、「あの時は」なんて話はするよ。

――同窓会に参加されたことあるんですね?

あるよ。踊りながら、「ああ、あの頃は青春だったね」とかって。

――市村さん、踊られるんですか?

踊りといったって、こういうような揺れるやつだよ。チークダンスっぽいんだよ。

――「私が市村正親さんと付き合ってました」っていうはたぶんお相手の方は誇りに思ってらっしゃるんじゃないですか?

世間は知らないけども、同窓会に集まってるクラスの仲間は、彼女と俺が付き合ってたのは知ってるからね。

――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

大の大人がね、子供の頃の、小学校の同窓会で会って、それぞれみんな問題はあるんだけども、問題を抱えながらも、子供の時代に戻ったことによって忘れていたものを呼び起こすみたいな、そんな素敵なドラマです。

おじさんたちが車の中でね、すったもんだする姿を面白がって見てほしい。もしかすると、あなたのお父さんやお母さんもあんな青春があったんだっていうことを、ちょっと思い出してくれたらいいなあ。(ザテレビジョン)