【ライターコラムfrom川崎】大島僚太、中盤で絶大な存在感…背番号10の復帰が “逆転優勝”を加速させる

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 明治安田生命J1リーグ第32節・川崎フロンターレ対ガンバ大阪は1−0。スコアこそ「辛勝」に見えるが、その内訳は対照的だった。

 両チームのシュート数は川崎の「25」に対して、G大阪が「1」。そして実際の試合を見れば、これだけの接戦を演じられた要因は、日本代表GK東口順昭の獅子奮迅の活躍によるものだったところが大きい。試合後の会見でも、長谷川健太監督が「東口が本当に素晴らしいプレーをして、彼がいなかったらあと2、3点は取られてもおかしくないようなシーンがありました」と漏らしたほどである。

 なぜ川崎がこれだけ一方的に攻め続けるサッカーを体現できたのか。理由は簡単だ。

 中盤でボールを握り続けていたからである。現在、指揮を執る鬼木達監督は、風間八宏前監督がチームに植え付けた「ボールを失わない」という信念を受け継ぎつつ、選手達に「ボールを失った後に奪い返すこと」の強度を上げることを徹底させた。中盤でのボール保持を圧倒的に高めつつ、攻守が切り替われば球際の戦いで競り勝ち、素早く回収する。この日のガンバの中盤は倉田秋、井手口陽介の現役日本代表、そして遠藤保仁という豪華な顔ぶれであったが、彼らに攻撃面での武器をほとんど出させなかった。

 その中盤で圧倒的な輝きを見せた選手がいる。大島僚太だ。

 2週間前のJリーグYBCルヴァンカップ決勝でも鮮烈な復帰を果たしている。ただこのときは心身のコンディションを含めて、決して万全とは言えなかったのだろう。いつもの大島をアベレージを考えると、やや物足りなさを感じるパフォーマンスだった。

 一方で、このガンバ戦では圧巻の出来だった。狭いエリアで逆を突くボールコントロールで相手を外し、相手のプレッシャーをまるで苦にせず、チャンスメークを連発。守っても、絶妙な間合いで相手からボールを絡みとって攻撃の芽を摘み、セカンドチャンスへとつなげ続けた。中盤を制圧できた影には大島の存在があったと言える。試合後、最終ラインを牽引し続けた谷口彰悟が言う。
 
「(大島は)いるかどうかで違う。ボールを持てば時間であったり、タメができる。守備でも率先して切り替えのところをして、スピード感を持ってボールに入ってくれる。後ろとしては本当に助かりました」

 とはいえ、あれだけ押し込んだ試合で、スコアレスの時間帯が長かったのはもどかしさもあったはずだ。なにより、この試合の川崎は、首位の鹿島アントラーズとの勝ち点差を考えると、勝たないといけないシチュエーションだった。やっていて焦れてしまったり、逆に相手のカウンターから失点を喫するような「嫌な予感」が試合中に頭をよぎったりすることはなかったのだろうか。大島が明かす。

「(失点の可能性は)ゼロではないですけど、引き分けの可能性はあるなとは思っていました。失点する気はなかったですし、そういう意味では、前半から(相手に)やられる気はしなかった。でも0−0でも、僕らにとっては痛い。でも後半は勝ちきれるようになっていたので」(大島)

 興味深いのが、自分がゴールを狙う気持ちを持ち過ぎないようにしていたと明かしていたことだ。自身のシュート数は2本。ミドルシュートは積極的に放ったが、自分がチーム全体のバランスを崩してまで攻撃参加することは自重していたようだった。

「点には絡みたいと思っていました。ただ、あれだけキーパーがビッグセーブしてノッている時に、僕自身が(得点の)執着心を持ちすぎなくてもいいし、チームとしてセットプレーという武器もある。みんなでいっぱい打って、そのうちの1本が入ればいいかなと」(大島)

 決勝点を決めたのは右サイドバックのエウシーニョだった。ただチーム全体で攻撃的な姿勢が強いからこそ、ときに全体を見回し、バランス取りを行える冷静な判断を下せる大島僚太のような存在が際立つとも言えるだろう。

 次は埼玉スタジアム2002での浦和レッズ戦。最終節まで優勝の可能性を残すためには、先に行われる鹿島の結果次第となる。ただ鹿島が勝利しなくても、勝ち点4差以上であるため、浦和戦の勝利は絶対条件だ。AFCチャンピオンズリーグ準々決勝での大逆転負け、ルヴァンカップ決勝での敗戦と、今年の川崎にとって、埼スタは2つのタイトルの夢が潰えた場所でもある。だからこそ、あの場所で勝ちたいという思いは強い。

「僕らにとっては、悔しい思いをさせられているので。(今年の)埼スタでは勝っていないですし。そういう意味では、また試される試合だと思います」(大島)

 今季3度目の埼スタは、タイトルの可能性をつなぐ勝利を飾りたい。

文=いしかわごう