ワインは熟成してこそ味わいが深くなるものだが、ボジョレーヌーボーは新鮮さこそが売りだ(写真:jazzman / PIXTA)

毎年話題に上るボジョレーヌーボー

毎年11月の第3木曜日、今年は11月16日(木)にフランスワインのボジョレーヌーボー(ボージョレ・ヌーヴォー、ボジョレ・ヌーボーなどとも呼ばれる)が解禁となった。

ボジョレーとはフランス・ブルゴーニュ地方の「ボジョレー」地域を、ヌーボーとは「新酒」を意味する。ボジョレー地域で、その年に収穫されたガメイ種と呼ばれるブドウからつくられるフレッシュなワインだ。日付変更のタイミングから日本は本国フランスを差し置いて、先進国で最も早くボジョレーヌーボーが味わえる国ということで、毎年話題に上る。


ゲストの二代目尾上松也氏。「一年中、歌舞伎をしているので、ボジョレーヌーボーで秋を感じることができるのが嬉しい」(写真:筆者撮影)

今年はボジョレワイン委員会主催の特別イベントが11月16〜18日の3日間、「BEAUJOLAIS MATSURI」と称して、表参道の「Commune 2nd」で開催された。またそれに先立って、オープニングセレモニーでは、ボジョレワイン実行委員会代表のジャン=マルク・ラフォン氏による記者発表があり、ゲストに歌舞伎役者の二代目尾上松也氏も登壇し、花を添えた。

ボジョレーの産地は合計2700の生産者、12のコーペラティヴ(生産者組合)、170のネゴシアン(ボジョレー、マコネ、ブルゴーニュ、その他フランスおよび国外)から成る。昨年(2016年)、市場に出荷されたボジョレーヌーボーは約2520万本。そのうち全体の43%に当たる約1080万本が110カ国に輸出される。

ボジョレーヌーボーを多く輸入している国別の上位ランキングは、1位が日本の約630万本とダントツ。2位がアメリカの約160万本、3位カナダが約42万本、4位中国・香港の約37万本、5位ドイツ約36万本と続く。日本と同じ世界時間である韓国はベスト10圏外。日本市場はボジョレーヌーボーにとって特に重要な市場だ。

ところが、日本におけるボジョレーヌーボーの盛り上がりは、かつてほどの勢いがない。直近ピークの2004年は約1250万本を輸入していたことから考えると、今の市場規模は半分程度になっている。「2010〜2013年までは年8%程度の増加があったが、2013年以降は年6%程度の減少となっている」とジャン=マルク・ラフォン氏は言う。


ボジョレワイン実行委員会代表のジャン=マルク・ラフォン氏も来日する力の入れよう(写真:筆者撮影)

その大きな原因が「ワインの難しさ」だ。日本に浸透するにつれ、ワインはいわゆるアッパークラスの嗜好品へと向かってしまった。

上質なレストランで、うんちくを語りながら、ワインを楽しむ。料理とのマッチングを超えて、料理一皿ずつに適切なワインを合わせる(ペアリング)など、ワインは難しくなってしまった。それに一般的な顧客層が「引いて」しまい、結果的に一大イベントであるボジョレーヌーボーの解禁に、以前ほどの関心が沸かなくなるという悪循環が起きた。

若い一般層へのアプローチ

そこでボジョレワイン委員会では、今年は巻き返しの作戦に出た。それが20〜30代と比較的若く、それもワインに詳しくない一般層をメインターゲットにするという戦略だ。

まず、毎年日本で開催してきた解禁イベントのスタート時刻を日付が変わった第3木曜日の深夜0時からではなく、当日正午からへ変更した。一部のコアなワインファンへのターゲットから、幅広い一般的な人々に届くようにした。


表参道の「Commune 2nd」で3日間「BEAUJOLAIS MATSURI」が開催された(写真:筆者撮影)

