米テッククランチが伝えるところによると、米アップルは今年の夏に、AR(拡張現実)用のヘッドセットを手がけるカナダの新興企業を買収したようだ。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

独自技術を持つカナダ企業を買収

 この企業は、バーバーナ(Vrvana)と言い、モントリオールを拠点にして活動していた。「トーテム(Totem)」という同社が開発したヘッドセットは、通常のAR用ヘッドセットのように、透過型ディスプレー越しに見える現実の風景にデジタル情報を重ね合わせるのではなく、前方にあるカメラで目の前の風景を捉え、それを内部のOLED(有機EL)ディスプレーに、デジタル情報とともに映し出す。

 そのメリットは、利用者を完全にデジタル空間の中に没入させるVR(仮想現実)にも利用できる点。また搭載するカメラシステムは、利用者の3D(3次元)空間上の位置を捉えることができる。赤外線カメラも搭載しており、こちらは利用者の手の位置を追跡する。

 事情に詳しい関係者の話によると、アップルはこのバーバーナを、3000万ドル(約33億6000万円)で買収した。同社のウェブサイトには今もアクセスできるが、ソーシャルメディアのアカウントは今夏から更新が止まっている。すでに従業員の多くが、米カリフォルニアのアップル本社のチームに加わったと、テッククランチは伝えている。

信憑性増す、アップルのヘッドセット開発

 アップルは、こうした報道について、コメントしないことで知られているが、今回のバーバーナ買収が事実であれば、同社がAR用ヘッドセットを開発しているという、これまでにもあった観測や報道の信憑性を示すものだと米アップルインサイダー伝えている。

 アップルインサイダーによると、アップルはコードネームで「T288」と呼ぶ、AR用ヘッドセットを開発している。これには自社開発のディスプレーやプロセッサー、OS(基本ソフト)が搭載されるのだという。

 また、同社のティム・クック最高経営責任者(CEO)は、たびたび、AR技術に投資していることを明かしている。同氏は、昨年9月にABCニュースのインタビューに応じ、「VRとARはともに非常に興味深い技術。しかし私の見解では可能性があるのはARだ。おそらく格段に大きな可能性だろう」とも述べていた。

 同氏のこの言葉を裏付ける1つの例は、今年リリースしたモバイルOS「iOS 11」で、AR用アプリの開発を支援する「ARKit」を導入したことかもしれない。これにより開発者は、iPhoneなどのiOS端末に搭載される、さまざまな高性能電子部品と連携するARアプリを容易に作れるようになった。

 同社のARへの取り組みについては、ドイツの光学機器大手、カールツァイスと連携し、メガネ型の端末を開発しているとも伝えられたほか、早ければ2017年にも製品が発売されるといった観測も出ていた。テッククランチやアップルインサイダーの報道によると、同社製ARヘッドセットの製品化は2020年、というのが最新の観測のようだ。

(参考・関連記事)「アップル、ドイツの光学大手カールツァイスと連携か」
(参考・関連記事)「アップルのメガネ型機器は年内に登場?」

「製品化には、まだ大きな課題がある」とクックCEO

 ただ、そこには立ちはだかる問題が数々あるとクックCEOは考えているようだ。今年10月に英ジ・インデペンデントのインタビューに応じ、同氏は次のように述べていた。

「現在のところ、十分な品質をもたらすことができる技術は存在しない。ディスプレー1つを取ってみても、まだ技術はそこまで達しておらず、今も大きな課題が存在する。アップルは確固たる品質が保証されない限り、製品を市場に出すことはしない」(同氏)

筆者:小久保 重信