大前氏が実践してきた頭脳の鍛え方を紹介

写真拡大

 漫然と同じことを繰り返すような仕事のやり方では、自分にも会社にとってもプラスにならない。経営コンサルタントの大前研一氏が提唱するのは、時間を有効活用するための仕事のダイエットと、脳の筋トレだ。大前流の脳の筋トレ、知的なチャレンジとは何をすることなのか、同氏が解説する。

 * * *
 取り組むべきは「脳の筋トレ」、すなわち知的なチャレンジである。そのための一つの方法は、常に緊張して仕事をしなければならない環境、会社に貢献しなければならない環境に自分を追い込むことだ。

 私自身、マッキンゼー時代の常務会では、事前に確たる意見を持っていなくても、必ずその場で論理的に考えをまとめて手を挙げ、それまでの議論に反対したり、新たな提案をしたりしていた。そうすると、他の常務から反発を受けるので緊張するし、自分の意見を通すにはどう説得すればいいか必死で考えざるを得なくなる。

 さらに、大前の言うことには一理あるな、あいつの意見は聞いておこう、と相手に強く印象づけることもできる。そういう「脳の筋トレ」を繰り返していないと、グローバルビジネスの厳しい競争の中で、世界の俊英たちと伍していくことなどできないのである。

 一方、自分の成果や自分の部署の業績しか考えていない人は「ローカル・キング」と呼ばれ、グローバル企業では経営トップになれない。全社的な視野がないために脳が盲腸化し、ひいてはその社員や部署そのものが、会社の中で盲腸化するケースが多いからだ。

 かつてGE(ゼネラル・エレクトリック)のジャック・ウェルチ元会長は、将来の幹部候補となりそうな優秀な社員に隣の課や別の部門の問題解決について意見を求めるという仕掛けを作った。これもまた「脳の筋トレ」にほかならない。

 つまり“余計なお世話”を繰り返すことで脳が活性化し、経営についてより深く理解して問題解決策を導き出せるようになっていくのである。他の部署の問題を「自分には関係ない」というのではなく、自分の身に引き寄せて客観的に考え、的確な答えを出せる人材が将来の経営トップになっていく──。そういう仕掛けがあるからこそ、GEは今なお世界的な優良企業の座を維持できているのだ。

 この「相手の立場になって考える」というトレーニングは非常に重要だ。同僚と居酒屋で上司の悪口や仕事のグチを言っている暇があったら、「自分が上司の立場ならどうするか」ということを考えるべきである。

 私が学長を務めている「ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学」でやっている「リアルタイム・オンライン・ケーススタディ(RTOCS)」は、それを実践している。たとえば、「もし自分が赤字続きの大塚家具の社長だったらどうするか?」「安倍首相の立場なら難題山積の外交問題をどのように解決するか?」といったテーマについて解決策を考えるのだ。

 そういった「脳の筋トレ」を繰り返していけば、経営についてより深く理解して、どんな問題についても的確な解決策を導き出せるようになるのである。その結果、どこへ行っても通用する人材になり、定年後も周囲からお声がかかって自分のスキルを生かした仕事に就くなど、充実した人生を送ることができるはずだ。

※週刊ポスト2017年12月1日号