「今でも勉強している」 超攻撃的DF闘莉王が切り開いた「アシスト」の新境地

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2003年以来のJ2でのシーズンを終えた闘莉王、31試合15得点と決定力発揮

 J2京都サンガF.C.の元日本代表DF田中マルクス闘莉王は、2003年以来となるJ2での1シーズンを終えた。

 故障に苦しみながらも31試合15得点と“超攻撃的DF”の異名に相応しい卓越した決定力を示した。10月14日の本拠地ロアッソ熊本戦でDF登録の選手としてはJリーグ史上初となるリーグ戦通算100ゴールを記録した男の来季去就に注目が集まるなか、無失点へのこだわり、そしてゴールというこれまで貫いた流儀から新たに切り開いた新境地について語っている。

「怪我もあってなかなか苦しいシーズンだった。自分は求められた仕事をなんとか必死にこなそうとしたけれど、J1復帰という目標に届かずに本当に残念な気持ちでいる。自分が出なかった時に結果がなかなか出なかった。自分が言っていることが、みんなに伝わっていなかったんだと思う」

 サンフレッチェ広島から期限付き移籍で2003年に加入した水戸ホーリーホック以来のJ2での戦いを、闘莉王は悔しそうに振り返った。

 本職はDFながら、布部陽功監督からの要請でセンターフォワードやボランチとしてもプレー。10月に本拠地で行われた第37節熊本戦では、後半26分に代名詞とも言えるヘディングで決勝ゴールを決め、J通算100ゴールの金字塔を打ち立てた。

「印象に残るゴール」は意外にも…

「今でも勉強しているよ。リーグ戦の途中からはFWという役割ではなく、中盤でプレーすることも多かった。ただ前線に張り続けるんじゃなくて、自分が後ろから走ってくるようなプレーも多い。ただゴールを取るには、前線で待ち続けた方が点を狙える感覚はある。でも、ボールを収めるだけでなく、組み立てもしないといけない。自分の役割をできる他の選手がなかなかいなかった。その代わりに、気づくことも多い」

 闘莉王はこう語った。DFとして一時代を築いた36歳の闘将は、今でも研究と発見の日々を過ごしているという。100ゴールという節目を迎えた闘莉王だが、意外にも“心に残る一撃”はないと明かす。

「印象に残るゴール……そういうのはあまりない。もう過ぎたことだから。喜びは一瞬で終わってしまう。個人的な心境としては、もっと前を見たい。いつも先を見ていたい。どちらかと言えば早く101ゴール、102ゴールを決めたいという感じでしょうか」

 過去は振り返らないという闘莉王。昨年第一子も生まれ、父親となった男は今年に入ってから新たな喜びを見出しているという。それはアシストだ。

新たに見出した「誰かを喜ばせたい」

「正直なところ、人を喜ばせるところに自分の目標が切り替わっている。年だろうけどね(笑)。精神的なコントロールもできている。無駄なカードも昔に比べるとない。対戦相手との小競り合いも少なくなった。良くも悪くもだけど、昔の熱さは少し減ってきているのかもしれないね。その代わり、誰かを喜ばせたい。ゴールを取るのも大事だけど、アシストするのも今は大事。勝利でサポーターを喜ばせたいのはもちろんだけれど、チームメイトにゴールをプレゼントして喜びをもたらしたい。娘が生まれたからかもしれないけれど、喜んでくれているその人を見るだけでも幸せ」

 これまではDFとして無失点で抑え、機を見た攻撃参加でゴールを決めることを誇りとしてきた闘莉王だが、アシストという新たな喜びを見出したという。試合展開では中盤の底まで下がり、鮮やかなスルーパスを放つなど抜群のサッカーセンスを誇る闘将は、36歳を迎えたシーズンで新境地を切り開いたという。

 京都からは契約延長のオファーが届いている。他クラブもその去就に注目するなか、来季も唯一無二のプレーでスタンドを沸かせてくれるのだろうか。

【了】

フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images