冬場の食中毒リスクはトイレに潜んでいる。


「食中毒は夏場が本番!」と思いきや、近年は冬場の対策が大切である。というのも、食中毒事件数の3分の1、また食中毒患者の半数以上がノロウイルスによるものであり、その発生が11月から翌年3月にかけての冬場に集中するからである(参考)。食品従事者にとって、冬場はノロウイルスとの闘いの時期でもある。

月別のノロウイルスによる食中毒発生件数。厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」より。


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生カキよりはるかに高リスクの糞便や吐物

ノロウイルスの感染リスク。下痢便や吐物などによるリスクが高い。


 ノロウイルスの感染リスクは図の通り、大量のウイルスが含まれた患者の糞便、吐物であり、また、そのウイルスを少量含む生カキなどの貝類である。ただし、生カキは内臓を含めて生食するために感染するので、十分に加熱調理すれば感染することはない。

 ノロウイルスの性質や予防対策を表に示したが、食中毒対策のメインは自身がノロウイルスの患者や保有者にならないことである。

ノロウイルスの性質。「GI」「GII」は、ヒトの感染症や食中毒から検出される主なノロウイルスの遺伝学的分類。ヒトに感染するものとしては他にGIVがある。またGIIIはウシやヒツジ、GVはネズミに感染する。


 従って、食品従事者としては、ノロウイルス汚染の可能性のあるカキは生食を避け、十分に加熱して食べること。また、手洗いを励行して、ウイルスの保有者となっても、お客様に提供する食品には汚染させないことが求められている。

 冬場には、嘔吐や下痢の症状がなくても、便中にノロウイルスを保有している健康保有者が1〜2割程度いることが知られている。このため、トイレでの衛生対策が重要なポイントとなる。

なぜか「おしりの拭き方」を教わらない・・・

 トイレの個室は密室であることから、目的は同じでも、おしりの拭き方は個人により異なり、他人が確認できるものではない。また、宗教や人種によっても拭き方が違うことが知られている。日本のように温水洗浄便座が普及している国も世界では珍しい。

大便時に取るトイレットペーパーの長さの違い。


 インターネットで検索しても、正式な「おしりの拭き方」を掲載しているサイトはほとんど見当たらない。そう言えば、学校でも習った覚えがないし、なんとなく母親から教わった方法をそのまま習慣としている人がほとんどではないだろうか。

「うんちの拭き方」と入力して検索すると、成人男女1000名以上を対象にアンケート調査したサイトがあり、「お尻を拭く際に、股の間に手を入れて前から拭く人と、お尻のほうに手を回して後ろから拭く人と大きく割れる」との記載がある。他にも興味のある調査結果が掲載されている。

 トイレットペーパーの長さにしても、人それぞれである。ちなみに保健所勤務時代、職員5名に、大便をしたとしてトイレットペーパーを取ってもらったところ、写真のように、短く何回か取る者と4m以上も一回に取る者があり、かなりの違いが見られた。

 4m以上も使う職員にどのように使っているのか訊ねたところ、「何度も取るのが面倒なので、長いペーパーをたたんで、きれいな部分を探して何度か拭き取る」とのこと・・・。身近なところにも変わった拭き方の者がいることに唖然とするとともに、その姿を想像して失笑した経験もある。

「手洗いに始まり、手洗いに終わる」

 長野県の北信保健福祉事務所が「トイレを起点とするノロウイルス汚染拡大の検証」を報告している。疑似下痢便を使用して便の飛散実験を行っており、興味深い検証となっているので是非ご覧いただきたい。下痢をすると、お尻の臀部にも飛び散るため、拭き取ると指先だけではなく手の土手部や袖口にも付着すると報告している。

ノロウイルス予防対策。


 このような汚染を防ぐため、食品衛生監視員の中にはトイレ用の手袋の使用を勧める者もいる。手袋をして用を足し、トイレ内に手袋を捨てるという方法である。実際に、トイレ用手袋の着用をマニュアル化している寿司チェーンも出現しているが、従業員にはまだ当惑感があるようである。

 先進の食品工場では、手洗いと消毒をしないと退出できないトイレも取り入れられている。将来は、トイレの使用についても、入退室の回数や手洗の有無までカード管理される工場も登場しそうである。

 食品従事者としては、「君子危うきに近寄らず」のとおり、生カキの喫食を避け、公衆トイレは使用しないなどの習慣を身につけたい。衛生の基本は「手洗いに始まり、手洗いに終わる」と言われている。厚生労働省は、石鹸による二回の手洗を推奨している。用便時には腕まくりして用を足し、用便後には手首まで二回の手洗を励行しましょう!

筆者:小暮 実