人工光合成は「脱炭素技術」で日本を世界のリーダーに押し上げるか

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 ドイツで18日まで開かれた気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)では、2020年の「パリ協定」のスタートに向けた国際交渉が繰り広げられた。パリ協定は、二酸化炭素(CO2)を排出しない脱炭素社会を目指す。日本で国家プロジェクトとして研究が進む人工光合成、再生可能エネルギー由来の水素製造「パワーtoガス」が世界の脱炭素化を先導しそうだ。

 12年度に経済産業省の直轄事業としてスタートした人工光合成プロジェクトは、6年目に入った。14年度に経産省から引き継いだ新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、21年度まで研究する。人工光合成化学プロセス技術研究組合(三菱ケミカルなど)、東京大学などが参画する。

 太陽光を受けてCO2と水からでんぷんと酸素を作る植物の光合成を模し、太陽光エネルギーでCO2を資源化するのが人工光合成だ。

 NEDOの人工光合成は2段階。水に浸した光触媒に太陽光を照射。光触媒の酸化力で水を水素と酸素に分解し、水素を取り出す。次に水素とCO2を原料に、基幹化学品のオレフィンを製造する。

 30年ごろに商用化が実現できると、工場や火力発電所の排気から回収したCO2と、太陽光と水から生成した水素を合成してオレフィンを作る。地球温暖化を招くCO2の大気中への放出を防げ、さらに化石資源に頼らずにプラスチックを製造できる。

 この5年で光触媒材料の研究が進み、太陽光エネルギーから水素を作り出す変換効率で3%をたたき出した。植物の光合成よりも10倍高い水準だ。ただし、目標の10%には遠い。

 より広い波長を吸収して水を効果的に分解する光触媒材料を探索してきており、プロジェクトマネージャーを務めるNEDO環境部の服部孝司主査は「本命となりそうな材料が見つかってきた」と手応えを語る。

 水素の回収技術の研究にも熱が入る。水からわき上がる気泡を水素と酸素に振り分ける膜(フィルター)を開発中だ。分子レベルの微細な穴が空いた膜表面を疎水化すると、選別できる水素を増量できることが分かった。

 最終工程は水素とCO2からメタノールを合成した後、オレフィンにするプロセスが有力となっている。

 これまでに、触媒の候補となる特殊細孔構造を持つゼオライトを発見した。高温でも活性が低下しないのが特徴。高温環境でメタノールを反応でき、オレフィンを多く取り出せる。エチレン、プロピレン、ブテンを選択的に作れるオレフィン合成手法も研究テーマだ。

 国内企業や海外機関でも人工光合成の研究が活発となっている。NEDOは商業プラントを念頭に、製造コストを抑えられる「実現可能な研究」(服部氏)を進める。課題を一つひとつ着実に解決しており、商用化の輪郭が見え始めた。