お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指す【脱貧困診断】。今回の相談は、坂村あかねさん(仮名・フリーランス・32歳)からの質問です。

「今年の夏、制作会社の正社員からフリーランスのライターに転身しました。取引先が複数あり、経費を引くと収入は50万円くらいじゃないかと思います。確定申告をしないとダメですか?

また、源泉徴収税を引いた額を振り込んでくる会社と、そうでない会社があります。確定申告すると、すでに源泉徴収税を引かれたものに、さらに税金を払わなければいけないことになる気がして……。計算がちょっとめんどうくさそうだし、確定申告をやらないで済むならやりたくないのですが……」

「自分らしく働く」ため、会社員からフリーランスになる人も増えています。フリーランスになると、今まで会社がしてくれていた税金の計算なども、自分でしなければいけなくなります。早速、森井じゅんさんに聞いてみましょう。

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事務処理も自分でちゃんとする。それがフリーランスになるということ。

相談者さんは会社員からフリーランスのライターに転身されたとのこと。新しい人生のスタートですね。おめでとうございます。

フリーランスという業種は、一般企業に勤める会社員の方にはなじみ少ないと思います。また、ご本人も始めたばかりということで、理解できていない部分もあるかもしれません。まず、マネーの立場から「フリーランスとは何か」を整理しておきましょう。

会社員とフリーランスとでは所得区分が違う

会社員は、会社との雇用契約のもと仕事をします。一方でフリーランスは雇用契約ではありません。一般的には業務委託契約が結ばれ、発注された業務ごとに仕事を行ない、その業務に対する報酬を受け取ります。

つまり、フリーランスになるということは会社に雇用されるのではなく、自分で仕事を始める、ということです。

また、受け取る報酬は給与所得ではありません。

本業でフリーランスとしての仕事をしているのであれば、その報酬は基本的には「事業所得」にあたります。

会社員からフリーランスへ。確定申告は絶対必要?

会社員からフリーランスになったことで大きく異なるのは、確定申告が必要になることです。

年末調整の回でもお話しましたが、年末調整とは確定申告の簡便バージョンです。

会社員時代は会社が年末調整をしてくれて、多く払い過ぎた税金は12月のお給料で調整してくれます。多くの会社員の方は、年末調整で税金計算は完結します。「副収入がある」「医療費控除などの還付を受けたい」などの事情がない限り、確定申告について考える必要はありません。

一方、フリーランスで仕事をして受け取った報酬は、給与所得ではありません。

そのため、フリーランスの報酬は年末調整をしてもらうことはできず、自分自身で税金計算をして申告する必要があります。フリーランスだけの収入であれば、基本的に収入から経費を引いた金額が38万円を超える場合には、必ず確定申告をしなくてはなりません。

相談者さんのケースでは、夏までは給与所得があり、その後フリーランスの所得が50万円程度あるとのことですので、確定申告を行なう必要があります。

フリーランスができる「青色申告」とは?

ところで、相談者さんはフリーランスに転身する際、税務署に届出をしましたか?

届出というのは、税務署に「これから自分で仕事を始めます」という宣言と「きちんと確定申告をします」という申請です。

具体的には、「個人事業の開業・廃業等届出書」と「所得税の青色申告承認申請書」という2つの書類のこと。

これらを税務署に提出することで、「青色申告」による確定申告ができます。

青色申告には様々なメリットがありますが、いちばん大きいのは、最大65万円の特別控除です。ざっくり言うと、税金計算上、今年の収入から最大65万円を控除できるのです。これは、大きな節税効果があります。

しかし、青色申告をするには、届出のリミットがあります。

相談者さんは、会社を辞めたのが夏ということですが、フリーランスとして活動をされてからどれくらい経ちますか?フリーランスとして仕事を始めてから2か月以内であれば、青色申告の申請を行なえば今年の分から青色申告ができます。

もし、もっと時間が経っていたら、今年は通常の確定申告をします。でも、来年の3月15日までに手続きを行なえば、来年分から青色申告ができます。

源泉徴収の処理の方法は?

相談者さんの質問の中に、源泉徴収の質問がありました。フリーランスが受け取る報酬のすべてが源泉徴収の対象というわけではありません。

源泉徴収の対象となる報酬は、相談者さんのようなライターさんの場合、原稿の執筆料などでしょう。

源泉徴収の対象になるかどうかについては、とても細かい決まりがあり、それに従って源泉徴収が行なわれています。

相談者さんも源泉税が引かれているものがあるようですが、それは会社やクライアントが預かり、税務署に納めてくれています。つまり、源泉徴収により税金の前払いをしているのです。

確定申告は最終的な税金計算です。1年間の収入などをもとに、いくら税金を納めるべきかを計算して申告するのです。

1年間の所得税の金額が計算できたら、前払いした税金である源泉徴収額を比較し、精算します。

たとえば、計算の結果、3万円の税額になったとします。そして源泉徴収額が2万円であれば、残り1万円を納付します。一方、もし源泉徴収額が4万円であれば、1万円を還付として受け取ることができるのです。

源泉徴収額により、確定申告で納付する金額、還付される金額が変わってきます。計算をしてくれる会社やクライアント任せにせず、きちんと把握しておきましょう。

確定申告しないとペナルティーがあるの?

基本的に、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行ない、所得税を納付します。

この期限内に確定申告ができなかった場合には、延滞税がかかるほか無申告加算税が課されることもあります。自主的に申告を行なわない場合や悪質な場合には重加算税の措置があり、ペナルティーはさらに大きくなります。

もし確定申告の期限に間に合わなかったり、忘れたりしてしまっても、気が付いたらできるだけ早く申告するようにしましょう。

フリーランスになったら、確定申告はきちんとしましょう。



■賢人のまとめ
基本的に収入から経費を引いた金額が38万円を超える場合には、必ず確定申告をしなくてはなりません。期限内に確定申告ができなかった場合には延滞税がかかるほか、無申告加算税が課されることもあります。期限に間に合わなかったり、忘れたりしてしまっても、気が付いたら、できるだけ早く申告するようにしましょう。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。