元浦和エースFWが語るクラブ最大の“栄光の瞬間” 「サポーターを絶対に喜ばせたいと」

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07年ACLでMVPを獲得したFW永井が当時の優勝を振り返る

 J1浦和レッズが10年前の2007年にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を制した際にMVPを獲得したFW永井雄一郎(現ザスパクサツ群馬)がアジアサッカー連盟(AFC)公式サイトのインタビューに応じ、当時の優勝と大会全体を振り返っている。

 浦和は07年大会が初出場だったが、アジアでの戦いが始まった当初「正直に言えば、相手が強いとは思わなかった」という。その言葉の通り、初戦はインドネシアのペルシク・ケディリを3-0で一蹴していた。しかし、そのケディリとのアウェーゲームに臨んだ頃から、その思いに変化が生まれたと振り返っている。

「ピッチ状態が本当に悪くて、水が浮いている。そうしたなかで僕たちは空中戦を多用したけれど、相手は普通にボールをつないできた。それは驚きでしたね。アウェーで戦うということの本質を見た気がしました」

 当時の大会形式では、グループステージを突破できるのは1位のみ。第5戦までを終え、浦和はホーム2試合を2勝したが、アウェーで3引き分けだった。永井が話しているように、アウェーゲームの厳しさをことさら味わったと言える。最終戦はホームにシドニーFC(オーストラリア)を迎えて引き分けに持ち込み、2勝4分の勝ち点10で辛くもグループ首位通過を決めて決勝トーナメントに進出した。

永井が韓国勢に味わった衝撃「ラフプレーを…」

 ベスト8以降の戦いで立ちはだかったのが韓国勢だった。準々決勝の全北現代戦で、永井は衝撃を味わったことを明かしている。

「それまで韓国に“アウェー感”はなかったんですが、相手が退場者を出すとどんどんイライラ感を出してきて、とにかくラフプレーをしてきたんです。僕たちは冷静さを失うなと言い合って、反撃をするようなことはありませんでした。スタジアムの空気も、日本から来た対戦相手の僕たちに最初は本当に敵対的な雰囲気だったんですけど、彼らがラフプレーを続けているなかで少しずつ変わっていったように思います」

 結局、浦和はこの全北戦を2戦トータル4-1で勝利すると、続く準決勝でも韓国の城南一和と対戦。敵地で2-2と引き分け、ホームでも2-2のまま90分が終了。延長戦を終えて同点のままPK戦に突入した。その時の埼玉スタジアムの光景を永井は今でも忘れられないという。

「当然、緊張はしたんですが、目の前のレッズサポーターはセンセーショナルでした。相手がPKを蹴る時、彼らは常に旗を振って大声を上げ、集中できないようにして、僕らが蹴る時は完全な沈黙で集中できるようにしてくれました。その雰囲気は緊張感もあるものでしたけど、楽しいものでもありましたよ」

決勝前夜、ベッドで得た予感とは?

 この時は、浦和サポーターの陣取る北側のゴールでPK戦が行われた。南スタンドのサポーターもPK戦を前に大旗を持って北スタンドに駆け付けて集結し、相手のキッカーの集中力を削ごうと働きかけ、浦和はこのPK戦を制して決勝に進んだ。

 そして、決勝でセパハン(イラン)と対戦。初戦のアウェーゲームは1-1の引き分けだったが、永井は「本当にまずい負け方をしない限り、ホームでは絶対に勝てると信じていました。もし勝てれば素晴らしかったですけど、ホームで成し遂げられるという自信があったからこそ、1-1は悪くないと感じましたね」と振り返っている。そして、タイトルを決める一戦は11月14日の「埼玉県民の日」の埼スタに持ち越された。

 永井には、ある予感があったという。

「前日にベッドに入った時に、明日はゴールを決められるというクリアなイメージが湧いてきたんです。初戦でポストに当たったシュートがあったんですけど、このゲームではゴールできると。その自信は本当にプラスでした」

 その言葉の通りに、永井の右足が浦和をアジア王者に導くゴールを生み出した。前半22分、MFロブソン・ポンテが中盤から出したパスは、相手選手にあたって裏に抜け出した永井のところへ。ペナルティーエリアに入るかどうかのところから振り抜かれた一撃は、相手GKの頭上を破ってゴールに突き刺さった。

「それまで以上に喜びを表現した」理由とは

「得点できるという自信があったからこそ、迷いなくシュートを打ちました。その時はゴールした喜びを爆発させましたけど、それまでに決めたゴールよりもすごい喜びという感じでもなかったですね。もちろん嬉しいことではあったし、ホームで戦っているという利点を生かしたくもあったので、それまで以上に喜びを表現したというのはあったと思います。この埼スタの雰囲気で負けは許されないという強い思いがありましたし、後ろについているサポーターを絶対に喜ばせたいという気持ちでした」

 このゴールはセパハンの戦闘意欲を大きく削った。結局、後半には当時3バックの右サイドでプレーしていたDF阿部勇樹がセットプレーの二次攻撃からヘディングシュートを決め、2-0の勝利。浦和は初めてアジアを制すると、先制ゴールの永井が大会MVPに選ばれた。

 浦和のクラブ史の中でも、最も栄光に包まれた日として記憶される10年前のアジア制覇。それを当時のストライカーは鮮明に記憶し、振り返った。今、その優勝を知る選手は主将を務める阿部、永井と同い年でチーム最年長のMF平川忠亮の二人だけになったが、再びその王座を奪い返すチャンスが巡ってきた。

 25日に埼スタ(19時15分キックオフ)で行われるアル・ヒラル(サウジアラビア)との決勝第2戦で、浦和は10年前を再現するような勝利をつかめるのか。そして、永井のようにヒーローの座をつかむ選手はだれになるのだろうか。

【了】

フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images