元日本代表の渡邉拓馬氏【写真:編集部】

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24日にW杯アジア予選フィリピン戦…元日本代表が語る勝利のポイントとは

 2019年にワールドカップ(W杯)を控えるバスケットボールは、11月23日からアジア1次予選がスタートする。フリオ・ラマス新ヘッドコーチの下、本大会出場を目指す「AKATSUKI FIVE」(男子日本代表)。アジアの戦いを制する鍵とは――。

「初戦となる24日のフィリピン戦の占める割合は大きいと思います。絶対に勝ってほしいですね」

 こう話したのは、元日本代表・渡邉拓馬氏。綺麗なフォームから繰り出すジャンプシュートを軸とした多彩な攻撃で得点を量産し、2002年、06年のアジア大会にも出場した名オールラウンダーだ。

 アルゼンチン出身のラマスヘッドコーチの来日からわずか4か月。実戦は7月にウルグアイ代表と対戦した国際親善試合の2試合のみと、新生「AKATSUKI FIVE」はまだ発展途上にある。W杯大陸予選のフォーマットも、大陸ごとに開催国を決めて短期間で集中開催していた形から、1年以上をかけてホーム&アウェー方式で出場権を争うスタイルに変わったが、それ以上に個々の選手が自分のカラーを出せるかが大切だという。

「パスで崩すタイプのスタイルで、時にはビッグマンも外(アウトサイド)に出ないといけないので、個々の状況判断がすごく大切になります。国内リーグでも国際大会でも、チームのために犠牲になる選手はもちろん必要ですが、たとえどんなスタイルを求められたとしても、最大限の力を発揮しないと壁を突破できない。それぞれ、“自分”を出せる瞬間をもっと増やしてもらいたいですね」

 バスケ界の傾向も、中国やイランが猛威を振るったビッグマン全盛期から、オールラウンドな能力が求められる時代へと移り変わった。日本はサイズやフィジカル、身体能力で強豪国に劣る分、スピーディーな展開に持ち込んで勝負をしなければならない。

「一瞬で空気を変える力を持っている」…渡邉氏が期待する田中と馬場の可能性

「近年はピック&ロールが多くなってきたのもありますが、特にインサイドの選手に求められるものが多くなりました。パスにしても、シュートにしても、そのレンジにしても、昔とは違う。5番(センター)が3ポイントを打てるのは当たり前ですからね。そういった中では、やはりハーフコート・オフェンスだけだと日本には不利になってしまいます。展開を早くして、シンプルな攻撃で効率良く得点を伸ばしていかないと、おそらく世界では勝てないでしょうね」

 アジア、そして世界に挑むため、渡邉氏が期待するのは、自身がゼネラルマネージャー補佐を務めるBリーグ・アルバルク東京に所属する次世代のスター候補。田中大貴と馬場雄大だ。

「日本にも世界基準で戦える選手はたくさんいると思います。それをなかなか代表シーンで生かし切れていないところがあるのは事実なので、冷静を保ちながらもガムシャラさを前面に出して、個々の発想を出してほしいですね。田中大貴と馬場雄大はポテンシャルが高いし、一瞬で空気を変える力を持っている。2人には、国際舞台でも速攻で勝負して、コンスタントに力を発揮することを期待しています」

 名門A東京のエースとして君臨する26歳の田中と、筑波大在学中でありながら今年からプロの世界に飛び込んだ大型ルーキーの馬場。2人には抜群の身体能力を生かしたオフェンスはもちろんディフェンスでもチームを支える活躍が求められるだろう。

東京五輪出場に向けW杯本大会出場はノルマ「結果を残さなければいけない時期」

 男子日本代表は、2020年に行われる東京五輪の出場を確約されていない立場だ。FIBA(国際バスケットボール連盟)は、開催国でも世界のトップチームでなければ出場権を与えておらず、わずか12枠の“狭き門”をくぐるには、19年のワールドカップに出場し、ベスト16以上の結果を収めることがひとつのノルマになる。自国開催の五輪出場権獲得、そして世界の強豪国と戦えるチャンスを掴むためにも、今回のワールドカップは是が非でも勝ち上がらなければならない。

「日本バスケは今、特に結果を残さなければいけない時期に差し掛かっています。今後を左右するターニングポイントになり得る大会ですので、勝利にこだわってガムシャラに戦ってほしいですね」

 日本代表を含め、長きに渡ってバスケ界の第一線を走ってきたからこそ、後輩たちの成功とバスケ界のさらなる発展を願う渡邉氏。11月15日、大塚製薬が企画し、バスケットボール、サッカー、バレーボール、柔道、テニス、バドミントンを通じて、全国170校の部活生を応援する「ポカリスエット エールキャラバン」の一環として埼玉・正智深谷高を訪問した際、約1200人の生徒を相手に行った講演でも、世界に触れ、自分の良さを見出すことの大切さを説いている。

「僕は大学時代にアメリカに短期留学して、(ユニバーシアードで)国際試合の経験もありました。正直、世界とはフィジカルからメンタルまで全てが違った。バスケに懸ける時間をもっと増やさないと勝てないと思ったので、そこから『生活をバスケに染めよう』と意識を変えました。まずは自分を知ること。そして、周囲の言葉に流されず、自分を貫くことが成長につながると思います」

渡邉氏が世界に触れて感じたことを伝授…“未来の日本代表候補”たちへの熱血指導

 たとえ壁にぶち当たっても、決して落ち込むことはなかったという。やらなければ何も変わらない――、今できないということは練習すれば上手くなる――。そんな想いが、心を覆おうとするモヤを晴らしてくれたからだ。

 講演後には、6年連続でウィンターカップに出場する男子バスケ部を指導。“未来の日本代表候補”たちにヨーロッパやNBAも実際に導入している練習メニューを伝授し、「常にディフェンスをイメージしてやれば、同じことをやるにしてもスキルの伸び方が違う。日本人選手と海外選手の違いはそこで、世界に出ていくためにはまだまだ意識が足りない。今のみんなの年代から“練習の理由”をしっかり考えて、上を目指して頑張ってください」と語りかけた。

 希代の名スコアラーとして、クラブ、日本代表、世界で培ってきた経験は、後世へと確かに受け継がれている。