アマゾンの「アマゾンエコー」(写真:AP/アフロ)

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 人工知能(AI)に対応した「AIスピーカー」の販売をめぐり、アマゾンジャパンに独占禁止法違反の疑いが浮上している。

 アマゾン・ドット・コムの日本法人であるアマゾンジャパンは、11月8日にアメリカでシェア首位のAIスピーカー「アマゾンエコー」を発売した。先んじて10月にはLINEから「クローバウェーブ」が発売されていたが、アマゾンエコーの発売以降、アマゾンの商品一覧からクローバウェーブが削除されたという。

 11月19日付「産経ニュース」は、LINEがアマゾンに理由を問い合わせた結果、その回答は「販売禁止商品に指定された」というものであり、具体的な理由は明かされなかったことを伝えている。

 今や“巨人”と称されるほどインターネット通販で大きな市場を持つアマゾンが、競合商品を不当に排除したとなれば問題だ。弁護士法人ALG&Associates弁護士の児玉政己氏は、アマゾンの行為について「販売禁止指定に正当な理由が認められない場合、独禁法違反の疑いがあります」と語る。

「今回の件は日本法人のアマゾンジャパン(以下、アマゾン)の行為を問題としていますが、AIスピーカー販売の事実やシェアなどの実績については、アメリカ国内のデータを用いています。

 国が制定する法律を、国を超えて適用することの可否の問題を踏まえると、アマゾンの行為の独禁法上の問題点を検討する上で前提となる販売等の事実について、他国のデータを用いて判断を行う場合には妥当性を失する可能性があるため、この点には留意が必要です。

 一方、本件の行為が日本国内で行われているとすれば、少なくとも我が国の独禁法が禁止する『不公正な取引方法』のうち、『競争者に対する取引妨害』に該当する可能性があります」(児玉氏)

●DeNAに独禁法違反で排除措置命令が出た例も

「競争者に対する取引妨害」とは、どういったものだろうか。「不公正な取引方法」第14項には、以下のように定義されている。

「自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること」

「この点、日本国内におけるシェア等のデータはありませんが、アマゾンとしてもAIスピーカーを販売しており、同じくAIスピーカーを販売するLINEと競争関係に立つことは間違いなさそうです。

 すると、アマゾンが自らが運営するネット上のショッピングサイト『amazon.co.jp』から商品掲載を削除して、競争関係に立つ事業者であるLINEとその顧客である消費者との取引を『不当に』妨害したということであれば、上記条項に該当するものと考えられます。

 これに対し、『アマゾンが自社運営のショッピングサイトでどのような商品を取り扱うかはアマゾンの自由ではないか』あるいは『数あるショッピングサイトのひとつである<amazon.co.jp>で販売できないとしても、取引を妨害したとはいえないのではないか』との疑問が生じます」(同)

 しかし、公正取引委員会のホームページには、これらの事情が存在する事案において、独禁法違反を認めて排除措置命令が出された例が掲載されているという。

「同命令が出された事案は、ソーシャルゲーム提供等の事業を行う株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)が、競争関係に立つグリー株式会社の運営するサイト『GREE』を通じてソーシャルゲームを提供した事業者については、DeNA が運営するサイト『モバゲータウン』(当時のサイト名)内においてゲーム提供のためのリンクを掲載しない、という措置を取ったことが問題とされたものです。

 結論として、DeNA の当該行為は『GREEを通じたソーシャルゲームの提供の妨害にあたる』と判断されました。当該事案においても、問題とされた行為はDeNAの自社運営サイト上での提供業者の選別の結果であり、また、命令当時ソーシャルゲーム提供サイトは『モバゲータウン』以外にも多数存在していたと考えられます。つまり、それらの事情をもって『競争者に対する取引妨害』の該当性を否定するのは難しいと考えられます。

 もっとも、『競争者に対する取引妨害』が成立するためには、当該行為が『不当に』行われることが必要です。ここで検討されるべきが、今回の商品掲載中止が『amazon.co.jp』の利用規約上、アマゾンが任意に指定できる販売禁止商品に指定されたことを受けて行われたということです。

 この点、独禁法のような競争政策上の観点から設けられた規制に対し、規約(事業者間の合意)の存在を盾に規制を逃れることはできないものと考えられますが、販売禁止の理由として、サイト利用者への被害発生の防止等なんらかの正当な理由があるのであれば、アマゾンの行為は『不当に』行われたものとはいえないと判断される可能性はあります。

 禁止指定の理由について、いまだアマゾンから回答はないとのことですが、実際に『競争者に対する取引妨害』の該当性が問題となった際には、この点について回答せざるを得なくなるのではないでしょうか」(同)

「顧客第一」を掲げるアマゾンの回答が待たれるところだ。
(文=編集部、協力=児玉政己/弁護士法人ALG&Associates弁護士)