石井一久氏

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今季のプロ野球で77勝63敗3分けと4年ぶりにAクラス復帰を果たした東北楽天ゴールデンイーグルス。クライマックスシリーズ(CS)のファーストステージで埼玉西武ライオンズを下し、下克上を果たした楽天に大きく貢献したひとりが、今季からフリーエージェントで加入した岸孝之(32)だ。

22日放送、フジテレビ「THE NEWS α」では、解説者の石井一久氏がかつての同僚でもある岸を取材。ベテランのアドバイスがあるチームメートを救った秘話も明かされた。

8勝10敗と黒星先行ではあるが、岸は防御率2.76に加え、パシフィック・リーグで3位の奪三振189をマークするなど、安定したピッチングを披露した。さらに、勝ち星以上に大きかったのが、投手陣への影響。エースの則本昂大や、今季自身初の二桁勝利を挙げた美馬学も、岸の存在の大きさを認めている。

岸自身もFA移籍を経て、「自分よりもチーム」と意識が変わった。石井氏に役割を問われると、自身の経験も踏まえ、周囲にアドバイスをするようになったと答えている。西武で6年間一緒にプレーした石井氏からも似た助言を受けていたとし、同じことを若手に伝えていると明かした。

そんな岸の仲間を思う姿勢に救われたのが、守護神・松井裕樹(22)だ。優勝争いを繰り広げるなか、負傷者が続出した7月下旬、左肩に痛みを抱えていた松井は、戦列を離脱すべきか苦悩した。その松井に声をかけたのが、岸だったのだ。

岸の助言は「自分が本当に無理すべきところなのか考えろ」。離脱が長引くことがチームのマイナスになるとし、離れる際は最短で復帰できるように、自分とチームの双方のために慎重に判断することが必要というアドバイスだった。

肩を痛めながら無理をして続け、翌年まで影響した自らの経験から、岸は「この先まだあるのに大きなケガになったら嫌だな」と、松井にアドバイスしたと話す。その想いに、松井は「本当にありがたく受け止めました」とコメント。CSに照準を合わせて切り替えることを決意できたと明かした。

そして迎えたCSファーストステージ、西武に先手を取られて後がない第2戦、岸は7回途中まで無失点の好投でチームを救い、最後は万全の状態で復調を遂げていた松井が締めて勝利。楽天は第3戦も制して下克上を果たした。岸の活躍がなければ、その助言で松井が復調していなければ、下克上はなかったかもしれない。

だが、岸は「Aクラスに入った、で終わりにしたくはない」と、さらなる躍進を目指している。「優勝して『来てくれて良かった』と思われないと一番良くない」と、移籍2年目となる来季こそ「信頼されるピッチャーにもっと成長したい」と意気込んだ。

石井氏は岸が多くの点でチームの戦力になったとし、「人間性をしっかり見極めたうえで獲得したことに価値がある」と、楽天のフロントを称賛した。