渡辺倫果、東日本ジュニア選手権でのショートプログラムの演技

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今週末、群馬県前橋市で開催される全日本ジュニア選手権の展望、後編では東日本の女子を取り上げる。近年、西日本が圧倒的に強い時代が続いていたが、それも徐々に変わりつつある印象だ。

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■ カナダに渡った決断が奏功。大きな成長を見せる、渡辺倫果

先日もこの連載で取り上げた渡辺倫果。大きな成長を見せ、東日本選手権では優勝を飾ることができた。昨年の東京ブロックでショート落ちしたことを考えると、1年間でよくぞここまで立て直したものだと思う。昨年は7月に膝の軟骨剥離を発症。腰骨から骨を移植する、6時間の大手術だったという。その後、東伏見のリンクで目撃されることもあったのだが、松葉杖をついていた、との話で大変に心配していた。東京ブロックには強行出場したのだが、とても試合に出られる状態ではなかったと聞いている。だが本人は、「試合に出て悔しい思いをした方が、今後につながると思ったんです」と、まともな演技ができないことは承知の上で大会に出たそうだ。この強気な姿勢が復活につながったのだ。

先日の記事でも紹介したが、関徳武コーチのチームに移籍した時点で、カナダに行く話は全くなかったのだそうだ。カナダでは「スケーティングをクロスからすべてやり直しました」と、基礎からみっちり練習を積んでいるそうだ。「今までのスケート人生の中で、一番頑張った一年」だと自信を持って話すほど、充実した練習ができている。カナダではホームステイをしていることもあり、生活でもスケート面でも、自分のことは自分でやる、という習慣がついたそうだ。「すべてにおいて勉強になっています」と充実感を漂わせる。

東日本選手権のショートでは、3フリップ+3トウループであわやの場面があった。最初のフリップの着氷が悪く、ほとんど止まってしまったのだが、そこから強引に締めてセカンドのトウループも成功した。今回、スピードを出すことをテーマに臨んだそうで、そのことが効を奏した形だ。

渡辺倫果といえば、トリプルアクセルへの挑戦を続けていることでも知られている。ブロック大会の時点では「毎日2回は降りています」との話だったのだが、コーチと相談して、全日本ジュニアまではトリプルアクセルへの挑戦を回避する決断をしたのだ。今年の大目標、シニアの全日本に行くための決断だ。「今年の全日本の会場、自宅から自転車で行けるところなんです。どうしても出たい。全日本に行けたらフリーでトリプルアクセルに挑戦したいと思います」との希望も語ってくれた。

この大会でのスコアは173.36。ショートのコンビネーションジャンプで加点がなかったこと、フリーのステップで、クラスターでミスをしたことなど、いくつかの減点ポイントを改善すれば、170点台後半は見込めたはずだ。あともう少しで、国際大会で通用する点数を出せるようになりそうだ。昨年はブロック落ちのため、ジュニアグランプリの選考会に呼ばれることさえなかった今季だが、この全日本ジュニアが来季に向けての試金石となる。西日本の強豪との直接対決を楽しみに待ちたい。

■ 千葉県の生んだジャンパーが、総合力を身に着けた!吉岡詩果

吉岡詩果(よしおか・しいか)。まだ全国的には無名の選手だろう。しかし関東圏では以前から知られている選手だ。とにかくジャンプの能力が高い。特にルッツジャンプのクオリティは見事なものだ。しかし、スケーティング、ステップなど、ジャンプ以外の要素があまり得意ではなく、そのために大会で上位に来ることの少なかった選手だ。それがここ最近、急速に力をつけている。ジャンパーから、総合力を備えた選手へと変貌中だ。

去年は、東日本選手権で良い演技ができず、全日本ジュニアへと駒を進めることが叶わなかった。大会直前に腰が痛くなってジャンプが跳べなくなったそうだ。その悔しさをバネに、今年は怪我をしないように気を付けて練習してきたとのことだ。

練習について聞いてみると、やはりというか、「ジャンプの練習が好き。特にルッツが好き」とのことだ。その一方、踊りやつなぎの部分の練習は好きではなく、あまり練習をしていなかったのだそうだ。もっとも「最近はちゃんと練習するようにしています。練習するうちに段々と好きになってきました」とのことで、夏場以降の変貌ぶりを裏付けるコメントだ。

今季のフリープログラム、“ダフニスとクロエ”は、ジュニア選手にはなかなか表現の難しい曲だ。最初にフリーの曲をもらった時には、「私、こんなの踊れるのかな?」と心配だったという。後半に合唱の入る激しいパートがあり、ここはプログラムとしても盛り上がるところなのだが、「力強く踊るように心掛けています」とのことだ。表現面でも上達したところを、全日本ジュニアで披露してくれることだろう。まだ国際大会に出たことがないそうだが、この成長振りからして近いうちに派遣されてもおかしくない。まずは堅実にショート通過を目標とするそうだが、上位に進出しても何ら不思議ではない。

