大谷翔平の次は? メジャースカウトが評価した若き侍戦士7人の名前
今月、『アジアプロ野球チャンピオンシップ』が開催され、今年7月に監督に就任した稲葉篤紀率いる新生”侍ジャパン”が3連勝を飾り、初代王者となった。出場資格が24歳以下、もしくは入団3年以内だったため、今年3月に行なわれたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に出場した選手はいなかったが、ネット裏には多くのメジャースカウトが集まっていた。その中で、ひとりのスカウトから匿名を条件に、おもに侍ジャパンのメンバーについて話を聞くことができた。
メジャーでも十分やっていけると太鼓判を押された広島の薮田和樹
まず日本の投手陣から話をしてもらったが、このスカウトによれば今大会で先発した薮田和樹(広島)、今永昇太(DeNA)、田口麗斗(巨人)の3人は、いずれもがメジャーのマウンドに立てるポテンシャルがあるという。なかでも、とりわけ高い評価を与えたのが、今季15勝を挙げた薮田だった。
「薮田は投げるときに腕が打者から見えないし、カットボールや落ちるボールもある。間違いなく(メジャーに)行ける」
今永と田口については、メジャーで先発としては難しいかもしれないが、左投げということもあってワンポイントを含めた中継ぎとして起用すれば面白い存在になるのではと言う。
「かつてメジャーで投げていた高橋尚成のような役割ができるかもしれない。今永はストレートと同じ軌道でスライダーを投げられるので、バッターが手を出しやすい。そのあたりはすごい技術を持っている投手だね」
リリーフ陣では、石崎剛(阪神)に強い関心を寄せていた。
「彼については、高校のときから見ているが、当時はストレートが134キロぐらいしか出ていなかった。それが今では150キロを超えている。同じサイドスローでも又吉克樹(中日)よりも球質がいいと思うよ。もう少し変化球を磨いていけば、面白い投手になる」
石崎に限らず、変則系の投手はアメリカに渡るチャンスが多くなると、スカウトは言う。
「アメリカでは、上から投げ下ろして角度をつける投手が多い。サイドから投げる投手もいることはいるが、少数派。打者にしてみれば、その投げ方の投手はなかなか練習できないので、ミスショットをする確率が高くなってしまうんだ」
一方、野手陣はどうか。今回、スカウトからは3人の名前が挙がったが、最も高評価だったのが上林誠知(ソフトバンク)だ。アメリカでは、ミート力、長打力、走力、守備力、送球能力のすべてを兼ね備えた選手を”5ツールプレーヤー”と表現するが、まさに上林がこれに当たるという。
「まだ粗さはあるが、バットの芯に当たれば果てしなく飛ぶし、身体能力が高い。それに彼は顔がいい。打席でいつも落ち着いた表情をしている。メジャーに行かないといけない選手だね」
次に挙がったのが、源田壮亮(西武)だった。今季、ルーキーながら143試合フル出場を果たし、パ・リーグの新人王に輝いた期待のショートだが、スカウトは源田の守備力を高く評価していた。
「守備範囲が広い。勘もいいし、ポジショニングもいい。なにより打球への反応が素晴らしい。打者がこのあたりに打ってくるだろうというのをわかっている。その部分に関しては、今宮健太(ソフトバンク)よりも優れているんじゃないかな」
ただ、メジャーでプレーするには当然ながら打撃力は必要になる。スカウトは源田のバッティングをどう見たのか。
「パワーがないのは仕方ないが、彼のスピードは魅力だね。外野手の間を抜くような打球を打てるようになれば、もっと可能性が広がる。事実、私の球団の上層部は源田のことをすごく気に入っている。粘り強いバッティングができるし、ファウルで相手投手の球数を増やせるのはいい。ただ、この大会では高めの速い球を空振りしていたのが目についた。まずはそこを改善できるかどうかだね」
そして最後に挙げたのが、近藤健介(日本ハム)だ。今季、近藤は椎間板ヘルニアの手術でシーズンの大半を棒に振ったが、それまでは打率4割をキープするなど、たぐいまれなバットコントロールでヒットを量産していた。
「ミートする技術は、今回の日本のなかでは一番の選手。逆方向にもしっかり打てるし、センスは本当に素晴らしい」
また、このスカウトは技術だけでなく、選手の”中身”も観察していると話す。いくら高い技術を持っていても、日本とはまったく違うメジャーの環境でプレーするには、メンタルの強さや人間性も重要になるというのだ。
「近藤は笑顔を浮かべていることが多く、チームメイトからも好かれるだろう。それに(10月の)飯山裕志の引退試合で、ほとんどの選手が悲しそうな表情を浮かべているなか、彼だけはニコニコしていた。あのキャラクターは貴重だと思うし、すごく興味深かった。おそらくクラブハウスにいても楽しいタイプだろう。彼のメンタリティは問題ないと思うよ」
もちろん、ネット裏のスカウトたちは日本の選手だけでなく韓国や台湾の選手もくまなくチェック。なかでも”台湾の大王”こと王柏融(ワン・ボーロン)には、日本のみならずメジャーのスカウトも熱い視線を送っていた。
王は台湾リーグで2年連続シーズン4割をマークし、今季はリーグ史上初の三冠王を達成したスーパースターだ。スカウトは「まだ判断材料が少ない」と前置きした上で、王についてこう語る。
「雰囲気は岩村明憲(元レイズなど)に似ているね。ミートする技術が素晴らしい。それに外のボールに対する見極めができていて、ボール何個分外れているかまでわかっていると思うよ。ただ、台湾にはしっかりコーナーに投げ込める投手が少ない。アメリカや日本でプレーしたとき、今よりも投手のレベルが上がるのは確実。そのときにどこまで対応できるかだろうね」
また韓国では3番を打つ189センチの左打者・具滋碰(ク・ジャウク)の名前が挙がった。
「彼は、これからも見ていきたい素材。以前も見たことはあったが、今大会で見てさらに好きになった。ファウルの仕方がよく、ほかの選手と違って打席のなかでいろいろと工夫しているのも好印象だね」
はたして、この中からメジャー球団が本気で獲得を目指す選手は出てくるのか。彼らのさらなる成長を期待したい。
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