燃料電池を搭載し、水からつくった水素で発電する東芝のトラック

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 福島県浪江町で2020年、再生可能エネルギーの電気で水を分解して水素を製造する設備が稼働予定だ。実証機ではあるが、1万キロワットの電気を投入する世界最大規模となる。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主導し、東芝、東北電力、岩谷産業の3社が参画する実証プロジェクトの一つ。

 現在、家庭用燃料電池「エネファーム」や燃料電池車に供給する水素はガスを改質して作っており、CO2を排出してしまう。再生エネの電気を使って分解装置を動かし、水から水素を製造する「パワーtoガス」なら、カーボンフリー(CO2排出ゼロ)のエネルギーとなる。

 水素製造装置が稼働する20年は、温暖化対策の国際ルール「パリ協定」がスタートする年であり、東京五輪も開かれる。国際社会が二酸化炭素(CO2)を排出しない「脱炭素」技術として浪江町の事業に注目する。

 プロジェクトマネージャーを務めるNEDO新エネルギー部の大平英二主任研究員は、「単純に再生エネからの水素を作ろうという考え方ではない。再生エネとうまく調和させる」と狙いを話す。

 天候により太陽光や風力発電が電気を供給しすぎると、電力系統の需給バランスが崩れる。再生エネが電気を作りすぎたタイミングで水素製造装置を動かせば、余剰電力が消費されて需給を保てる。

 再生エネは一時的に水素として貯蔵され、必要な時に燃料電池へ投入すると再び電気として利用できる。水素製造ありきではなく、再生エネの欠点を補う手段としてもパワーtoガスを活用する。

 NEDOは北海道、仙台市、山梨県でも実証を進める。北海道では風力発電の電気で水素を作り、輸送してLPガスと混焼して熱利用する。

 仙台では浄水場の太陽光パネルの電気で水素を作って貯蔵し、燃料電池で電気に戻して使う。浄水場内で水素の「作る」「ためる」「使う」を完結でき、「スケールアップすると離島の電源になる」(大平主任研究員)可能性を持つ。

 どの実証事業でも採算性を検証し、事業として成立するか見極める。大平主任研究員は「課題は誰が全体のシステムを組み上げるか。システムを作る力をつけたい」とも話す。

 欧州でもパワーtoガスの研究が活発だ。脱炭素化に向けて40年までに40兆ドルを超えるエネルギー投資が必要という試算がある。脱炭素ビジネス争奪戦の号砲が鳴っており、日本のシステム力が試される。

(文=松木喬)