”犯人の動機”を重視、『刑事ゆがみ』の画期性 第7話では稲森いずみとりょうの友情描く

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 刑事ドラマ界に新風を吹かせている『刑事ゆがみ』(フジテレビ系)。浅野忠信と神木隆之介のバディが話題を呼び、唯一無二の作品として徐々にその評判を高めている。代表的なバディものの刑事ドラマといえば『あぶない刑事』(日本テレビ系)の名前が挙げられるだろう。舘ひろしと柴田恭兵という時代を飾ったスターの共演によるスタイリッシュな演出と、派手なアクションシーンに日本中が熱狂した。それ以降、刑事ドラマといえば“かっこよく鮮やか”であることを重視した作品が多く見受けられるようになった。

(参考:りょう、稲森いずみと『ロングバケーション』以来21年ぶりの共演 「大人な空気感が大好きです」

 一方の『刑事ゆがみ』は、浅野演じる弓神適当が鋭い推理で事件を解決していくが、むしろ犯人の動機にこそドラマ性があり、そこを支持する視聴者が多い。本作のプロデューサー・藤野氏は、インタビュー(http://realsound.jp/movie/2017/11/post-126308.html)にて、「僕は誰が犯人か?(WHO)ということや、どうやって殺したか(HOW)というトリックよりも、なぜその人間が犯行を犯してしまったのか(WHY)という動機に感情移入できるものが好きなんだとわかりました」と話している。その狙いは、これまで放送された7話を通じて一貫しており、視聴率こそ決して高くはないものの、内容に対しての評価は高い。

 第1話では、痴漢冤罪で父親を亡くした駅員が、痴漢から示談金を巻き上げようとする女子大生を殺害するという事件が描かれた。自分が好きだったホームの風景を守るために行われた犯行だったが、結果的に痴漢常習犯を庇う形になってしまい、弓神は「それでもあなたのした行為を正義って呼べるか」と、犯人に突きつけた。

 また、第3話では「娘を殺してしまった秘密を1人で抱えて退役した駐在官」、第4話では「女性同士の秘密の恋」が引き起こした悲しい事件が描かれた。犯人側の心の機微が上手く表現されている本ドラマは、派手な演出こそ少ないが、視聴者を確実に惹きつけている。そして、11月23日に放送された第7話では、菅能理香(稲森いずみ)の親友・近江絵里子(りょう)が服毒死した事件を捜査することになり、2人の友情と悲しい現実が描かれた。

 大手の広告会社で管理職を務める絵里子は、後輩から慕われる先輩であり結婚も決まっていた。状況証拠から自殺の線が濃厚だったが、親友の死を受け止めきれない菅能は容疑者探しに躍起になる。

 順風満帆に思われていた絵里子の私生活だが、それはリア充代行サービスによる偽りのものだった。病気で会社を辞めることになり憔悴した絵里子は、周囲の人々に見栄をはるようになってしまい、代行サービスを乱用。絵里子は、代行サービスを通じて親密な仲となり、後輩のように慕っていた三枝優理(早見あかり)に疎ましく思われていた。それに気がついた弓神は、優理が絵里子の服用していた薬を青酸カリにすり替えたことを特定し、逮捕に至った。

 絵里子は現実に疲れ、自殺を図るべく青酸カリを購入していた。つまり、絵里子もまた犯行の一助を担っていたのだ。しかし、菅能と再会し、生きる希望を見出した矢先の事件だった。絵里子のSNSの裏アカウントで「理香に怒られちゃった。もう少し頑張ってみよう」と綴られていたのを知った菅能は、静かに涙した。

 寺脇康文や新田真剣佑など、ベテランから俊英まで幅広いゲストが犯人を演じてきたこともあるが、毎回ドラマチックに描かれる犯行動機こそが、人々の共感を呼んでいるのは興味深い。今回の絵里子についても、「やり直せると思った瞬間に……切ない」「毎回、本当に泣ける話」といった声が上がっていた。犯人を一般人とは異なる、異様な人物としてではなく、我々と同じ市井の人として描いているのが、このドラマの画期的なところであり、考えさせらえるところだろう。

 まさに“中身”で勝負しているといっていい本ドラマ。通常、ドラマの視聴率は徐々に下降気味になるのものだが、本作はじわじわと上昇している。「自分たちがやりたいことは出来てる」という制作サイドの自信は、その作風からも伝わっており、それが評判にも繋がっているのだろう。終盤に向けて、さらに盛り上がる作品となりそうだ。

(馬場翔大)