20代はお嬢様女優として愛された木村佳乃さん。経験を重ね、結婚・出産を経て今、40代。年を取ることを楽しむように、軽やかに生きる、そんな木村さんの魅力の秘密に迫ります。

取材場所に現れた木村佳乃さん。はつらつとした明るい表情には、一気にその場の空気を和らげる、不思議な力が宿っている。

――3年ぶりの舞台に向けて、稽古の真っ最中だそうですね。

木村:そうなんです。劇団「ペンギンプルペイルパイルズ」の主宰者である倉持裕さんが、脚本と演出をされるんですが、細かい動作など、ものすごく緻密に演出がなされていて、すでにとてもおもしろい。一応コメディといわれているんですけれど、倉持さんからは、「コメディとは思わずに演じてください。“笑い”はまったく意識しなくていい」と言われていまして、真面目に、普通のお芝居としてやってます。でも不思議なセリフが多くて、思わずプッと笑っちゃう。倉持さんのお芝居って、「ワッハッハ」という感じではなく、すごく深いところを突いてくる感じなんですね。家に帰ってからふと思い出し、「あれ、おもしろかったな、ムフフ」という感じ。すごく知的な笑いです。でも1時間半程度のお芝居で、まだ脚本が20分くらいしか…って、稽古が始まって間もないので、騒ぐほどのことではないんですが(笑)。

――でも、稽古が始まっているのに脚本が出来上がっていないというのは、一般的には不安な状況ではないのでしょうか…。

木村:全然(笑)。たぶん倉持さんの頭の中には、構成は全部あると思うので、ゆっくり書いていただければ。すでにすごくおもしろいので、本当にまったく心配していません。私個人としては、脚本が上がらないより、シェイクスピアの長台詞が来る方が怖いです(笑)。

――その、ちょっとやそっとのことでは動じない、ドンと構えた感じ。まさに大人の女性ですね。

木村:えぇ〜?! そうですか? 全然私、そんなことないんですよ? 

――昔から木村さんを知るご友人の方々は、木村さんのことを、どんな方だとおっしゃいますか?

木村:……(笑)。あの、「永遠の小学4年生の男子」だと言われます。いたずらばっかりしてるような感じ。あれですよ、人の靴を隠したり、カバンに変なものを入れたり、部屋に誰かが入ってくるのがわかったら隠れてワッと驚かせたり…。そんなことばっかりしてます。で、「またやんの? それ」ってよく言われます。そんな人です(笑)。

――お持ちのスマホが先ほどちょっと目に入ったのですが、かわいらしいキャラクターのシールを貼っていらっしゃいませんでしたか…?

木村:あ、あのシール(笑)。ええ、私が買って、私が貼りました。小学生のときにすごく流行ってたんです。それで、つい貼っちゃった。

――それにしても、優等生的、清楚、そんなイメージがあるので、その感じ、正直驚きです…。

木村:デビューした20代の頃は、なんかそういう役が多かったんですよね。私としては、ものすごく意外だったんですが。役柄の印象って強いんだな、と思ってました。とはいえ、特にそのイメージが窮屈だったというわけではないんですけれども。でも、30歳を越えたくらいから、徐々に役の幅が広がってきた気がします。

――確かに、そのあたりから、いろいろと解き放たれた印象が…。

木村:バラエティとかに出るようになったことですか? フフフ。でも実はバラエティに出させていただくこと、自分ではそんなに深く考えていなくて。楽しそうだな〜、その世界に入りたいな〜、と思ってるだけなんですけどね。

――でも、いわゆる<女優>がバラエティで、いろんなことにチャレンジをするのは、昨今ではかなり異色な気がします。

木村:私の中で、あんまり線引きがないんです。それこそ昔の女優さんって、コントとか、たくさんなさってたじゃないですか。かの有名なドリフターズの『8時だョ!全員集合』の坂を上るコントを、いろんな女優さんがやられていましたし、そういえば森光子さんもコントが本当にお上手だった。演者本人が楽しくて、視聴者の方も喜んでくださるなら、私は全然アリだと思ってるんですけどね。若い頃は、番組の宣伝でバラエティに呼んでいただいたとき、<木村佳乃>としてコメントするべきなのか、役柄に近づけてコメントするべきなのかがわからず、戸惑っているうちに番組が終わることがよくありました。でも30代中頃を越えてから、私が楽しかったらいいのかな、というところに落ち着けるようになった気がします。

きむら・よしの 1976年生まれ、東京都出身。‘96年NHKのドラマで女優デビューし、翌’97年に映画デビュー。代表作に、映画『蝉しぐれ』『告白』、ドラマ『名前をなくした女神』『ひよっこ』など。アニメ映画『プリキュアドリームスターズ!』ではアフレコにも挑戦。NHK 特集ドラマ『どこにもない国』(’18年3月24日・31日放送予定)に出演。

11月28日から12月11日まで、日比谷・シアタークリエで上演される舞台『誰か席に着いて』に出演。崇高な芸術、その未来について語ろうと集まった4人の男女の頭の中は、実はプライド、嫉妬、嘘、金などでいっぱいだった?! 作・演出は今演劇界で最も注目されている倉持裕。共演に田辺誠一、片桐仁、倉科カナら。

※『anan』2017年11月29日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・佐伯敦子 ヘア&メイク・千葉友子