<記者コラム:オトゴト>
 昨日23日、ACIDMAN主催のロックフェス『SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”』(さいたまスーパーアリーナ)を観覧した。ACIDMANの結成20周年を祝うフェスに名を揃えたのは、同じ時代を生き抜いてきたDragon AshやSTRAIGHTENERなど。豪華な陣容のもと、最高の音楽が届けられた。

 ACIDMANの同期を中心に、先輩・後輩が集まったこの日のフェス。大木は「呼びたいミュージシャンはもっといた」と話していたが、1日のフェスで呼べるのは限りがある。そんな彼らを代表して、ASIAN KUNG-FU GENERATION、the HIATUS、THE BACK HORN、STRAIGHTENER、10-FEET、Dragon Ash、BRAHMAN、MAN WITH A MISSION、RADWIMPSが熱いステージを見せて、ACIDMANを祝福した。

 日本のロックシーンを縮図と言っても良いほど、豪華な陣容だ。長年、第一線で戦い続けている彼らの音楽は生き生きして力強い。ボーカルも優ることながら、楽器隊のパフォーマンスも釘付けにさせた。彼らのライブパフォーマンスに関しては語る必要はない。それほど、凄かった。

 そうしたなかで、私がしたためたいのは、彼らが届けたメッセージだ。このフェスの仕掛け人でもあるACIDMANの大木伸夫氏を中心に、Dragon AshのKj氏が口を揃えて言ったのは「色んな事を乗り越えて今がある」ということだった。なかでも大木氏は「ファンの皆と同じように僕らにも悩みがある。だから特別な事では無い」という趣旨のことを語っていた。

 数多くのミュージシャンにインタビューするなかで最近思うのは、私たちと同じように悩みや喜びを体験しているということだ。それは当然、類まれない才能があることが前提だが、才能を有していても売れない時期はあるし、売れても様々な問題があって悩む。その逆もある。それでも諦めずに前を進む。考え抜き、努力を重ねた結果、今がある。

 私たちと違うのは、才能だけでなく、どんな状況でも諦めないで戦い続けたことだ。

 社会生活のなかでは、理不尽なことやどうにもならないことがしばし起きる。売上ノルマが達成しない、仕事量が多すぎる、上司に無理難題言われる、ミスをした、納期に間に合わないなどなど。それは自分だけの特別なことではなく、皆に共通して訪れるものだ。しかし、その後が問題だ。歯を食いしばり、立ち向かったものこそが次に行ける。

 立ち向かうのは何も、全てを受け入れて前に進むことだけではない。理不尽なことであれば、その要求をどうかわそうか対策を考えるのも立ち向かうことだし、問題が起きれば、それを繰り返さないように改善策を考えることも一つだ。

 要は、あきらめないことだ。あきらめなかった先に何かがある。それを彼らが身をもって、あるいは音楽をもって示してくれていると感じる。

 ロック界のレジェンド・高見沢俊彦氏は過去のインタビューで「やり続けていれば扉が開く」とし、その理由を以下に通りに教えてくれた。

 「やはりやり続けていると新しい曲が必ず生まれてくる訳で、その中でクラシックというのも生まれてきたんです。やらなかったらそれは目の前には出てこなかったもので、今は小説も書いていますから、それはやり続けてきた結果です」

 高見沢氏が所属するTHE ALFEEは創世記、ファンに絶大な人気はあったものの、一般的なヒット曲はなかった。ヒットを狙った曲は初動50位止まり。「もうヒットはいいかあ」と諦めかけたところで、アルバムからシングルカットした「メリーアン」が大ヒットを記録した。ヒット曲が生まれるまでに10年の月日が流れていた。

 やり続けても叶わぬものがあるかもしれない。しかし、その経験はいずれ役に立つことがある。そう思って前に進んだ方が少しは気が楽になるかもしれない。

 音楽の世界観に関する解釈は人それぞれだ。恋愛の詩にも聞こえるし、人生を謳った歌にも聴こえるときもある。それは聴いている人の状況で変わる。それが音楽の面白いところでもある。共通するのは、彼らが作り出す音楽はきっと、どんな状況でも私たちの背中も押してくれるという点だ。

 昨日のフェスで改めて音楽の力を実感した。壁を乗り越えた“師”はいま私たちの目の前にいる。悩んだら彼らの音楽を聴けばいい、きっと一歩を踏み出せる力を与えてくれるだろう。【木村陽仁】