井上尚弥【写真:Getty Images】

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年末に7度目の防衛戦決定、来年2月に開催される「Superfly2」への参戦の行方は…

 世界のボクシングファンから注目を集めるWBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥(大橋)にとって、2017年は収穫の多い年になった。9月に待望の米国デビューを果たし、アントニオ・ニエベス(米国)に6回TKO勝ち。東洋の“The Monster”がついにベールを脱ぎ、米国再上陸も望まれている。12月30日に横浜文化体育館で行われるヨアン・ボワイヨ(フランス)との7度目の防衛戦をクリアすれば、再び米国行きの話が具体化しそうだ。

 タイミング良く、現在のスーパーフライ級には魅力的な猛者が集まっている。この階級に注目した米ケーブルテレビ局「HBO」は、昨年9月に放送して好評を博した「Superfly」のシリーズ化を計画。来年2月24日には第2弾開催を目論んでいるとされる。

「Superfly2」のメインは、4階級制覇王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)に連勝したWBC世界スーパーフライ級王者シーサケット・ソールンビサイ(タイ)とファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)の指名試合。その他、WBA同級王者カリド・ヤファイ(英国)、IBF王者ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)、元WBC王者カルロス・クアドラス(メキシコ)など、豪華メンバーの出場が検討されている。

 気になるのは、第1弾で強烈なインパクトを残した井上の参戦の行方だ。12月30日に試合を消化し、さらに2月下旬に間に合わせるとなれば、体調作り、プロモーションの両面で少々厳しいスケジュールを強いられる。しかし、この日程面についてHBOスポーツ部のトップエグゼクティブ、ピーター・ネルソン氏に聞くと、”心配していない“という論調だった。

HBOにとっても「モンスター」のキャスティングは大切な課題

「Superfly2の出場について、井上サイドと話はしています。まだ発表できませんが、年末に日本で防衛戦をこなした上で、2月にアメリカで試合をするのは問題ないと思っています。今後も、井上陣営、ミスター・ホンダ(プロモーターを務める帝拳ジムの本田明彦会長)と話し合いを続けることになるでしょう」

 このネルソン氏はHBOで中継するカードの最終決定権を持ち、ゴンサレス、ミドル級のゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)といった外国人選手の試合放送を決断した人物でもある。その口調からは、井上に対する高い評価と期待感が伝わってくる。

 ゴンサレスの2月復帰が難しそうな現状で、井上も不在となれば、Superfly2の盛り下がりは否めない。贔屓目抜きに、日本の「The Monster」を間に合わせることはHBOにとっても大切な課題だ。

 特に、現地時間18日のジェイミー・コンラン(英国)との防衛戦で強さを見せたアンカハスと井上の統一戦が実現することがあれば、シーサケット対エストラーダ以上の注目ファイトになる。アンカハスが難しいとしても、井上の相手には相応の選手が起用されるはずだ。2月23日のアンダーカードの方向性は遠からず明らかになる模様で、その中身に注目が集まる。

HBOネルソン氏も注目「あれほどのスピードとパワーを融合させられる選手はまれ」

 今後、HBOが本当に「Superfly」をシリーズ化するなら、この階級にしばらくとどまることは井上にとってもメリットが大きい。懸念されるのは、井上とその陣営がスーパーフライ級の体重を作ることの難しさを公言していること。Superflyへの参戦が次回で最後になるとすれば、売り出しの面では痛手になりかねない。

 ただ、HBOのネルソン氏は、たとえ局側が力を入れるスーパーフライ級から離れたとしても、日本のモンスターに対する興味は変わらないという。

「バンタム級に上げた後であれ、井上のファイトを放送していきたいという意向は常に持っています。あれほどのスピードとパワーを融合させられる選手は非常にまれ。観ていても楽しい選手ですからね」

 HBOがこれまで以上に軽量級マーケットに目を向けていることは明白だ。10月20日には、IBF世界バンタム級王者ライアン・バーネット(英国)がWBA同級王者ザナト・ザキヤノフ(カザフスタン)に判定勝ちして2団体統一王者になった一戦も英国から同日録画中継している。米国にゆかりのないこのカードにHBOが予算を費やした理由として、“井上の昇級後を睨んだ上での布石か”という見方があったのも事実だった。

バンタム級にもネリやマクドネルら実力者は多数…転向後のビッグマッチ実現も可能か

 バーネット以外にも、バンタム級には山中慎介(帝拳)戦での薬物問題を巡る騒動で知名度が上がったWBC王者ルイス・ネリ(メキシコ)、亀田和毅(協栄)に2勝した実績を持つWBA正規王者ジェイミー・マクドネル(英国)といった日本で知名度のある選手がいる。

 また、WBO王者ゾラニ・テテ(南アフリカ)も、18日のシボニソ・ゴニャ(南アフリカ)との初防衛戦で世界戦史上最短の11秒でKO勝ちを飾って話題になった。こういった顔ぶれを見る限り、たとえバンタム級に上げたとしても、井上は名前のある対戦相手を見つけることはできそうではある。

 今後、HBOのバックアップを受けた日本人王者はどこまで駆け上がれるか。適切なタイミングで、強敵とのファイトを組めるか。米国でもスターになり得るポテンシャルを持った稀有な軽量級ファイターにとって、2017年以上に、来るべき2018年が極めて重要な1年になることは間違いない。