■ 勝負をかけてショートプログラムを変更、松岡あかり

今季、ジュニアグランプリで2戦目に派遣されることを目標としていたとのことで、それは達成できたのだが、2戦目のクロアチア大会の結果は芳しいものではなかった。ショートプログラムでの出遅れが多い選手だが、その理由として一つ目のジャンプを緊張のために失敗してしまうことが多いことが挙げられる。その改善のため、東日本選手権から一つ目のジャンプをダブルアクセルに変更した。以前の“カルメン”ではこの構成の変更がやりにくかったそうで、ジャンプ構成を変更するためにプログラム自体を作り直したそうだ。曲は“エスペリエンツァ”とのことだが、この音源を特定できなかった。筆者が曲名を聞き間違えたのかもしれない。佐藤紀子コーチの振付で、東日本選手権の2週間前に作ったばかりだという。トリプルジャンプをすべて後半にしたことで、普通に考えれば難度は上がっているのだが、この方がやりやすいとのことだ。もっとも「まだ一度うまく行っただけで、練習での成功率はそれほどでもない」と慎重な姿勢を見せる。全日本ジュニアでも引き続き成功することを期待したい。

今季、初めてのジュニアグランプリでは、海外の選手から刺激を受けることも多かったようだ。

「ロシアの選手は練習から全く失敗しません。私は波が激しいので、参考にしたいです。氷のコンディションにも影響を受けない選手になりたい」

東日本選手権当時、あまり調子は良くなかったようで、予選通過を心掛けて試合に臨んだそうだ。それでもまとめた演技で表彰台に上ったのは立派なことだ。「全日本ジュニアにピークを持って行けるように頑張りたい」との言葉に期待したい。そして、全日本ジュニアでの目標として、シニアの全日本選手権出場を挙げる。

「西にも東にも上手な選手が多くて、難しい目標ですが、頑張ればひょっとしたら全日本に行けるかもしれない」

と謙虚な言い方ながら、目標をはっきりと掲げた。最近、セカンドジャンプの回転不足が多いのが気がかりだが、「体力よりも気持ちの問題が大きいと思います。1本目のジャンプを上手に降りられたら、セカンドジャンプも回転不足になりません」と、改善の方法は分かっているようだ。昨年に比べ、メンタル面でも「強くなれた」と自分から言えるようになってきている。世界でもトップクラスのスピンの技術など、見どころの多い選手だ。上位争いを期待したい。

■ 今度こそ練習の成果を発揮したい。松原星

この連載では何度も取り上げている選手だ。練習でのパフォーマンスは本当に素晴らしく、あとは試合で決めるだけ、その状態が長く続いてしまっているのが残念だが、1週間前の都民体育大会ではショートでノーミスの演技。フリーではミスはあったものの、まとめる演技を久々に披露することができた。調整は順調のようだ。東日本選手権では弱気な面がミスにつながってしまった。今季の大目標、地元の全日本選手権出場を目指し、強気で試合に臨んでもらいたい。

■ 最高のプログラムを得て、飛躍を目指す!川畑和愛

今季、フィギュアスケートのプログラム曲として“ララ・ランド”が大流行しているのは周知の通りだが、中でも川畑和愛のフリープログラムの出来栄えは素晴らしい。基本的にカップル競技向きの曲だとは思うのだが、シングル選手のプログラムでは川畑選手のものが最高ではないかと思う。まず、曲の編集が素晴らしい。振付、後半の盛り上げ方も、川畑選手のキャラクターにぴったり合っている。

「最初に都築奈加子先生に作ってもらって、手の振りなどは自分で工夫したりしています。中間の部分、映画だとヒロインのミアが歌っているところなんですが、自分でも歌いながら滑っています」

素晴らしいプログラムには、選手のポテンシャルを引き出し、観客を惹き込むパワーがある。全日本ジュニアでは是非このプログラムの完成形を観てみたいものだ。そして今季、川畑選手は3ルッツ+3ループにも挑戦している。このコンビネーションに取り組んだきっかけは、意外なものだったようだ。

「夏に足を捻挫して、トウループが跳べなかった時期があり、その時にセカンドループを練習しました」

コーチから「トウループが跳べないのならループでも練習しておけ」と言われたのだそうだ。「セカンドループが決まるときは、自分でも軸の決まっている感じが楽しいんです」という。セカンドトウループとは違う、独特の感覚があるようだ。

■ 東日本では魂の演技を披露。復活は近い。青木祐奈

昨シーズン、なかなか思うような演技ができず、シーズン最後の全国中学校大会ではミックスゾーンで号泣する姿があった。その後、怪我のためにしばらく試合から遠ざかっていたのだが、ここに来てようやく復活の兆しが見えてきた。

「5月から腰の左側が痛み始めました。『腰椎分離症の手前、休めば治る』と言われて休養していました。7月から滑り始め、8月からジャンプの練習を再開しました」

怪我が治って滑った時は、久し振りに楽しいと思って滑ることができたという。まだ滑り込みが足りないようで、体力面での不安はあるようだが、それでもフリーでは素晴らしい演技を披露してくれた。

「疲れてしまって、流れがなかったり、スピードがなかったりしましたが、今の自分にできることはできました」

怪我をして、改めてスケートを滑る喜びを味わえたという。感謝の気持ちを伝えるスケートをしたいというが、そのためには「結果を出すことが一番大事」と、全日本ジュニアに向けて気を引き締めていた。

「全日本ジュニアでは、後半のコンビネーションの難度を上げて、より上を目指したいと思います。ジュニアグランプリを戦ってきた人達に対するにはそれが必要です」

ここまで決して順調な過程を辿ってはいないが、それでも復活間近と感じさせてくれた。持ち前の負けん気の強さで、一矢報いる姿を期待したいものだ。

【東海ウォーカー】(東海ウォーカー・中村康一(Image Works))