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●利用対象者を拡大

KDDIは11月21日、同社のホームIoTサービス「au HOME」を拡充した。スマートスピーカーの市場投入により、一気に身近になったホームIoTだが、キャリアがサービスを提供する狙いはどこにあるのだろうか。

○サービスを拡充し利用対象者を拡大

「au HOME」はauが7月に提供を開始した、月額490円のホームIoTサービスだ。auが販売するホームIoT機器をau HOMEアプリで一括管理・制御できるほか、セコムの駆けつけサービスに無料で加入できるといった特徴がある。

au HOME対応機器は900MHz帯の電波を使う無線通信規格「Z-Wave」を使って接続する。これまでZ-Wave方式の無線通信アダプターはUSBドングル形式で提供されていたのだが、このドングルに対応しているのがauひかり用のルーターだけで、他社製のルーターには非対応だった。このため、これまでは「auひかり」契約者にのみ提供されてきたのだが、今回一般的なWi-Fiルーター用の「無線通信アダプターA」や、LTEフォトストレージデバイス「Qua Station」でも利用できるようになり、auひかりユーザー以外にも門戸が開かれたかたちだ。

●KDDIの狙いはデータにあらず?

今回の発表では、前述のように「auひかり」以外でも利用できるようにしたほか、Googleの「Google Home」との連携も実現した。これにより、Google Homeと接続できるホームIoT機器も制御できるようになるほか、音声による制御が可能になっている。

また、来年春をめどに、「au HOME」アプリ内で家電の取扱説明書を検索・閲覧できるサービスが実装される予定。これは株式会社トライグルの「トリセツ」と連携したもので、消耗品をオンラインで購入できるようにもするという。これはau HOME非対応の機器の取説も利用できるとのことなので、実現すれば確かに便利さを感じられそうだ。

○キャリアがホームIoTに注力する理由は

スマートスピーカーの市場投入で一気に加熱し始めたホームIoT市場だが、これまでビジネス向けのIoTに注力してきていたキャリアも、ここにきてホームIoTへの動きを活性化している。

NTTドコモは、ホームIoT向けにIoT機器同士を一元管理・操作できる「デバイスWeb API」技術を開発し、実証実験「未来の家プロジェクト」を横浜市で実施中だ。またソフトバンクは2016年3月より「Softbank Innovation Program」の結果として、スマートホーム領域でリノべる、KAMARQ HOLDINGS、アッサアフロイジャパンらと共同でテストマーケティングを実施している。

とはいえ両社とも、まだ本格的な活動とは言い難い。こと家庭向けに関していえば、KDDIはこれら2社と比べ、一歩か二歩先んじている状況だ。それではなぜ、キャリアがホームIoT市場を狙うのだろうか。

その理由として考えられるのが、ひとつが家庭内での個人の行動パターンなどのビッグデータ取得、もうひとつがユーザーの契約長期化効果だ。特にセキュリティ関連は自宅の安全と紐づけられるので、データを入手するにせよ、契約を長引かせるにせよ、大きく役立ってくれる。

ただし現状、au HOME対応製品はある程度の行動データを入手できるものの、そこに接続されたGoogle Homeやその先のデータまでは入手できない。こうしたデータはGoogleにとっても宝の山であり、簡単に他社に渡すつもりはないだろう。ということは、au HOMEはその対応機器が大きく増えるのでない限り、ARPUを増やしユーザーの解約率を減らすための施策の一つというのが主たる目的だと言えるだろう。

●料金の妥当性を考える

○月額490円は妥当なのか?

au HOMEは月額490円のサービスだが、たとえばGoogle Homeが提供する音声アシスタントや対応機器との連動は、別にau HOMEに加入していなくても誰でも無料で利用できる部分だ。iOSであればHomeKitに対応していれば、「ホーム」アプリで対応するIoT機器を一元管理できるし、音声アシスタント「Siri」や、ジオフェンスなどの条件を使ったコントロールも可能だ。多少ITリテラシーの高いユーザーであれば、「わざわざ490円も払わなくてもいいよ」と思うだろう。

実際のところ、au自身が「いつもの暮らし、ちょっと便利に」というキャッチコピーを付けているように、au HOME対応機器だけでできることはかなり限られている。たとえば現状、外から鍵の開閉はチェックできても、鍵を閉めるのは家に戻って自分でロックしなければならないのだ(Google Homeと対応機器を使えば可能)。これでは「ちょっと便利」というには少々厳しい。

ユーザーから見た場合、au HOMEの価値は「対応機器を一箇所で、遠隔地からでも統合管理できる」「セコムと連動したセキュリティ機能を利用できること」「取扱説明書をアプリ上で確認できる」に集約されるだろう。リテラシーの低いユーザーにとっては訪問設置サポートなども心強いサービスではあるだろう。このうち対応機器の管理と取説の確認はau HOMEだけの特権ではないので、ほとんどセコムの契約料+サポート料金に等しい。

個人的に提言したいのは、au HOME対応製品をもっと増やすことと、それらを販売ではなくリース契約にして、もっと大きなパッケージとして提供することだ。ホームIoT製品は市場が立ち上がったばかりなので、次々に新製品が登場してくるだろうし、常時作動しているという特性上、故障なども心配だ。リース契約として故障品は無償または安価に交換でき、新製品への交換も可能、セキュリティ系の機器は1台だけでなく数台をパックにできる、といった形で、月額1980円くらいのプランを用意できれば、料金的にもお得感が出るし、使ってみたいという人は増えるのではないだろうか。

ホームIoT市場は、AIやロボットといった要素も入り混じり、これから本格的な競争が始まる激戦区だ。インターネットへの回線を握っているキャリアがそこで一定の立ち位置を得ること自体は難しいことではないし、ライバルに先んじて市場に参入したKDDIはかなり有利だと思われるが、同時に厳しいユーザーの目に叶うためには、囲い込みをするならするで、納得してもらえるようなお得さを打ち出していかねば、すぐに見限られてしまうだろう。GoogleやAmazonといった巨人たちに飲み込まれてしまわないよう、日本のユーザーに響く施策を打ち出せるのか、興味深く見守りたい。