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「ベルギー戦で、日本代表は今後に光明を見出せるゲームを見せている」

 欧州遠征、ベルギー戦をスカウティングしたミケル・エチャリは、そう言い切った。名門レアル・ソシエダで20年近く、強化部長などあらゆる役職を勤め上げたプロフェッショナルは、お世辞を言うタイプではない。「スペインの慧眼(けいがん)」エチャリは、批判に晒されるハリルジャパンの戦いに高い評価をつけた。


ベルギー戦に先発、日本代表デビューを飾った長澤和輝

「ブラジル戦よりも、戦術的に確実に改善されていた。あえて注文をつけるなら、攻撃に偏ってしまうきらいがある点(前に人が集まりすぎる)だけだ。中盤で守備のバランスを保ちながら、攻撃においてスピードでアドバンテージを得られるなら……日本はW杯でも悪くない戦いをやってのけるはずだ」

 エチャリはその理由を克明に語っている。

「まず、ベルギーは世界でもトップレベルの相手で、打ち負かすのは簡単ではない。彼らは今回、ホームで戦っている。しかも、勝ったことのない日本が相手で、士気も高いように見えた。

 それらを踏まえて、日本は守備のバランスを重視した4-1-4-1で論理的に戦っている。

 ブラジル戦と同じくプレッシングを用いていたが、ベルギー戦ではブラジル戦と打って変わって集団としての調和が取れ、選手同士の距離感も均衡が保たれていた。相手のラインを締め上げながらパスミスを誘い、実際に何度かボールを奪えている。右に入った浅野拓磨は、カウンターから何度かチャンスを迎えたが、いずれもボールコントロールに乱れが出て、好機を逸した。

 一方、ベルギーも効果的なカウンターで日本の守備陣を脅かしている。序盤、山口蛍の不用意な横パスをカットすると、ゴール前まで鋭く迫った。ゴール前でロメロ・ルカクがGK川島永嗣と交錯するまで進出し、速攻の精度とパワーを見せつけている。その後も自陣で奪ったボールを、日本のプレスをかいくぐってケビン・デブライネが際どいシュートまで持ち込んだ。日本は川島が安定したセービングでこれを防いでいる」

 日本の戦いぶりについて好意的にそう語るエチャリだが、ある守備の対応について、厳しい指摘をした。

「日本は悪くない入り方をし、互角の戦いを見せていた。ただ、失点につながってもおかしくはない戦術的ミスを犯したシーンがあった。

 前半42分だ。

 中盤に下がったドリース・メルテンスから、ラインの裏を狙ってトルガン・アザールに浮き球のパスが出たとき、日本はオフサイドにかけられるはずだった。だが、左サイドバックの長友佑都がひとりだけラインを下げ、失敗。ディフェンスラインをコントロールするのは、原則的にボールから遠いサイドのセンターバックである。このときは幸いシュートまでいかなかったが、ラインを突破されることはトップレベルでは失点に等しい」

 原則のディテールが試合を決めるのだ、とエチャリは眉をひそめた。

「後半も、日本は安定した戦いを見せている。ベルギーに押され始め、オープンな展開にはなりつつあったものの、攻守のバランスは保っていた。

 ところが、選手交代で少しずつバランスを失う。

 後半17分、長澤和輝に代えて森岡亮太を投入。正直言って、長澤はひとつの発見だった。ポジショニングはほぼ完璧で、プレスに関してもどこで行くべきか、明確だった。その長澤から森岡への交代によって、日本の中盤のスペース配分が狂う。森岡はセンスを感じさせるが、クラシックな10番タイプで、ピッチに入るとトップ下的なポジション取りと判断をした。

 さらに後半23分、浅野に代えて久保裕也を入れる。久保も浅野より前目にポジションを取った。これによりチームとして全体に前がかりになってしまい、守備のバランスが崩れた。

 そして後半27分。久保、森岡のボールホルダーへの寄せは明らかに甘かった。山口は突っ立ったまま、吉田麻也も為すすべなくクロスを上げられて、ファーポストでルカクに決められた。この時間帯、日本は守備が崩壊したが、それは攻撃に偏ったことが要因だった。

 終盤に杉本健勇が相手のミスから数的優位で抜け出しているが、放ったシュートは弱すぎて、簡単にGKにコーナーに逃げられている。結果的に、守備網を切り裂かれた失点は最後まで重く響いた」

 エチャリはそう解析してから、ロシアW杯に向け、日本が熟成させるべき戦い方についてこう提言している。

「ベルギーに敗れはしたが、4-1-4-1のフォーメーションはひとつの基軸になり得るだろう。

 その理由は日本人選手のキャラクターにある。日本の選手はおしなべて機動力が高く、俊敏で、連係の意識も高く、技術レベルも低くない。一方で、相手を荒々しく削り、知らん顔していられる獰猛さとずる賢さは持ち合わせず、守備のインテンシティはフィジカル的に劣る。そこで中盤に人を集め、スペースをバランスよく支配し、相手の好きにさせず、奪ったら速い攻撃に転じる、という戦いは論理として成立している。

 ベルギー戦の最大の収穫は山口か。アンカーとしてプレーし、自分のポジションを守り(これまではそこで我慢ができなかったのだ)、4枚のラインのカバーをし、パス出しも本来のよさを発揮。ロンドン五輪から潜在力を評価していたMFだが、ようやく戦術的に成長しつつある。この日の出来なら長谷部誠の代役になり得るだろう。

 新顔では、長澤が可能性を感じさせた。安定して及第点をつけられるのは原口。目立ってはないが、戦術的に監督の求める仕事を完璧にやり遂げていた」

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