その解禁イベントも18日までの3日間にわたり、お得な価格で楽しめるポップアップバーや人気ヒップホップユニット「chelmico」によるライブ、HAPPFATのDJプレイなどで「ボジョレー祭り」として若者を中心に浸透を狙った。「四季のうつろいを愛で、旬の食材や季節ごとの行事を大切にする日本」で「祭り」が重要視されていることから、同じくボジョレーヌーボーの原点ともいえる「祭り」の精神に立ち返った。

ボジョレーヌーボーは世界的に過去66年にわたって毎年オリジナルデザインのポスターが発表されてきた。その日本向けのポスターは120超の応募作品から、24歳の若手アーティスト、MINAMI氏による作品が選出。イキイキとしたカラーリングで、みんなでワイワイ楽しみたい、20代女性らしいハッピーなメッセージのポスターとなっている。そんな委員会の試みもあって、ここ数年は大きく減少傾向にあった日本への出荷量は今年横ばいを保ち、昨年同様になる見通しだ。

かつてのブームほどの勢いはないものの、イベント的ニーズとしてはそこそこの盛り上がりが期待できるのがボジョレーヌーボーの魅力でもある。


日本に輸入されたボジョレーヌーボーの数々。全体では2700もの生産者により作成されている(写真:筆者撮影)

高級気質のワインと一線を画すのが、ボジョレーヌーボーでもある。そもそも通常のフランスワインの出荷日が12月15日と決められている中、早摘みに適した品種の地域は11月の第3木曜日に出荷してよいと決められたものがヌーボーだ。

ヌーボーはボジョレーに限ったものではなく、ブルゴーニュヌーボー、マコンヌーボーなど数地域あるが、ボジョレーヌーボーがつくられる地域のガメイ種というブドウの出来不出来で、その年のフランス全体のワインの状態がわかる。

通常のワインは熟成させるほどに美味しさが増すといわれている。そこにヴィンテージという概念が生まれ、何年、何十年と寝かせるうちに、1本数十万円、場合によっては数百万円単位の品が生まれる。

早く飲んだほうが美味しい


気軽にボジョレーヌーボーと料理を味わえるイベントも開催(写真:筆者撮影)

一方、ボジョレーヌーボーのガメイ種は逆。早く飲んだほうが美味しい品種だ。収穫された年のうちに味わうのがベストで、1年も置いておいたら美味しさが極端に下がってしまう。よってボジョレーヌーボーは「お祭り気分」で、ワイワイ飲むのに適している。

価格もアッパークラスの人々が好むタイプより、ずっとリーズナブルだ。ほとんどが2000〜3000円台。中には「タイユヴァン」セレクトの「ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー ラ・グランド・キュヴェ [ボックス付]」1万0800円(税込)なども存在するが、稀だ。

ボジョレーヌーボーには、通常タイプとヴィラージュといって上質な畑で作られたタイプの2種類あるが、高級スーパーマーケットの「北野エース」でも同様だ。ヴィラージュよりさらに上質なクリュという地区の「ドメーヌ・ビュリア」で特別に作られた「ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーボー」もフルボトルで2689円(税込)。近年は、ハーフボトルサイズも登場し、スーパーやコンビニでも気軽に購入できるようになってきている。

ちなみに今年のボジョレーヌーボーの完成度は、より凝縮感のある仕上がりと評判だ。春に霜が降り、夏に雹の嵐があった関係で、収穫量としては減少したが、残った果実は却って、栄養分を得るために根をいっそう土中深くまで張らなければならなかった結果、高品質で凝縮され、酸とのバランスも良く、「豊満で朗らか、絹のようにしなやか。しかもフレッシュで輝かしい」感じに仕上がったようだ。

立ち飲みなどの居酒屋でも、この時期、ボジョレーヌーボーがメニューに加わることが多い。そもそもワインは古代から「serva potio」(労働者の飲み物)として浸透していた。そんな原点に立ち返り、肩ひじ張らずに、気軽にボジョレーヌーボーを楽しむのが良いだろう。