鉄道の旅を彩る「駅弁」ですが、その数は減りつつあり、徳島県内ではまったく販売されていない状態が続いています。背景には何があるのでしょうか。

弁当業者、持ちこたえられず

 駅弁は鉄道のあるほとんどの県に存在しますが、近年その数を減らしています。なかでも徳島県は、県内で駅弁がまったく販売されていないという状態が続いています。


徳島駅構内。県内には電化路線がないため、電車ではなくディーゼルカーが走る。写真はイメージ(画像:photolibrary)。

 なぜ、徳島県から駅弁がなくなってしまったのでしょうか。四国のJR駅におけるキヨスク事業を展開する四国キヨスク(香川県高松市)に聞きました。

――徳島県ではいつから駅弁がないのでしょうか?

2016年の秋口からです。それまでは徳島駅で、同じ業者が製造する「阿波地鶏弁当」「徳島食べくらべ」「徳島牛弁当」という、地元の食材をふんだんに使った3種の弁当が販売されていました。しかし、業者が撤退したため3種とも販売が終了し、県内での駅弁の取り扱いがなくなりました。

――業者はなぜ撤退したのでしょうか?

 背景にはコンビニエンスストアの発達があります。安価で種類も豊富なコンビニ弁当に押され、日常的な部分の売り上げが減少していました。それでも、行楽シーズンには売り上げが確保されていたこともあり、業者は血を流しながらもなんとか頑張っていたような状態でしたが、存続は難しいと判断したそうです。

――弁当を求める旅客はどのようなものを買っているのでしょうか?

 徳島駅構内のキヨスクは2016年10月に「セブン-イレブン Kiosk」へリニューアルされました。お客様は「セブン-イレブン」さんの流通ルートで入ってくる一般的な弁当をお求めになっています。

徳島以外も決して安泰ではない!?

 およそ30年前、JR発足時の時刻表を見ると、徳島県では土讃線の阿波池田駅(三好市)でも駅弁が販売されていました。それが徳島駅だけとなり、ついには県内から駅弁がなくなることに。四国キヨスクによると「駅弁はないのか」という問い合わせもあるとのことで、「列車内で駅弁を食べるという旅の楽しみがなくなってしまったのは残念」と話します。

 また、四国のJR線では現在、高松、今治、松山、宇和島、高知の5駅で駅弁が販売されていますが、四国キヨスクは、これらの駅も決して“安泰”ではないといいます。

「かつてはひとつの駅で複数業者の駅弁が売られていて、それぞれ『魚(の弁当が)が得意』『野菜が得意』などと個性を競ったものでしたが、業者の減少とともに弁当の数が減ってきています」(四国キヨスク)

 このため、2014年まで3回にわたり開催されていた『四国の駅弁選手権』も、数が揃わず開催できない状況だそうです。

 一方のコンビニ側も、駅弁に代わるような地域色豊かな商品を打ち出してきているといいます。

 2017年4月から6月にかけて開催された大型観光キャンペーン「四国デスティネーションキャンペーン」では、四国キヨスクと「セブン-イレブン」が提携し、駅弁に近いような地域色を打ち出した四国限定の商品が開発され、「セブン-イレブン Kiosk」を中心とする四国の「セブン-イレブン」各店で販売されました。四国キヨスクによると、これは好評を博したといい、「駅弁がなくなり、このような新しい形の商品が生まれるのは、ひとつの時代の流れでしょう」と話します。

【地図】JR四国の「駅弁」販売駅


JR四国管内では高松、今治、松山、宇和島、高知の5駅で駅弁が販売されている(国土地理院の地図を加工)。