「坂本先生遭難直前の書状につき他見を憚るもの也」という朱筆の付箋が付いた新発見の坂本龍馬の手紙がある。福井藩・松平春嶽公の家老、中根雪江に宛てた龍馬暗殺死の5日前の直筆手紙である。そこには「新国家」構想が書かれていて、ちまちまと藩に分かれて争っていた当時の人間には想像もつかない革新的な国家像を、龍馬は既に持っていたことがわかる。しかし、この考えこそが保守頑迷の各藩のトップらには危険思想であり、そのために龍馬は自分が脱藩したふるさと、土佐藩から暗殺指令が出て、実際に殺されてしまったという大胆な仮説のドラマである(相沢友子・脚本)。まことに面白い仮説である。福井藩の松平春嶽(筒井康隆)は歴史上名君として名高い人、彼に会いに龍馬は福井藩を訪ねる。そこには見慣れない「ビラスビイデ独行車」というものが置かれていて、龍馬はそれに乗って走る。今の自転車の前身で、大きな車輪にタイヤはついていない。聡明な春嶽は龍馬の資質を高く買っていたが、家老の中根はいちいちブレーキをかける。「新国家」の盟主になってくれと乞う龍馬に即答しなかったために、後に龍馬が暗殺された時、「自分も暗殺者の1人だった」と春嶽は嘆くのである。龍馬を演じるのは眠そうな新井浩文、龍馬に同行する土佐藩の岡本健三郎に伊藤淳史、春嶽から「龍馬を守れ」と告げられる幕臣の永井尚志に宇梶剛士。彼らが屈折した男たちを快演する。つくづく龍馬の死は日本国家にとって大損失だったと思わせる作品である。(放送2017年11月19日21時〜)

(黄蘭)